ぼくらの国防大作戦

坂ノ内 佐吉

文字の大きさ
上 下
12 / 44
第四章

Chapter.12 演技メール

しおりを挟む
 演技メール

 翌日から、美智は、頻繁に幸来紗がボランティアをしている小学校に顔を出すようになった。幸来紗の英語のアシスタント、折り紙を教えたり、空いてる時間は子供たちとバトミントンで一緒に遊んだりした。二週間、そのような生活をして、子供たちの屈託のない笑顔に囲まれ、美智はかけがえのない時間だと感じるようになっていた。
「幸来紗、手伝わせてくれて、本当にありがとう。めちゃめちゃ充実する時間だよ。インドに来て本当に良かった」
「そうでしょ。本当に何にも代えがたい貴重な時間だよ。子供たち、本当にかわいいでしょ」
 幸来紗は生き生きと、インドでの生活を送っていた。

 16日目
 美智の小学校でのボランティアもだいぶ慣れたところで、周人と智成、友杏の三人もインドに来ていることを幸来紗に知らせることにした。
 ボランティアで、美智が幸来紗と一緒に休憩を取ってるタイミングで、木陰に隠れ二人の様子を見ていた智成は美智にメールを送る。
『みっちー、元気? もしかして、今、インド? 前、電話で話した時は冗談半分だったんだけどさ、本当にインドに来ちゃったよ! 野島も一緒。あと、俺の姉ちゃんもついてきた。今、ニューデリーにいるんだけど、みっちー、もしデリーに居るなら会わない?』
 友杏は智成の姉という設定だ。
 美智はラインを読み、わざとらしいリアクションをとる。
「えっ、嘘でしょ!」
「どうしたの、美智?」
「智くんと野島くん! と、智くんのお姉さんがインドに来てるって! 写メも添付されてるよ」
写真には、デリーのインド門をバックに、笑顔で二人が映っている。
「智くんと野島くんって、卒業旅行で出会った? 嘘でしょ?」
 信じられないように幸来紗の表情は変わる。
「そうだよ! 私、智くんとはあの後も何度かやりとりしてたんだよね、今回、インドに行くこと伝えたら、すごく関心持っててさ、俺も行っちゃおうかなー、なんて冗談交じりに言ってた。二人とも仕事がうまくいってなかったみたいで、周人くんは既に仕事を辞めてて、智くんも、辞めちゃおうかなーって、悩んでたみたいなんだよ。辞めたのかな? ほら見てみてよ」
美智は幸来紗にメールを見せる。
「嘘でしょ。またなんか、偶然っていうかさ、智成くん、美智に気があるんじゃないの? 美智がインドにいるって知ってたから、このタイミングで来てるんでしょ?」
「また~、冗談はやめてよ。あんなお調子者。それより、周人くんも来てるってよ。幸来紗、周人くんのこと気にしてたよね」
 美智はわざとらしく、軽く幸来紗をいじる。
「そんなことないよ。もう、そんな過去のこと」
「とか言いながら、少し顔が赤みがかかりましたぞ」
「もうやめてよ。……それと、なんでお姉さん一緒なんだろ?」
「なんでだろうね? あいつにお姉さんがいるなんて聞いたことなかったけどね。……とりあえず返信するか。バラナシにいるって返したら来るかな? 幸来紗が一緒なこと、伝えていい」
「べつにかまわないよ。バラナシも、インドじゃ人気のある観光地だから来るかも」
 幸来紗が言うと、美智はメールを入力する。
『え、やばっ、本当に来たの? 私は今、バラナシにいるよ。ちょっと遠いけど来れるなら会えるよ。実は幸来紗も一緒だよ。幸来紗、バラナシの小学校でボランティアしてて、会いに来たんだよ』
 美智はメールを送信すると、二分後に返信がくる。
「はやっ」二人は声をそろえて言う。
『マジで! 幸来紗ちゃんいるの? すごいね! バラナシ、行きたかった場所だから行くよ! 明日の夜の夜行寝台列車で行くから、細かいこと分かったらまた連絡するね』
「本当に?」幸来紗は驚きながらも嫌でもなさそうだ。
「本当にびっくりだね」
 美智と智成は、幸来紗には気づかれないように、わざとらしいメールのやりとりをした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

雨上がりに僕らは駆けていく Part1

平木明日香
恋愛
「隕石衝突の日(ジャイアント・インパクト)」 そう呼ばれた日から、世界は雲に覆われた。 明日は来る 誰もが、そう思っていた。 ごくありふれた日常の真後ろで、穏やかな陽に照らされた世界の輪郭を見るように。 風は時の流れに身を任せていた。 時は風の音の中に流れていた。 空は青く、どこまでも広かった。 それはまるで、雨の降る予感さえ、消し去るようで 世界が滅ぶのは、運命だった。 それは、偶然の産物に等しいものだったが、逃れられない「時間」でもあった。 未来。 ——数えきれないほどの膨大な「明日」が、世界にはあった。 けれども、その「時間」は来なかった。 秒速12kmという隕石の落下が、成層圏を越え、地上へと降ってきた。 明日へと流れる「空」を、越えて。 あの日から、決して止むことがない雨が降った。 隕石衝突で大気中に巻き上げられた塵や煤が、巨大な雲になったからだ。 その雲は空を覆い、世界を暗闇に包んだ。 明けることのない夜を、もたらしたのだ。 もう、空を飛ぶ鳥はいない。 翼を広げられる場所はない。 「未来」は、手の届かないところまで消え去った。 ずっと遠く、光さえも追いつけない、距離の果てに。 …けれども「今日」は、まだ残されていた。 それは「明日」に届き得るものではなかったが、“そうなれるかもしれない可能性“を秘めていた。 1995年、——1月。 世界の運命が揺らいだ、あの場所で。

白雪姫症候群-スノーホワイト・シンドロームー

しらす丼
ファンタジー
20年ほど前。この世界に『白雪姫症候群-スノーホワイト・シンドロームー』という能力が出現した。 その能力は様々だったが、能力を宿すことができるのは、思春期の少年少女のみ。 そしてのちにその力は、当たり前のように世界に存在することとなる。 —―しかし当たり前になったその力は、世界の至る場所で事件や事故を引き起こしていった。 ある時には、大切な家族を傷つけ、またある時には、大事なものを失う…。 事件の度に、傷つく人間が数多く存在していたことが報告された。 そんな人々を救うために、能力者を管理する施設が誕生することとなった。 これは、この施設を中心に送る、一人の男性教師・三谷暁と能力に人生を狂わされた子供たちとの成長と絆を描いた青春物語である。

ヒトの世界にて

ぽぽたむ
SF
「Astronaut Peace Hope Seek……それが貴方(お主)の名前なのよ?(なんじゃろ?)」 西暦2132年、人々は道徳のタガが外れた戦争をしていた。 その時代の技術を全て集めたロボットが作られたがそのロボットは戦争に出ること無く封印された。 そのロボットが目覚めると世界は中世時代の様なファンタジーの世界になっており…… SFとファンタジー、その他諸々をごった煮にした冒険物語になります。 ありきたりだけどあまりに混ぜすぎた世界観でのお話です。 どうぞお楽しみ下さい。

未来への転送

廣瀬純一
SF
未来に転送された男女の体が入れ替わる話

CREATED WORLD

猫手水晶
SF
 惑星アケラは、大気汚染や森林伐採により、いずれ人類が住み続けることができなくなってしまう事がわかった。  惑星アケラに住む人類は絶滅を免れる為に、安全に生活を送れる場所を探す事が必要となった。  宇宙に人間が住める惑星を探そうという提案もあったが、惑星アケラの周りに人が住めるような環境の星はなく、見つける前に人類が絶滅してしまうだろうという理由で、現実性に欠けるものだった。  「人間が住めるような場所を自分で作ろう」という提案もあったが、資材や重力の方向の問題により、それも現実性に欠ける。  そこで科学者は「自分達で世界を構築するのなら、世界をそのまま宇宙に作るのではなく、自分達で『宇宙』にあたる空間を新たに作り出し、その空間で人間が生活できるようにすれば良いのではないか。」と。

サクラ・アンダーソンの不思議な体験

廣瀬純一
SF
女性のサクラ・アンダーソンが男性のコウイチ・アンダーソンに変わるまでの不思議な話

「メジャー・インフラトン」序章4/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節JUMP! JUMP! JUMP! No1)

あおっち
SF
 港に立ち上がる敵AXISの巨大ロボHARMOR。  遂に、AXIS本隊が北海道に攻めて来たのだ。  その第1次上陸先が苫小牧市だった。  これは、現実なのだ!  その発見者の苫小牧市民たちは、戦渦から脱出できるのか。  それを助ける千歳シーラスワンの御舩たち。  同時進行で圧力をかけるAXISの陽動作戦。  台湾金門県の侵略に対し、真向から立ち向かうシーラス・台湾、そしてきよしの師範のゾフィアとヴィクトリアの機動艦隊。  新たに戦いに加わった衛星シーラス2ボーチャン。  目の離せない戦略・戦術ストーリーなのだ。  昨年、椎葉きよしと共に戦かった女子高生グループ「エイモス5」からも目が離せない。  そして、遂に最強の敵「エキドナ」が目を覚ましたのだ……。  SF大河小説の前章譚、第4部作。  是非ご覧ください。 ※加筆や修正が予告なしにあります。

処理中です...