7 / 44
第二章
Chapter.7 旅の別れ
しおりを挟む
旅の別れ
22日目
四人はバンコクに到着した。日本への帰国までは、バンコクではカオサンロードに滞在した。カオサンロードはバックパッカーの聖地と言われ、主に欧米人が集まり、常にとても賑わっている。
旅の残りの日数はバンコクに滞在し、市内の観光。カオサンは旅行代理店が多いので、日帰りツアーでアユタヤ遺跡や、戦争に関係するカンチャナブリを訪ねたり、ゾウにも乗ったりして楽しんだ。
また、幸来紗は意外に格闘技観戦が好きで、幸来紗のリクエストでムエタイの観戦にも行った。
バンコクでの夜、周人と智成は二人で飲みに出かけていた。
「周人、みっちー可愛いよな。顔が丸くてサバサバしてかわいいよな。性格も合うし。どう思う?」智成はほろ酔い気分だ。
「おっ、いいじゃん。仲良いいもんね。トライしてみればいいじゃん。でも、彼女、博多だからさ、日本に帰ったら超遠距離恋愛じゃん」
「そうなんだよね。現実的じゃないよな。彼女も希望通りの会社の内定もらってるって言うし、俺も就職先決まったし」智成は、少し寂しそうに言う。
「ところで、野島、幸来紗ちゃんとはどうなの? 何気にいい感じじゃない? 二人だけで話しているところも、何回も見てるぞ」
周人は、一瞬ドキッとした。事実、カンボジアに入ったあたりから、幸来紗の魅力に惹かれ始めていた。
「話していた内容は、ほとんど歴史関係だよ」
「いやー、まじめな二人だね。でも、それとは別に、正直、惚れたりしてないの? なんか、そっちもいい雰囲気に見えたけどね」
「うん、……とても魅力ある子だけど、恋愛感情とか、そういのはないかな。彼女は自分の考えをしっかり持っていて、芯があって素敵だよね。顔も綺麗なんだから、もっと垢抜ければいいのにね。それに幸来紗ちゃんって、一人の人間を愛せるタイプじゃないんじゃないかなって思うんだよね」
「どうゆうこと?」
「彼女は人一倍、平和主義で平等主義。冷静に物事を俯瞰して見ていてさ、すべての人間を平等に見ているから、ひとりだけを好きになるってことはないような気がする……」
「なるほどね。そういうふうに見えないこともない。彼女賢そうだよな。あの二人ともう少し関係を続けたいけど、このまま終わっちまう感じだよな」
「たぶん、そうだろうね」
二人は、互いに寂しい感情を抱いていた。
30日目
最終日、周人と智成の方が、幸来紗と美智より3日帰国が早かった。
飛行機は昼の便、幸来紗と美智は、周人と智成を空港まで見送った。
「やばい、ちょっと泣きそう」美智はウルウルしている。
「じゃあ、二人ともありがとう!」
智成は、寂しい気持ちをごまかすように明るく二人にふるまう。
「二人とも元気でね。ありがとう。意外な旅の成り行きなったけど、歴史も勉強できたし楽しかったよ」
周人は、幸来紗と美智に握手した。
「そうそう、これ、俺と日坂から二人に。出会った記念に。後で見てみて」
周人は、二人に小さな中身が入った小さな紙袋を渡した。
「なんだろうな? ありがとうね」
「なんかごめんね…… こっちからは何もないのに。四人で旅ができて楽しかったよ」美智に続いて、幸来紗は少し照れながら笑顔で言った。
「空港まで見送ってくれただけでもありがていやい。……みっちー、別れのハグでもするか」と智成が調子にのって言う。
美智は、「はい、はい、しょうがないな」と答えハグをした。
周人と幸来紗は笑いながら、その光景を見ていた。
幸来紗はバンコクのホテルに戻った後、周人からもらった紙袋を開けると、中にはミサンガと周人からの手紙が入っていた。
22日目
四人はバンコクに到着した。日本への帰国までは、バンコクではカオサンロードに滞在した。カオサンロードはバックパッカーの聖地と言われ、主に欧米人が集まり、常にとても賑わっている。
旅の残りの日数はバンコクに滞在し、市内の観光。カオサンは旅行代理店が多いので、日帰りツアーでアユタヤ遺跡や、戦争に関係するカンチャナブリを訪ねたり、ゾウにも乗ったりして楽しんだ。
また、幸来紗は意外に格闘技観戦が好きで、幸来紗のリクエストでムエタイの観戦にも行った。
バンコクでの夜、周人と智成は二人で飲みに出かけていた。
「周人、みっちー可愛いよな。顔が丸くてサバサバしてかわいいよな。性格も合うし。どう思う?」智成はほろ酔い気分だ。
「おっ、いいじゃん。仲良いいもんね。トライしてみればいいじゃん。でも、彼女、博多だからさ、日本に帰ったら超遠距離恋愛じゃん」
「そうなんだよね。現実的じゃないよな。彼女も希望通りの会社の内定もらってるって言うし、俺も就職先決まったし」智成は、少し寂しそうに言う。
「ところで、野島、幸来紗ちゃんとはどうなの? 何気にいい感じじゃない? 二人だけで話しているところも、何回も見てるぞ」
周人は、一瞬ドキッとした。事実、カンボジアに入ったあたりから、幸来紗の魅力に惹かれ始めていた。
「話していた内容は、ほとんど歴史関係だよ」
「いやー、まじめな二人だね。でも、それとは別に、正直、惚れたりしてないの? なんか、そっちもいい雰囲気に見えたけどね」
「うん、……とても魅力ある子だけど、恋愛感情とか、そういのはないかな。彼女は自分の考えをしっかり持っていて、芯があって素敵だよね。顔も綺麗なんだから、もっと垢抜ければいいのにね。それに幸来紗ちゃんって、一人の人間を愛せるタイプじゃないんじゃないかなって思うんだよね」
「どうゆうこと?」
「彼女は人一倍、平和主義で平等主義。冷静に物事を俯瞰して見ていてさ、すべての人間を平等に見ているから、ひとりだけを好きになるってことはないような気がする……」
「なるほどね。そういうふうに見えないこともない。彼女賢そうだよな。あの二人ともう少し関係を続けたいけど、このまま終わっちまう感じだよな」
「たぶん、そうだろうね」
二人は、互いに寂しい感情を抱いていた。
30日目
最終日、周人と智成の方が、幸来紗と美智より3日帰国が早かった。
飛行機は昼の便、幸来紗と美智は、周人と智成を空港まで見送った。
「やばい、ちょっと泣きそう」美智はウルウルしている。
「じゃあ、二人ともありがとう!」
智成は、寂しい気持ちをごまかすように明るく二人にふるまう。
「二人とも元気でね。ありがとう。意外な旅の成り行きなったけど、歴史も勉強できたし楽しかったよ」
周人は、幸来紗と美智に握手した。
「そうそう、これ、俺と日坂から二人に。出会った記念に。後で見てみて」
周人は、二人に小さな中身が入った小さな紙袋を渡した。
「なんだろうな? ありがとうね」
「なんかごめんね…… こっちからは何もないのに。四人で旅ができて楽しかったよ」美智に続いて、幸来紗は少し照れながら笑顔で言った。
「空港まで見送ってくれただけでもありがていやい。……みっちー、別れのハグでもするか」と智成が調子にのって言う。
美智は、「はい、はい、しょうがないな」と答えハグをした。
周人と幸来紗は笑いながら、その光景を見ていた。
幸来紗はバンコクのホテルに戻った後、周人からもらった紙袋を開けると、中にはミサンガと周人からの手紙が入っていた。
20
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
白雪姫症候群-スノーホワイト・シンドロームー
しらす丼
ファンタジー
20年ほど前。この世界に『白雪姫症候群-スノーホワイト・シンドロームー』という能力が出現した。
その能力は様々だったが、能力を宿すことができるのは、思春期の少年少女のみ。
そしてのちにその力は、当たり前のように世界に存在することとなる。
—―しかし当たり前になったその力は、世界の至る場所で事件や事故を引き起こしていった。
ある時には、大切な家族を傷つけ、またある時には、大事なものを失う…。
事件の度に、傷つく人間が数多く存在していたことが報告された。
そんな人々を救うために、能力者を管理する施設が誕生することとなった。
これは、この施設を中心に送る、一人の男性教師・三谷暁と能力に人生を狂わされた子供たちとの成長と絆を描いた青春物語である。
雨上がりに僕らは駆けていく Part1
平木明日香
恋愛
「隕石衝突の日(ジャイアント・インパクト)」
そう呼ばれた日から、世界は雲に覆われた。
明日は来る
誰もが、そう思っていた。
ごくありふれた日常の真後ろで、穏やかな陽に照らされた世界の輪郭を見るように。
風は時の流れに身を任せていた。
時は風の音の中に流れていた。
空は青く、どこまでも広かった。
それはまるで、雨の降る予感さえ、消し去るようで
世界が滅ぶのは、運命だった。
それは、偶然の産物に等しいものだったが、逃れられない「時間」でもあった。
未来。
——数えきれないほどの膨大な「明日」が、世界にはあった。
けれども、その「時間」は来なかった。
秒速12kmという隕石の落下が、成層圏を越え、地上へと降ってきた。
明日へと流れる「空」を、越えて。
あの日から、決して止むことがない雨が降った。
隕石衝突で大気中に巻き上げられた塵や煤が、巨大な雲になったからだ。
その雲は空を覆い、世界を暗闇に包んだ。
明けることのない夜を、もたらしたのだ。
もう、空を飛ぶ鳥はいない。
翼を広げられる場所はない。
「未来」は、手の届かないところまで消え去った。
ずっと遠く、光さえも追いつけない、距離の果てに。
…けれども「今日」は、まだ残されていた。
それは「明日」に届き得るものではなかったが、“そうなれるかもしれない可能性“を秘めていた。
1995年、——1月。
世界の運命が揺らいだ、あの場所で。
CREATED WORLD
猫手水晶
SF
惑星アケラは、大気汚染や森林伐採により、いずれ人類が住み続けることができなくなってしまう事がわかった。
惑星アケラに住む人類は絶滅を免れる為に、安全に生活を送れる場所を探す事が必要となった。
宇宙に人間が住める惑星を探そうという提案もあったが、惑星アケラの周りに人が住めるような環境の星はなく、見つける前に人類が絶滅してしまうだろうという理由で、現実性に欠けるものだった。
「人間が住めるような場所を自分で作ろう」という提案もあったが、資材や重力の方向の問題により、それも現実性に欠ける。
そこで科学者は「自分達で世界を構築するのなら、世界をそのまま宇宙に作るのではなく、自分達で『宇宙』にあたる空間を新たに作り出し、その空間で人間が生活できるようにすれば良いのではないか。」と。
「メジャー・インフラトン」序章4/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節JUMP! JUMP! JUMP! No1)
あおっち
SF
港に立ち上がる敵AXISの巨大ロボHARMOR。
遂に、AXIS本隊が北海道に攻めて来たのだ。
その第1次上陸先が苫小牧市だった。
これは、現実なのだ!
その発見者の苫小牧市民たちは、戦渦から脱出できるのか。
それを助ける千歳シーラスワンの御舩たち。
同時進行で圧力をかけるAXISの陽動作戦。
台湾金門県の侵略に対し、真向から立ち向かうシーラス・台湾、そしてきよしの師範のゾフィアとヴィクトリアの機動艦隊。
新たに戦いに加わった衛星シーラス2ボーチャン。
目の離せない戦略・戦術ストーリーなのだ。
昨年、椎葉きよしと共に戦かった女子高生グループ「エイモス5」からも目が離せない。
そして、遂に最強の敵「エキドナ」が目を覚ましたのだ……。
SF大河小説の前章譚、第4部作。
是非ご覧ください。
※加筆や修正が予告なしにあります。
ヒトの世界にて
ぽぽたむ
SF
「Astronaut Peace Hope Seek……それが貴方(お主)の名前なのよ?(なんじゃろ?)」
西暦2132年、人々は道徳のタガが外れた戦争をしていた。
その時代の技術を全て集めたロボットが作られたがそのロボットは戦争に出ること無く封印された。
そのロボットが目覚めると世界は中世時代の様なファンタジーの世界になっており……
SFとファンタジー、その他諸々をごった煮にした冒険物語になります。
ありきたりだけどあまりに混ぜすぎた世界観でのお話です。
どうぞお楽しみ下さい。
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる