ぼくらの国防大作戦

坂ノ内 佐吉

文字の大きさ
上 下
5 / 44
第二章

Chapter.5 四人の出会い、ベトナム

しおりを挟む
 四人の出会い、ベトナム

 2021年 2月 ベトナム
 周人と智成は、お互い就職先も決まり、二人で1ヵ月間、東南アジアのバックパッキングの旅に出た。ベトナムのハノイから入り、2ヵ月後の帰国の航空券はタイのバンコク。帰国の日程だけは決めておき、あとは予定を立てず、行き当たりばったりで行動するという旅のスタンスを決めていた。
 
 二人は、ハノイの安宿に宿泊し、ハロン湾ツアーに参加した。
「いやー、すごいな野島、この景色。なんてファンタスティックなんだ!」
「ほんと来て良かったよ! しょっぱなからこんな絶景を拝めるなんて」
 ハロン湾をめぐるツアーの船のデッキで興奮している智成は、同じ船に乗っていた、日本人二人組の女の子に目を移す。
「なあ野島、ハノイから一緒にツアーに参加してる、あの日本人二人組、可愛くない?」
 智成は、ツアーに出発した時に彼女たちに軽く挨拶して、その後も気にしている様子だった。
「声かけて一緒に行動しようよ」
「う~ん、日坂がリードして話してくれるならいいよ。俺、女の子に進んで話すのあんま得意じゃないし」
 周人は、そんなに気は進まなかったが、この旅では、来る者は拒まず、をモットーにしようと考えていた。
「よし分かった! そのへんは任せろ」
 智成は間をおいて、自分に気合を入れえると、彼女たちの方へ足を進めた。
「すみませーん。こんにちは」
 景色を眺めていた二人は振り返り、「はい?」と、美智が返事をする。 
「二人で旅行してるんですか?」
「そうです。私たち卒業旅行で来てるんです」
 美智が明るく答え、幸来紗は軽く頭を下げる。
「僕たちも二人で旅してるんです。ほら、あそこにいるの僕の友達」
 智成が指をさすので、周人は頭を下げる。
「旅行の日程はどんな感じなんですか?」
「えっと、1ヵ月間の旅で、ハノイがスタートでバンコクがゴール。その間は自由にって感じかな」
 ―おっ! なんて似たシチュエーションなんだ。と智成は思った。
「マジっすか! 偶然ですね。僕達もそんな感じです。バンコクがゴール …もしよければ一緒に行動しませんか?」
 美智は目を丸くして、幸来紗の顔を見る。
「ちょっと、この子と相談したいので、少し待っててください」
 美智にそう言われると、智成は周人のもとに戻ってきた。
「どうだった?」と周人は訊く。
「んー、俺と話してた子の感触はいいな。ただ、その友達の反応は良くなさそうだった」智成は眉をひそめる。
 10分後、美智が二人に近づいてきた。
「分かりました。OKです。ただ、私たち、行きたいところをだいたい決めているんで、合わせえてもらってもいいですか?」
「了解です! 問題ないよな?」智成は嬉しそうに周人に聞く。
「ああ、別にかまわないよ」
「よし、決定!」智成のテンションは上がる。
 美智は、幸来紗に手を振って呼ぶ。
「幸来紗! おいでよ」
 幸来紗が来ると、四人は、お互いに自己紹介をした。
「俺、日坂智成っていいます。そんでもって、こいつは野島周人。よろしくね!」
「えっと、私は岩崎美智、で、この子は岸部幸来紗」
 幸来紗は、あんまり気乗りしていない様子だが、美智は楽しそうに話す。
「それで、私たちが行きたい場所なんだけど、幸来紗が負の歴史に関心があってね、戦争を学べるような場所に行きたいの。資料館とか。ベトナム戦争や、カンボジア内戦関係の。でも、そんな暗い場所ばかりじゃなくて、時間もあるし、いろんなところに行きたいよね。世界遺産とか」
「いいですね! 俺、アンコールワットは行っておきたいな!」日坂はノリで返す。
 周人も、悲惨な歴史には関心が強かった。
「僕も、そこらへんの歴史、とても興味があるんですよ。ぜひ行きたいです」
「本当ですか?」幸来紗は、周人の顔を見ると初めて笑顔を見せ、少し驚いた様子で嬉しそうに訊く。
「そういった場所、行ってみたいなーって少し思ってたんです。でも、言葉もろくに話せないし、初めての海外の旅でスムーズにいかないんじゃないかなって思って…」
「そういうことなら問題なし。幸来紗は英語ペラペラだから」美智はが胸を張って推す。
「そんな、大袈裟だって」幸来紗は照れる。
「いいね! 俺、歴史弱いけど学習してみよう! じゃあ、出会いを記念して、記念撮影しよう!」
 智成が上機嫌で言うと、四人は、ハロン湾の絶景をバックに写真を撮った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

エロ・ファンタジー

フルーツパフェ
大衆娯楽
 物事は上手くいかない。  それは異世界でも同じこと。  夢と好奇心に溢れる異世界の少女達は、恥辱に塗れた現実を味わうことになる。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

性転換マッサージ

廣瀬純一
SF
性転換マッサージに通う人々の話

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!

夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ) 安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると めちゃめちゃ強かった! 気軽に読めるので、暇つぶしに是非! 涙あり、笑いあり シリアスなおとぼけ冒険譚! 異世界ラブ冒険ファンタジー!

ファイナルアンサー、Mrガリレオ?

ちみあくた
SF
 1582年4月、ピサ大学の学生としてミサに参加している若きガリレオ・ガリレイは、挑戦的に議論をふっかけてくるサグレドという奇妙な学生と出会った。  魔法に似た不思議な力で、いきなりピサの聖堂から連れ出されるガリレオ。  16世紀の科学レベルをはるかに超えるサグレドの知識に圧倒されつつ、時代も場所も特定できない奇妙な空間を旅する羽目に追い込まれるのだが……  最後まで傍観してはいられなかった。  サグレドの望みは、極めて深刻なある「質問」を、後に科学の父と呼ばれるガリレオへ投げかける事にあったのだ。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...