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百花繚乱
「鬼灯」六
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船が港を出てから、二十分ほどで御人ヶ島に着いた。
着岸する時に少し強い横揺れがあったくらいで、航海中は特に何も起こらなかった。
下船した僕らは、鬼灯六郎の言われるがままに、島の中心部へと進んで行った。
「なあ、何かおかしくないか?」
「…ほえ?」幽霊の彼に突然そう聞かれた時、あまりに突然だったのでそんな素っ頓狂な声をあげてしまった。
「…何か、変?僕の体調面とか?」
「まあ、君の体調も確かに正常ではないな、ちょっと風邪ひいてるし。だけどそうじゃない、君がおかしいんじゃなくて、この島、この鬼退治が怪しいんだ」
「…何で?」
「一つ。この御人ヶ島の港は、無人島のようであるにも関わらず、人の出入りしている跡があること、それもおそらく最近だ。…あの辺りなんか、那智姫港にあったのと同じようなものがあるだろう?…だから、鬼じゃない誰かがこの島に来てるんじゃないかと思われる、それも頻繁に。…鬼が住んでいるとされる島に、そんなに頻繁に人が来るか?」
…なるほど。確かに彼が指さした場所には、那智姫港にもおいてあったものと似たような機械があった。
「二つ。この鬼退治に加わっている者達だが、港で出会った時から一言も発しない、…おかしいと思わないか?」
まあ確かに、彼らとは全く話してないけど…。
「三つ。鬼灯六郎だが、」
「…僕が、どうかしたのかい?」
後ろから、鬼灯六郎がにゅっと首を出した。
「いや、何でもない」
何か、言及したいことがあったんじゃないのか。
僕は、彼をじっと見つめたが、彼は僕の視線に構うことなく「行くぞ」と低い声で告げた。
「…君は、鬼灯君とか、この人たちを疑ってるの?…何か、さっき言った以外に根拠でもあるの?さっき言ってたことは確かに変だとは思うけど、それだけじゃこの人たちを疑う理由にはならないよ」
「…君は、俺よりも、こいつらを信じるのか?」
「そうはいってないよ、だけど…」
「坊や、あなたの疑問に答えようか?」
後ろから声がして振り向くと、同行者の、このメンバーで唯一の女性が立っていた。
「…話、聞いてたんですか?」
「ごめんね、聞こえちゃった。でも、この侍君の疑問には答えられるよ。私達は、佐藤さん以外は元から知り合いで、一度佐藤さんがいないメンバーで鬼退治に来てたのよ。でもその時鬼にボコボコにされちゃって、だからみんな緊迫して喋らないんだと思うよ。機械とかも、ないよりあった方が停泊の時に便利だから共同購入したのよ、そういうこと。OK?」
なるほど、よくわかった。
「………そうか」
「わかってくれたらいいよー!じゃあ、私は先頭の人に伝えることがあるので失礼するよ」
そう言うと彼女は、速やかに僕らを追い越して先頭の鬼灯六郎の辺りに飛んでいった。
「……ひょっとして、まだ疑ってるの?」
真っ直ぐに、鬼灯六郎を凝視する彼を見て、僕は思わず口をついた。
「…そうだ」
「…その行為を、君自身のため、僕の安全のためにしてくれているのもわかる。でも、とりあえず疑うのを止めてくれないかな。彼らは、僕と同じように霊的存在が見える人達だから、言って見れば同士であり、同胞なんだよ。彼らを疑うことは僕を疑うのと同じだよ」
「…そうか」
彼は、鬼灯六郎を凝視するのを止めたけど、どこか不服そうな顔で小さな溜め息をついた。
それは、とても小さな溜め息で、きっと彼も意識しないで出したのだろうけど、僕の耳はその小さな音を聞き逃さなかった。
その溜め息のわけは、聴けなかった。
着岸する時に少し強い横揺れがあったくらいで、航海中は特に何も起こらなかった。
下船した僕らは、鬼灯六郎の言われるがままに、島の中心部へと進んで行った。
「なあ、何かおかしくないか?」
「…ほえ?」幽霊の彼に突然そう聞かれた時、あまりに突然だったのでそんな素っ頓狂な声をあげてしまった。
「…何か、変?僕の体調面とか?」
「まあ、君の体調も確かに正常ではないな、ちょっと風邪ひいてるし。だけどそうじゃない、君がおかしいんじゃなくて、この島、この鬼退治が怪しいんだ」
「…何で?」
「一つ。この御人ヶ島の港は、無人島のようであるにも関わらず、人の出入りしている跡があること、それもおそらく最近だ。…あの辺りなんか、那智姫港にあったのと同じようなものがあるだろう?…だから、鬼じゃない誰かがこの島に来てるんじゃないかと思われる、それも頻繁に。…鬼が住んでいるとされる島に、そんなに頻繁に人が来るか?」
…なるほど。確かに彼が指さした場所には、那智姫港にもおいてあったものと似たような機械があった。
「二つ。この鬼退治に加わっている者達だが、港で出会った時から一言も発しない、…おかしいと思わないか?」
まあ確かに、彼らとは全く話してないけど…。
「三つ。鬼灯六郎だが、」
「…僕が、どうかしたのかい?」
後ろから、鬼灯六郎がにゅっと首を出した。
「いや、何でもない」
何か、言及したいことがあったんじゃないのか。
僕は、彼をじっと見つめたが、彼は僕の視線に構うことなく「行くぞ」と低い声で告げた。
「…君は、鬼灯君とか、この人たちを疑ってるの?…何か、さっき言った以外に根拠でもあるの?さっき言ってたことは確かに変だとは思うけど、それだけじゃこの人たちを疑う理由にはならないよ」
「…君は、俺よりも、こいつらを信じるのか?」
「そうはいってないよ、だけど…」
「坊や、あなたの疑問に答えようか?」
後ろから声がして振り向くと、同行者の、このメンバーで唯一の女性が立っていた。
「…話、聞いてたんですか?」
「ごめんね、聞こえちゃった。でも、この侍君の疑問には答えられるよ。私達は、佐藤さん以外は元から知り合いで、一度佐藤さんがいないメンバーで鬼退治に来てたのよ。でもその時鬼にボコボコにされちゃって、だからみんな緊迫して喋らないんだと思うよ。機械とかも、ないよりあった方が停泊の時に便利だから共同購入したのよ、そういうこと。OK?」
なるほど、よくわかった。
「………そうか」
「わかってくれたらいいよー!じゃあ、私は先頭の人に伝えることがあるので失礼するよ」
そう言うと彼女は、速やかに僕らを追い越して先頭の鬼灯六郎の辺りに飛んでいった。
「……ひょっとして、まだ疑ってるの?」
真っ直ぐに、鬼灯六郎を凝視する彼を見て、僕は思わず口をついた。
「…そうだ」
「…その行為を、君自身のため、僕の安全のためにしてくれているのもわかる。でも、とりあえず疑うのを止めてくれないかな。彼らは、僕と同じように霊的存在が見える人達だから、言って見れば同士であり、同胞なんだよ。彼らを疑うことは僕を疑うのと同じだよ」
「…そうか」
彼は、鬼灯六郎を凝視するのを止めたけど、どこか不服そうな顔で小さな溜め息をついた。
それは、とても小さな溜め息で、きっと彼も意識しないで出したのだろうけど、僕の耳はその小さな音を聞き逃さなかった。
その溜め息のわけは、聴けなかった。
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