桜と椿

星野恵

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百花繚乱

「椿」七

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「…解けるものならば、ってどういうこと?」
僕は、彼に聞き返した。

彼は、空虚を見つめた様子で、気だるげにこう吐き捨てた。

「…ちょっと前にな、強い力を持ったある坊主が俺の元に立ち寄ったんだがな、あいつにも俺の鎖は解けなかった。その鎖には強いまじないがかけられてるんだ、あんたのような小童が解けるとは思えない。故に、あんたにはその鎖を解くことは頼んだが期待はしてない」

「…そうか?やってみなきゃわからんだろ」

僕は、岩の裏側に回って、鎖を強く引っ張った。


鎖は、いとも簡単に引きちぎれた。

「な?言った通りだろ?」

彼は、驚きを隠せない様子だった。
それは、ついさっき見せた表情よりもさらに数段上の驚きの表情だった。

「…………感謝、する…」

やや煮え切らない様子だったが、彼は、感謝の意を表した。

「別にいいよ、これで動けるかい?」
「ああ」

彼は今まで、上半身を岩に括りつけられて、あぐらをかいた状態で地面に座っていたため、鎖から解き放たれ、
彼が立っているのを見ると、余計に、彼の異質さが感じられた。

まず、彼は身長が、男性にしては割と低い。身長が160センチない僕よりも少し低いぐらいなのだから、彼の身長が低いのがわかると思う。
また、彼は、とても若く見えた。年齢的には僕と同じくらいじゃないかと思えた。
だけど、僕が彼に感じた最大の違和感は、彼の"目"だった。左目の黒目は普通の黒色なのだが、彼は右目の黒目の、本来黒色である部分が、真っ赤に染まっていた。
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