桜と椿

星野恵

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百花繚乱

「椿」一

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あの日、僕は、逃げていた。

森の中を、逃げ惑っていた。

何者かは、未だによくわからない。

でも、この頃の僕は狙われ、追われるということが多かった。

少なくとも、僕を追ってきた奴が、悪意を持って僕に近づこうとしていたのは確かだと思う。

なおかつ、僕を追いかけているのは「人」ではないのだから、余計にタチが悪い。
「人」と違って「彼ら」の中には、人目がある場所でも平気で襲ってくる輩がいるからだ。



僕は、人が、本来見ることができないようなものが見える。
それは、幽霊であったり、妖怪のようなものであったり、僕が見えるものは様々である。
今、追いかけられてるのは、そういうものが見えるせいかどうかはわからないが、そのせいでもあるんではないかとも思う。



幸い、今は撒くことができたみたいだけど、いつまた見つかるかもわからない。


そんなことを考えながら歩いていたら、何かに躓いてこけてしまった。

膝をさすりながら足元を見ると、そこには、鎖が横たわっていた。
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