【完結】振られてばかりの幼馴染を寝取って絶対に幸せにします

りちょ

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15話

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「……………は?何、は?」

「今言ったことが全てです」

「………………………は?え、なに、付き合ってないじゃん」

「うん」

「え………………?」


翌朝。俺が用意したトーストを齧っていた楓が、ポロッと手から全部落とした。上に乗っていた目玉焼きが、皿の上でぺちゃっと潰れる。


「え……?え……?ホテル連れ込まれてそのまま?!」

「……うん、まあ、そうです」

「お前本ッッ当に見る目無いよ!!は?!ダメだろそんな男!!!!」

「やー返す言葉もございません………えっ、なんで楓が泣いてんの」

「うるさいバカ、泣いてねえし!!!」


朝、少し早く起きて簡単な朝食を用意して楓が起きてくるのを待った。
ちょうど目玉焼きが焼き上がった頃に寝癖だらけの楓が起きてきて、珍しいとひとこと言った。

せめてもの罪滅ぼしと楓のご機嫌取りのため、半熟の目玉焼きとトーストを用意してから俺は全部楓に打ち明けた。楓は表情をころころかえて驚いたり怒ったりして、最後には少し涙ぐんでいた。

俺は軽蔑されるのが一番怖かったから、いつもの楓のままでいてくれたことが嬉しかった。

楓がガシガシと目元を擦る。
ずる、と鼻を啜りながら俺をキッと睨んだ。


「……縁切って。今すぐ。先輩に電話して」

「今?!良いけど…今週末最後に会うからその時」

「ダメ、お前流されるだろどうせ。今振って、そんで空いた週末は2人でなんかどっか行こう」

「ええ…分かったって」


楓に睨まれるまま先輩に電話をかける。
数コールで繋がってしまって少し焦った。

俺は別れ話を切り出したことが無いからどうすれば良いのか分からずたらたら雑談をしてしまって、また楓にじとっと睨まれる。

まあ、別れ話もなにも付き合って無いし。
適当でいいかと腹を括った。


「あー…あと先輩、その、……ちゃんと恋人できたんで、今度の予定無しでいいすか?」

「うん、……もう全部無しで。はい、じゃあ……」


そこまで言うと楓にスマホを取り上げられる。

俺が文句を言うより前に楓は通話を切り、連絡先をブロック削除、ついでに先輩と繋がってすらなかったSNSまでわざわざブロックされた。
…てか、なんでSNS知ってるんだよ。


「わー完全に連絡手段絶たれた」

「当たり前だろ、流石にもう関わっちゃダメ。お前サークルもやめなよ、あれどうせ飲みサーでしょ?普段ろくに顔も出してないんだし」

「まあそうだけど……顔合わせるのしんどいしその方がいっか」


楓がブロックするまで知らなかった、先輩のSNSを少しだけのぞいた。
当たり障りない投稿ばかりだった。ラーメンとコーヒーと、旅行の写真。
俺との写真が一枚も無かったことに少し安心した。

楓がゆっくりまた座り直して、コップに注いであった麦茶を一気に飲む。
少し落ち着いたのか、皿の上で潰れた目玉焼きに気がついて、少し申し訳なさそうな顔をして食パンの上に載せ直し始めた。


「…………………あとさ。恋人って、僕のこと?」


それから、小さい声でぼそっとそんな事を言った。


「………………えっうん。え……違うの?」

「違くはない、恋人。うん。恋人………で、合ってる」

「あは、また泣いてる。そんな涙もろかった?」

「………ぼくが、何年、…どんな思いで、片想いしてたと思ってんだよ」


もう誤魔化せないくらいボロボロ涙が溢れてから、楓は開き直って隠すのをやめた。
鼻を啜って少し俯いて小さな声でそう言った。

なんとなく昔を思い出す。
俺は何かあるとわっと泣くタイプの子供だったけれど、楓はいつもこうやって黙ってぼたぼた涙を溢していた。
泣き顔は変わっていない。全然変わっていなくて笑ってしまう。


「昔喧嘩して、俺が楓のこと嫌いって言った時、同じ顔して泣いてた」

「…なに、なんだよ急に」

「思い出しただけ。ごめんな、泣かせて」

「本当だよバカ。全部お前のせいなんだから、僕が泣くのも悩むのも落ち込むのも」

「大好きじゃん俺のこと」

「そうじゃなきゃおかしいでしょ、僕がやってきたこと全部」


むすっとした顔のまま、ちょっと恥ずかしくなるようなことをつらつらと楓は言った。
素直なんだから捻くれてるのかよくわからない良い草に笑ってしまう。


「……本当にいいの?僕で。お前、男が好きなわけじゃ無いでしょ」

「楓がいいなって思ったから」

「…僕、別れる気無いからね。気の迷いだったとか言っても聞く気無いよ」

「あはは!なんだよそれ」


脅迫まがいの告白は初めてされたから、今度は素直に笑ってしまった。楓らしいなとも思った。


「俺も大好きだよ、楓のこと」

「……どこが好きなの」

「まずセンス良いところ、楓が誘ってくれる場所は全部楽しいし楓が好きなものは全部俺もハマるし」

「何それ、初めて聞いた」

「言ってないもん。あとはマメなところ。俺が好きなもの黙って用意してくれるとことか」

「マメって……え、そんな風に思ってたの?」

「うん。それとこういう面倒くさいとこも割と好きかも。可愛げあっていいよ。重いほうがいいな、安心できるし」

「面倒くさくないし。…他には」

「んー、性格とか、顔とか、色々あるよ」


冷めてしまったトーストを齧る。
照れているのを隠すように、楓はまだ仏頂面をしていた。




「…あ、エッチも良かったよ。楓が一番」

「……バカ。いいよそれは別に、言わなくて」
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