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婚約解消は書面にて
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ユウナはクエンティン商会のガゼルからの申し出で、ジュードとの婚約解消が無事に決まった。
しかし、ユウナの父親と取り交わした契約のこともあるので、ユウナの祖父である伯爵と、アリアの父親である男爵も交えた上で、きちんと書類にすべきだろうとなり、ユウナ側からはユウナ以外に兄のノアと祖父。
クエンティン商会からはガゼルとジュード。
男爵家からは男爵とアリアが参加する。
どうやらついでにアリアとジュードの婚約も決めてしまうようで、格上の伯爵であるユウナの祖父に証人となってもらいたいようだ。
そうすることで、ユウナとジュードの婚約は良好に解消されたと、他の貴族達に知らしめることにもなるらしい。
ユウナにとったら無事に婚約が破棄されるならどっちでもいい。
いや、『破棄』ではなく『白紙』か。
破棄となってしまうと、クエンティン商会は父親に土地を渡さなければならなくなってしまう。
あのゲスが人の形を取ったような父親にはいいお仕置きとなるだろう。
商会の運営も、今後は兄のノアが目を光らせていくようだ。
ノアはリオと同じく隣国に留学していたが、そもそもの理由は他国での販路を拡大するため。
それもどうやらうまくいったらしく、もう他国にいる必要もない。
むしろ、帰ってきて他国の商会とのやり取りに勤しむ方が優先だと近々帰ってくる予定だったようだ。
それがユウナの婚約で少し早まっただけの話。
あの父親に任せていると今度はなにをしでかすか分からないと、父親のそばにはノアがいた方がいいと、家族全員の意見が一致した。
今回のユウナの一件で、父親は完全に信頼を失ったが、自業自得である。
まだ小さな弟ですら同情はしていなかった。
そんな中、ユウナの目の前では三つの家の代表がそろい踏みだ。
どこか緊張をにじませるガゼルは、状況を理解しているからだ。
それにもかかわらず、元凶とも言える当事者のジュードとアリアは、今のところ発言しないまでも不満げである。
しかし、本当は男爵も乗り気ではないとユウナは祖父母を通じて小耳に挟んでいた。
貴族でもなく、商会の跡取りでもないジュードと結婚させる旨味などまったくないのは誰の目にも明らかである。
しかし、男爵は横恋慕するほどにアリアがジュードを好いていると思っているからこそ、娘を愛する父親として、苦渋の決断をしたにすぎない。
だというのに、アリアは不満を隠そうともしないので、きっと男爵も不思議に思っていることだろう。
男爵の方は、貴族の中では底辺の爵位とはいえ、貴族だけあって表情には出していないたいうのに。
もちろん、貴族の教育を受けたユウナも表情には出していない。そこがやはりアリアとの教育の差が現れている。
ちゃんと教育されていなかったのが分かって、改めてアリアの突拍子もない勘違いを色々と納得させられた。
「では、予定通りアリア嬢とジュード君を婚約させるということでよろしいかな?」
アリアの祖父が問うと、ガゼルはがっくりと肩を落とす。
「はい……」
もはやガゼルに否という返事はない。
かわいそうな気もするが、ジュードの勘違いのそもそもの原因はガゼルにもあるので、ユウナ側の者からしたら自業自得である。
商人ならばきちんとユウナが伯爵位を継ぐのか確認をしておくべきだった。
勝手に思い込んで突き進んでしまったのだから、ゲスの陰謀とはいえ、商会をまとめるトップとして失格だ。
目先の欲に目がくらんでしまったのだろう。
「ブラットル男爵も反対はないか?」
「ええ。仕方がありません。本心としてはもっとよい相手に嫁いで欲しかったですが、ここまで噂が周ってしまっては、どちらにしろ今後よい縁談は見込めません。それならば、アリアの好いた者と添い遂げるのが一番でしょう。シャロン嬢にも伯爵様にも、大変なご迷惑をおかけしたこと、そして男爵家の名誉を守ってくださったことを、改めて感謝申し上げます」
そう言って頭を下げた男爵。
そんな彼からは諦めと失望の色が見える。
まあ、当然だ。
祖父からの情報によると、社交もままならない知識もマナーも不足しているアリアに、かなり優良な縁談の話がいくつか出ていたというのだから。
それも男爵自身が愛娘のためにとずいぶん頑張って探したという。
すべては娘の将来のため。
それが当の本人には父親の愛が伝わるどころか、今にも不満を爆発させそうな顔をしているのだから、男爵が不憫に思えてくる。
親の心子知らずとはよく言ったものである。
「あのクズに爪の垢を煎じて飲ませてやりたいほど娘思いな方だな」
ユウナ以外に聞こえないほどの声量で、ノアがぽつりと呟く。
「まったくです」
ユウナもこればかりは父親をフォローできない。する気も起きない。
二人の中で暴落していく父親への評価。
男爵もまたユウナの父親の被害者とも言えるので、ユウナもノアも申し訳なくて仕方ない。
しかし、ここで下手に出て逆に弱みを見せてしまうのは悪手だ。
そんなことをしたら、それをネタにどんな要求をされるか分からないのが貴族社会である。
ここはあくまで、二人のために身を引いた健気な令嬢でいなくてはならない。
心の中で土下座しつつ、ユウナは微笑む。
「お気になさらないでください、ブラットル男爵。思い合うお二人が結ばれるこの日に立ち会えて嬉しく思いますわ」
ユウナはそう言って、祖母直伝の、貴族社会を生き抜くための天使の微笑みを浮かべた。
「なんとお優しいのか……。伯爵を継ぐお方はさすが心が広くていらっしゃる。歳ばかり取った自分が恥ずかしくなる思いです」
なにやら男爵は感激しているが、ユウナの本心が隠せたならそれでいい。
実際はさっさと契約書を解消したいと急いていた。
一応は正式に婚約が解消となったが、ガゼルの方が申しわけないからと、結んだ契約通りジュード有責での婚約破棄で構わないといってきかないのだ。
それはこちらとしても、父親を喜ばせてしまうだけになので困るため、解消でなんとか進めたいと思っているのに。
この場でそれを改めて話をするつもりでユウナ達も出席していた。
「おじい様、話もまとまったことですし、例の件を先に決めてしまいましょう」
キリがいい所でノアが口を挟むと、祖父が頷き、ガゼルに向かって口を開いた。
「そうだな。ガゼル殿、婚約に際に取り決めた契約だが、やはりこちらとしても解消で進めたい」
「いや、しかし、これほどそちらにご迷惑をおかけしたのです。正直あの土地は惜しいですが、誠意を見せるには引き渡すのが当然かと思います。商人は信用が第一。契約はきちんと守らせていただきたい」
「いや、それではジュード君が浮気をしたということになってしまう。せっかく社交界では同情的な意見が多い中で破棄となったら、やはり浮気かとマイナスイメージがついてしまい、我が家にとっても男爵家にとってもクエンティン商会にとってもよくない。婚約は解消、または白紙で進めさせてくれないか?」
「……伯爵様がそこまでおっしゃるのでしたら、私としましては感謝しかございません」
伯爵の意見に、一商会の平民が反対などできようはずもない。
それに破棄となった場合の損得勘定が頭の中で計算されているはずだ。
「では、婚約破棄ではなく、あくまで解消ということで、あらかじめ渡していた書類には目を通してくれたかな?」
「はい、あまりにもこちらに都合がよすぎるものばかりで、逆に勘ぐってしまいました」
苦笑するガゼルに対し、祖父は声をあげて笑う。
「はははっ。せっかくの門出に水を差したくはないのでな。問題ないのならサインを」
祖父が目配せすると、ノアが書類を二部テーブルに置いた。
すでにユウナの父親のサインが書かれているものである。
最後の最後までごねていた父親も、母親の「サインしないなら実家に帰ります」宣言に、慌ててペンを取った。
いろいろと難ありだが、母親への愛情は本物のようだ。
確認を終えたガゼルが同じ内容が書かれた二部ある書類にサインをする。
ノアと祖父が確認して、一部ずつお互いで保管することになる。
「問題なく解消できて重畳だ。それでは、次に二人の婚約を決めるとしよう」
祖父の視線が、ジュードとアリアに向けられた。
しかし、ユウナの父親と取り交わした契約のこともあるので、ユウナの祖父である伯爵と、アリアの父親である男爵も交えた上で、きちんと書類にすべきだろうとなり、ユウナ側からはユウナ以外に兄のノアと祖父。
クエンティン商会からはガゼルとジュード。
男爵家からは男爵とアリアが参加する。
どうやらついでにアリアとジュードの婚約も決めてしまうようで、格上の伯爵であるユウナの祖父に証人となってもらいたいようだ。
そうすることで、ユウナとジュードの婚約は良好に解消されたと、他の貴族達に知らしめることにもなるらしい。
ユウナにとったら無事に婚約が破棄されるならどっちでもいい。
いや、『破棄』ではなく『白紙』か。
破棄となってしまうと、クエンティン商会は父親に土地を渡さなければならなくなってしまう。
あのゲスが人の形を取ったような父親にはいいお仕置きとなるだろう。
商会の運営も、今後は兄のノアが目を光らせていくようだ。
ノアはリオと同じく隣国に留学していたが、そもそもの理由は他国での販路を拡大するため。
それもどうやらうまくいったらしく、もう他国にいる必要もない。
むしろ、帰ってきて他国の商会とのやり取りに勤しむ方が優先だと近々帰ってくる予定だったようだ。
それがユウナの婚約で少し早まっただけの話。
あの父親に任せていると今度はなにをしでかすか分からないと、父親のそばにはノアがいた方がいいと、家族全員の意見が一致した。
今回のユウナの一件で、父親は完全に信頼を失ったが、自業自得である。
まだ小さな弟ですら同情はしていなかった。
そんな中、ユウナの目の前では三つの家の代表がそろい踏みだ。
どこか緊張をにじませるガゼルは、状況を理解しているからだ。
それにもかかわらず、元凶とも言える当事者のジュードとアリアは、今のところ発言しないまでも不満げである。
しかし、本当は男爵も乗り気ではないとユウナは祖父母を通じて小耳に挟んでいた。
貴族でもなく、商会の跡取りでもないジュードと結婚させる旨味などまったくないのは誰の目にも明らかである。
しかし、男爵は横恋慕するほどにアリアがジュードを好いていると思っているからこそ、娘を愛する父親として、苦渋の決断をしたにすぎない。
だというのに、アリアは不満を隠そうともしないので、きっと男爵も不思議に思っていることだろう。
男爵の方は、貴族の中では底辺の爵位とはいえ、貴族だけあって表情には出していないたいうのに。
もちろん、貴族の教育を受けたユウナも表情には出していない。そこがやはりアリアとの教育の差が現れている。
ちゃんと教育されていなかったのが分かって、改めてアリアの突拍子もない勘違いを色々と納得させられた。
「では、予定通りアリア嬢とジュード君を婚約させるということでよろしいかな?」
アリアの祖父が問うと、ガゼルはがっくりと肩を落とす。
「はい……」
もはやガゼルに否という返事はない。
かわいそうな気もするが、ジュードの勘違いのそもそもの原因はガゼルにもあるので、ユウナ側の者からしたら自業自得である。
商人ならばきちんとユウナが伯爵位を継ぐのか確認をしておくべきだった。
勝手に思い込んで突き進んでしまったのだから、ゲスの陰謀とはいえ、商会をまとめるトップとして失格だ。
目先の欲に目がくらんでしまったのだろう。
「ブラットル男爵も反対はないか?」
「ええ。仕方がありません。本心としてはもっとよい相手に嫁いで欲しかったですが、ここまで噂が周ってしまっては、どちらにしろ今後よい縁談は見込めません。それならば、アリアの好いた者と添い遂げるのが一番でしょう。シャロン嬢にも伯爵様にも、大変なご迷惑をおかけしたこと、そして男爵家の名誉を守ってくださったことを、改めて感謝申し上げます」
そう言って頭を下げた男爵。
そんな彼からは諦めと失望の色が見える。
まあ、当然だ。
祖父からの情報によると、社交もままならない知識もマナーも不足しているアリアに、かなり優良な縁談の話がいくつか出ていたというのだから。
それも男爵自身が愛娘のためにとずいぶん頑張って探したという。
すべては娘の将来のため。
それが当の本人には父親の愛が伝わるどころか、今にも不満を爆発させそうな顔をしているのだから、男爵が不憫に思えてくる。
親の心子知らずとはよく言ったものである。
「あのクズに爪の垢を煎じて飲ませてやりたいほど娘思いな方だな」
ユウナ以外に聞こえないほどの声量で、ノアがぽつりと呟く。
「まったくです」
ユウナもこればかりは父親をフォローできない。する気も起きない。
二人の中で暴落していく父親への評価。
男爵もまたユウナの父親の被害者とも言えるので、ユウナもノアも申し訳なくて仕方ない。
しかし、ここで下手に出て逆に弱みを見せてしまうのは悪手だ。
そんなことをしたら、それをネタにどんな要求をされるか分からないのが貴族社会である。
ここはあくまで、二人のために身を引いた健気な令嬢でいなくてはならない。
心の中で土下座しつつ、ユウナは微笑む。
「お気になさらないでください、ブラットル男爵。思い合うお二人が結ばれるこの日に立ち会えて嬉しく思いますわ」
ユウナはそう言って、祖母直伝の、貴族社会を生き抜くための天使の微笑みを浮かべた。
「なんとお優しいのか……。伯爵を継ぐお方はさすが心が広くていらっしゃる。歳ばかり取った自分が恥ずかしくなる思いです」
なにやら男爵は感激しているが、ユウナの本心が隠せたならそれでいい。
実際はさっさと契約書を解消したいと急いていた。
一応は正式に婚約が解消となったが、ガゼルの方が申しわけないからと、結んだ契約通りジュード有責での婚約破棄で構わないといってきかないのだ。
それはこちらとしても、父親を喜ばせてしまうだけになので困るため、解消でなんとか進めたいと思っているのに。
この場でそれを改めて話をするつもりでユウナ達も出席していた。
「おじい様、話もまとまったことですし、例の件を先に決めてしまいましょう」
キリがいい所でノアが口を挟むと、祖父が頷き、ガゼルに向かって口を開いた。
「そうだな。ガゼル殿、婚約に際に取り決めた契約だが、やはりこちらとしても解消で進めたい」
「いや、しかし、これほどそちらにご迷惑をおかけしたのです。正直あの土地は惜しいですが、誠意を見せるには引き渡すのが当然かと思います。商人は信用が第一。契約はきちんと守らせていただきたい」
「いや、それではジュード君が浮気をしたということになってしまう。せっかく社交界では同情的な意見が多い中で破棄となったら、やはり浮気かとマイナスイメージがついてしまい、我が家にとっても男爵家にとってもクエンティン商会にとってもよくない。婚約は解消、または白紙で進めさせてくれないか?」
「……伯爵様がそこまでおっしゃるのでしたら、私としましては感謝しかございません」
伯爵の意見に、一商会の平民が反対などできようはずもない。
それに破棄となった場合の損得勘定が頭の中で計算されているはずだ。
「では、婚約破棄ではなく、あくまで解消ということで、あらかじめ渡していた書類には目を通してくれたかな?」
「はい、あまりにもこちらに都合がよすぎるものばかりで、逆に勘ぐってしまいました」
苦笑するガゼルに対し、祖父は声をあげて笑う。
「はははっ。せっかくの門出に水を差したくはないのでな。問題ないのならサインを」
祖父が目配せすると、ノアが書類を二部テーブルに置いた。
すでにユウナの父親のサインが書かれているものである。
最後の最後までごねていた父親も、母親の「サインしないなら実家に帰ります」宣言に、慌ててペンを取った。
いろいろと難ありだが、母親への愛情は本物のようだ。
確認を終えたガゼルが同じ内容が書かれた二部ある書類にサインをする。
ノアと祖父が確認して、一部ずつお互いで保管することになる。
「問題なく解消できて重畳だ。それでは、次に二人の婚約を決めるとしよう」
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