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アリアからの責め
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「いいか、絶対に返せよ」
「額が額だから一カ月は待ってやるよ」
「それだけ待っても返してもらえないなら、お前の親父さんに言いに行くからな」
「ちょっと待ってくれ! 親父に告げ口だって!? それだけはっ……」
「だったら返せば良い話しだ」
ジュードを残して去って行く友人達を、ジュードは呆然と見送った。
借金をしていることは親は当然知らない。
そんなことが知られたら、ジュードはどれだけ叱られるだろうか。
少しなら問題ないはずだ。
しかし、たくさんの友人達から借りた金をまとめたら、ジュードの一年分のお小遣いを合わせても到底足りやしないほどの金額に膨れ上がっていた。
怒られる程度で済むはずがない。
親に知られる前になんとかしなければならないが、一カ月でそれだけの金額を用意するなど不可能だ。
「どうしたらいいんだ……」
ジュードは頭を抱えた。
そして、ふと頭をよぎる。
「そうだ、アリアにお金を借りよう」
アリアは貴族としては末席の男爵とはいえ、貴族である。
ジュードなどより、よほど裕福でお金を持っているはず。
アリア自身が自由にできるお金を持っているか分からないが、父親の男爵からは大層かわいがられているのだから、アリアからそれとなく頼んでもらえばなんとかなるのではないだろうかと、ジュードは安易に考えた。
手段は選んでいられない。
婚約者なのだからユウナに借金を払えと言いたいジュードだったが、今はユウナの機嫌を悪くするわけにはいかないとぐっとこらえる。
そもそもユウナにはなんの関係もない借金なので、ユウナが払う理由もないのだが、当たり前の考えにも至らない。
そんな愚かなジュードはまだ伯爵の地位を諦められずにいた。
そうして、アリアに目をつけたジュードがアリアに会いに行くと、顔を合わせて早々詰め寄られる。
「ジュード、ユウナさんはどうだったの? ジュードが伯爵になれないなんて嘘よね? ユウナさんが意地悪を言っているだけでしょう?」
いつもは穏やかにニコニコしているアリアが、今日は切羽詰まった表情をしている。
よほどジュードが伯爵になれないと困るのだろうが、何故困るのかジュードは深く考えてはいない。
それよりも大事なことがあるからだ。
「大丈夫だよ、アリア。最近かまってやれていなかったから、少しへそを曲げているだけさ」
「でも、ユウナさんの言葉はそんな感じじゃなかったわ。本当にジュードは伯爵になれるのよね? 私に嘘を吐いたの!?」
アリアはようやくここにきてジュードへ疑いを持ち始めていた。
「吐くわけないじゃないか。俺はいずれ伯爵になるんだ」
ジュードの声にはわずかな動揺が見えた。
なにせユウナから衆人環視の中、きっぱりと否定されたのだから当然だ。
しかし、今それをアリアに知られてしまってはマズイという危機感は持ち合わせていた。
「本当に?」
「もちろんさ」
アリアは疑いが晴れたわけではなかったが、今は追及するのをやめようと思ったらしく、ジュードから離れようとした。
しかし、そこでジュードが口を開く。
「アリア、少し言いづらいんだけど、お金を貸してくれないか?」
「えっ、お金?」
「ああ、ちょっと友人が困ってて、お金を必要としてるんだけど俺のお小遣いじゃ足りそうにないんだ。後、友人は誰かに知られたくないって言ってるから、内緒でこっそり貸してほしいんだ」
「ユウナさんに貸してもらったら? どうせ結婚したら彼女のお金はジュードのものになるんだし」
嫌みではなく、本当にそう思っている様子のアリアに、ジュードはどう説得したらいいか焦る。
「ほ、ほら、今のユウナは拗ねているだろう? そんな時にお金を貸せなんて言ったら、婚約継続に支障をきたすかもしれないからさ。それはアリアも困るだろう?」
「確かにそうね」
咄嗟ではあったが、うまい言いわけができてほっとするジュードだが、アリアの表情は優れない。
「ごめんなさいね、ジュード。お金は貸せないわ」
「どうして!?」
「私は体が弱くてほとんど屋敷から出ないでしょう? お買い物も、お父様が行商を呼んでくれるし。そもそも貴族は現金を持ち歩かないわ。持っていると危ないからツケ払いにするか、従者が支払いを済ませてしまうもの」
「そんな……」
そういえば、アリアと出かける時にはすべてジュードが支払いをしていた。
それはアリアの父親である男爵から幾ばかりか先にもらっており、そこから出していた。
そのお金も男爵自身から渡されたわけではなく、従者を通してだ。
「じゃあ、ユウナから従者の人に話をしてこっそり……」
「お金を用意するには家長であるお父様の許可がいるわ。用意はできるけどお父様には知られてしまうけれど良い?」
良いわけがない。
愕然とするジュードにアリアは続ける。
「大丈夫よ、ジュード。ユウナさんに形だけでも謝って、機嫌を取ったらすぐに貸してくれるわよ。彼女の家は裕福だもの。それよりも、ちゃんと伯爵になるって文書でも良いから確約をもらっていた方が良いと思うの。後になって反故にされたら大変でしょう?」
ニコニコと笑うアリアからお金を借りるのは不可能だと悟り、ジュードはさらに追い詰められる結果となった。
「額が額だから一カ月は待ってやるよ」
「それだけ待っても返してもらえないなら、お前の親父さんに言いに行くからな」
「ちょっと待ってくれ! 親父に告げ口だって!? それだけはっ……」
「だったら返せば良い話しだ」
ジュードを残して去って行く友人達を、ジュードは呆然と見送った。
借金をしていることは親は当然知らない。
そんなことが知られたら、ジュードはどれだけ叱られるだろうか。
少しなら問題ないはずだ。
しかし、たくさんの友人達から借りた金をまとめたら、ジュードの一年分のお小遣いを合わせても到底足りやしないほどの金額に膨れ上がっていた。
怒られる程度で済むはずがない。
親に知られる前になんとかしなければならないが、一カ月でそれだけの金額を用意するなど不可能だ。
「どうしたらいいんだ……」
ジュードは頭を抱えた。
そして、ふと頭をよぎる。
「そうだ、アリアにお金を借りよう」
アリアは貴族としては末席の男爵とはいえ、貴族である。
ジュードなどより、よほど裕福でお金を持っているはず。
アリア自身が自由にできるお金を持っているか分からないが、父親の男爵からは大層かわいがられているのだから、アリアからそれとなく頼んでもらえばなんとかなるのではないだろうかと、ジュードは安易に考えた。
手段は選んでいられない。
婚約者なのだからユウナに借金を払えと言いたいジュードだったが、今はユウナの機嫌を悪くするわけにはいかないとぐっとこらえる。
そもそもユウナにはなんの関係もない借金なので、ユウナが払う理由もないのだが、当たり前の考えにも至らない。
そんな愚かなジュードはまだ伯爵の地位を諦められずにいた。
そうして、アリアに目をつけたジュードがアリアに会いに行くと、顔を合わせて早々詰め寄られる。
「ジュード、ユウナさんはどうだったの? ジュードが伯爵になれないなんて嘘よね? ユウナさんが意地悪を言っているだけでしょう?」
いつもは穏やかにニコニコしているアリアが、今日は切羽詰まった表情をしている。
よほどジュードが伯爵になれないと困るのだろうが、何故困るのかジュードは深く考えてはいない。
それよりも大事なことがあるからだ。
「大丈夫だよ、アリア。最近かまってやれていなかったから、少しへそを曲げているだけさ」
「でも、ユウナさんの言葉はそんな感じじゃなかったわ。本当にジュードは伯爵になれるのよね? 私に嘘を吐いたの!?」
アリアはようやくここにきてジュードへ疑いを持ち始めていた。
「吐くわけないじゃないか。俺はいずれ伯爵になるんだ」
ジュードの声にはわずかな動揺が見えた。
なにせユウナから衆人環視の中、きっぱりと否定されたのだから当然だ。
しかし、今それをアリアに知られてしまってはマズイという危機感は持ち合わせていた。
「本当に?」
「もちろんさ」
アリアは疑いが晴れたわけではなかったが、今は追及するのをやめようと思ったらしく、ジュードから離れようとした。
しかし、そこでジュードが口を開く。
「アリア、少し言いづらいんだけど、お金を貸してくれないか?」
「えっ、お金?」
「ああ、ちょっと友人が困ってて、お金を必要としてるんだけど俺のお小遣いじゃ足りそうにないんだ。後、友人は誰かに知られたくないって言ってるから、内緒でこっそり貸してほしいんだ」
「ユウナさんに貸してもらったら? どうせ結婚したら彼女のお金はジュードのものになるんだし」
嫌みではなく、本当にそう思っている様子のアリアに、ジュードはどう説得したらいいか焦る。
「ほ、ほら、今のユウナは拗ねているだろう? そんな時にお金を貸せなんて言ったら、婚約継続に支障をきたすかもしれないからさ。それはアリアも困るだろう?」
「確かにそうね」
咄嗟ではあったが、うまい言いわけができてほっとするジュードだが、アリアの表情は優れない。
「ごめんなさいね、ジュード。お金は貸せないわ」
「どうして!?」
「私は体が弱くてほとんど屋敷から出ないでしょう? お買い物も、お父様が行商を呼んでくれるし。そもそも貴族は現金を持ち歩かないわ。持っていると危ないからツケ払いにするか、従者が支払いを済ませてしまうもの」
「そんな……」
そういえば、アリアと出かける時にはすべてジュードが支払いをしていた。
それはアリアの父親である男爵から幾ばかりか先にもらっており、そこから出していた。
そのお金も男爵自身から渡されたわけではなく、従者を通してだ。
「じゃあ、ユウナから従者の人に話をしてこっそり……」
「お金を用意するには家長であるお父様の許可がいるわ。用意はできるけどお父様には知られてしまうけれど良い?」
良いわけがない。
愕然とするジュードにアリアは続ける。
「大丈夫よ、ジュード。ユウナさんに形だけでも謝って、機嫌を取ったらすぐに貸してくれるわよ。彼女の家は裕福だもの。それよりも、ちゃんと伯爵になるって文書でも良いから確約をもらっていた方が良いと思うの。後になって反故にされたら大変でしょう?」
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