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リオ

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「二人とも、とりあえず座ったらどうだ?」


 そう言った兄に視線を移すと、なぜか苦虫をかみつぶしたような顔をしていた。

 少し気になったが、席に着いてから改めて話を再開する。


「留学先で兄と知り合いになられたとか」

「ええ、僕も元々はこちらの国から留学していたので、話が合いましてそれから親しくさせてもらってます」


 にこっと笑うその笑顔はまるでマイナスイオンが発生しているのではと思うほどに癒やされる。

 先程まで疲れていた心を直してくれるかのようだ。


「名乗るのがまだでしたね。僕はリオ。リオ・アールスです」

「アールス?」


 随分と最近聞いた名前である。


「もしかしてアールスといいますと……」

「そうだ。リオはアールス公爵家の次男だ」

「ですが、兄様。アールス家には嫡男のキルク様だけで、他にご子息はいらっしゃらなかったはずでは?」

「あー、それは色々とあってだな……」


 口ごもるノアに反して、当の本人はなんてことのないように話し始めた。


「僕はいわゆる愛人の子と言う奴なんですよ。母は平民出身。公爵の浮気に夫人は大層お怒りで認知はされていなかったんです。まあ、当然ですね。それで公爵家とは名ばかりの子供だったのですが、兄上のご尽力があって、ようやく公爵の次男として認められる運びとなったのですよ」


 それもあって留学を取りやめて国に帰ってきたと話すリオには同情する。


「実はユウナの婚約解消にあたり協力してくれたのはリオなんだよ」

「えっ、そうだったんですか!?」

「……できれば避けたかったが、奴よりましだ」

「兄様?」

「なにも言うな、ユウナ。羊の皮を被った狼に兎を差し出さねばならないお兄様を許しておくれ」


 しくしくと泣き始めるノアに、意味が分からないと首をかしげるユウナ。
 そんな中でリオはニコニコと笑顔を浮かべながらお茶を飲んでいる。


「いや、どうしたの兄様?」

「私が悪いんだよ。ユウナの可愛さを伝えたかっただけなのに。これでは娘を売るあのくそ親父と変わらないじゃないか。ふがいない兄でごめんよ~」


 そう言ってぎゅうぎゅうユウナに抱きつく。
 酒でも飲んでいるのか?
 今日のノアはどうもおかしい。




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