幼馴染みを優先する婚約者にはうんざりだ

クレハ

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経過観察中

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 ジュードの父親と話し合いをしてから数日。
 ユウナはロゼットに会いに屋敷を訪ねていた。

 相も変わらず所作の美しいロゼットは見ているだけでお手本になる。
 さすが生まれながらの伯爵令嬢。


「それで、婚約は解消できたのかしら?」

「それがまだなのよね。やっぱりジュードと結婚した場合伯爵を継がないって言っただけじゃ、私と結婚した時の利益を考えると素直に解消には動かないみたい。だからおじい様とおばあ様が作戦第二段階に動いてるわ」

「同情作戦ってやつね。私の所にも噂は届いてるわよ」

「うん、そう。おじい様とおばあ様には社交の場でたくさん言いふらしてもらわないと。クエンティン商会ではもみ消しができないほどにね。……あ~、早く縁切りたい!」


 ユウナの心の叫びが思わず口から出る。


「かなりきてるわねぇ」

「そりゃそうよ。だって毎日学校で顔を合わせてるんだもの。その度に恨めしそうな目で見られるんだから。それだけならまだしも、実際に文句まで言ってくる始末よ。どうにか伯爵の後を継げないのか?ってさ。無理に決まってるでしょうに。何度説明しても納得しないんだから参っちゃうわよ」

「それは困ったわねぇ」


 そう言うロゼットからはユウナを心配している感情は感じられず、むしろこの状況を楽しんでいるように見える。


「ロゼット、あなた楽しんでるでしょう?」

「他人の不幸は蜜の味ってね」


 クスクスと笑い、ティーカップに入った紅茶を飲むロゼットをじとっとした眼差しで見つめるユウナ。


「それはそうと、彼と婚約解消したらユウナはどうするの? 伯爵家を継ぐのかしら?」

「多分そうなるんじゃないかな? 弟には貴族の教育はほとんどしていないし。おじい様は早く私に結婚して後を継いでもらって隠居したいみたいだし」


 今度は結婚に関して父親に口出しはさせないと、背筋が寒くなるような微笑みを浮かべたノアが断言していたので、再び父親が結婚話を持ち込んでくることはないだろう。

 今回のことはユウナの母親もおかんむりで、父親は母親の機嫌を直すことに必死のよう。
 そっちに気が向いているので、余計なことはしてこないだろうと思う。
 ノアも目を光らせていることだし。



「結婚相手の目星はつけてるの?」

「それはおじい様にお任せしてる。おじい様ならうちのクズ親父とは違ってまともな人を選んでくれるだろうし」


 今回の件で、父親のクズさを思い知ったユウナ達家族の父親への信頼は地に落ちた。

 結婚式でもバージンロードは祖父と歩くつもりである。


「けど、ユウナ自身でいいなって思う人はいないの?」

「残念ながらいないのよねぇ」


 いたならば話は少し違ってくるが、いたらそもそもジュードとの婚約を了承してなどいない。


「どこかにいい人いないかしらね」

「いたら私が紹介してもらいたいわ」

「何言ってるのよ、ロゼットならより取り見取りでしょうに」

「そうでもないわよ。爵位を継ぐユウナと違って、私にはお兄様がいるから爵位を持っているか継ぐ方と結婚しないと貴族でいられないわけだし」

「貴族も世知辛いわねぇ」

「ほんとに……」


「失礼。少しよろしいか?」
 

 なんだかんだとくっちゃべっていると、突然横から声がかかった。




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