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協力者とは?
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その後はジュートから遠目に睨まれるという精神攻撃を受けつつも、なにかを言ってくるでもないので放置してその日の授業は終わった。
そして帰ってきたら、ノアが笑顔で迎えてくれた。
「おかえり、ユウナ」
ぎゅうぎゅうと抱き締めてくるノアに呆れる。
なにせ、朝も同じことをしていたからだ。
「ただいま、兄様」
「ユウナにいい報告があるんだよ。着替えて兄様の部屋においで」
「いい報告?」
恐らく婚約についての話だろうと思いつつ、いい報告とは何だと首を捻る。
着替えてからノアの部屋に行けば、ユウナの祖父母である伯爵夫妻の姿もあった。
「おじい様とおばあ様も来ていたんですか?」
「ユウナの一大事と聞けば来ぬわけにはいかないからな」
「ノアが私達にも手伝って欲しいと言ってきたのよ」
どういうことかとノアを見れば、座るようにと促された。
使用人がユウナの前にお茶を置くと、静かに部屋を出て行った。
「さて、これからユウナの婚約を解消するための話をしたいと思います」
「やっとか」
伯爵である祖父は、やれやれという様子で呟いた。
どうやら祖父にとってもこの婚約は不本意のものだったのだろう。
「まず最初にこれを」
そう言ってノアがテーブルの上に置いた何枚もの書類。
祖父はそれを手に取り読み進めていくに従って眉間の皺が濃くなっていく。
「兄様、それはなんですか?」
「あのクズ男と男爵令嬢の報告書だよ。簡単に言うと、あの二人男爵の家では度々会ってイチャついていたらしい。ユウナという婚約者がいながらね」
ノアの笑顔がなんとも恐い。
「どうやって調べたんですか?」
イチャついていたとは言うが、それは男爵の家の中でのこと。
その中のことなど外の者が分かるはずがない。
ましてや貴族の屋敷。
使用人も口が堅いだろうに。
「まあ、それは……ね。うん。ユウナのおかげと言ったら良いの……かな?」
珍しく歯切れの悪いノア。
「どういうことですか?」
「いや、この婚約解消について、協力者ができたとだけ言っておこう。ユウナは本当に変なのに好かれるね。兄様は心配で仕方がないよ。でも、諦めなさい。相手が悪すぎて兄様にもどうしようもないんだ」
憐れみの眼差しを向けられてユウナは疑問でいっぱいだ。
「まったく分からない」
「うん。分からない方が良いと思うよ。そのままのユウナでいておくれ」
そっとハンカチで目元を拭うノアに、益々混乱する。
いったい何があったのだ。
そして帰ってきたら、ノアが笑顔で迎えてくれた。
「おかえり、ユウナ」
ぎゅうぎゅうと抱き締めてくるノアに呆れる。
なにせ、朝も同じことをしていたからだ。
「ただいま、兄様」
「ユウナにいい報告があるんだよ。着替えて兄様の部屋においで」
「いい報告?」
恐らく婚約についての話だろうと思いつつ、いい報告とは何だと首を捻る。
着替えてからノアの部屋に行けば、ユウナの祖父母である伯爵夫妻の姿もあった。
「おじい様とおばあ様も来ていたんですか?」
「ユウナの一大事と聞けば来ぬわけにはいかないからな」
「ノアが私達にも手伝って欲しいと言ってきたのよ」
どういうことかとノアを見れば、座るようにと促された。
使用人がユウナの前にお茶を置くと、静かに部屋を出て行った。
「さて、これからユウナの婚約を解消するための話をしたいと思います」
「やっとか」
伯爵である祖父は、やれやれという様子で呟いた。
どうやら祖父にとってもこの婚約は不本意のものだったのだろう。
「まず最初にこれを」
そう言ってノアがテーブルの上に置いた何枚もの書類。
祖父はそれを手に取り読み進めていくに従って眉間の皺が濃くなっていく。
「兄様、それはなんですか?」
「あのクズ男と男爵令嬢の報告書だよ。簡単に言うと、あの二人男爵の家では度々会ってイチャついていたらしい。ユウナという婚約者がいながらね」
ノアの笑顔がなんとも恐い。
「どうやって調べたんですか?」
イチャついていたとは言うが、それは男爵の家の中でのこと。
その中のことなど外の者が分かるはずがない。
ましてや貴族の屋敷。
使用人も口が堅いだろうに。
「まあ、それは……ね。うん。ユウナのおかげと言ったら良いの……かな?」
珍しく歯切れの悪いノア。
「どういうことですか?」
「いや、この婚約解消について、協力者ができたとだけ言っておこう。ユウナは本当に変なのに好かれるね。兄様は心配で仕方がないよ。でも、諦めなさい。相手が悪すぎて兄様にもどうしようもないんだ」
憐れみの眼差しを向けられてユウナは疑問でいっぱいだ。
「まったく分からない」
「うん。分からない方が良いと思うよ。そのままのユウナでいておくれ」
そっとハンカチで目元を拭うノアに、益々混乱する。
いったい何があったのだ。
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