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2巻
2-3
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しっかり抱きしめてやると、満足したのか奥座敷に戻っていった。
すぐさま羅刹と看病を交代しに行くと、彼は蒼龍と桂蔵を見て顔をしかめている。
ふたりは先ほどより苦しそうで、胸郭が大きく動いていた。
「羅刹さん、ありがとうございました。あとは私が」
「やっぱり、薬草を採りに行ってくる。天知眼で、あることは確認した」
鬼の羅刹が持つ天知眼は、過去や未来、そして遠くのものを見られるという。それを使ってあやかしの世をのぞいたようだ。
「でも、羅刹さんが危ないじゃないですか」
苦しそうなふたりを前に、採りに行かないでほしいなんて冷酷だとわかっている。けれど、命が危ぶまれるあやかしの世に易々と行かせるわけにはいかない。
「俺がいなくなったら生活費が困るって? それなら――」
「そんなことを気にしているわけじゃありません。羅刹さんが心配なの。あなたは強いのかもしれないけど、ケガをするかもしれないでしょう?」
もしかしたら、あやかしの中でも力を持つという鬼一族の羅刹なら、なんでもない顔をして帰ってくるかもしれない。でも、少しでも危険があるなら行ってほしくない。
美空がむきになると、彼はきょとんとしてしまった。
「俺が?」
「どうしました?」
「いや……なんでもない」
落ち着きなく視線をそらす羅刹は、なにを考えているのだろう。
しばらく沈黙が続き、子供たちのヒューヒューという苦しげな呼吸音だけが部屋に響いた。
意を決したように表情をキリリと引き締めた羅刹は、重い口を開く。
「……俺は幼い頃、ずっとひとりで閉じ込められていた」
「えっ……」
「熱を出そうが死にそうになろうが、誰も助けてはくれなかった。こいつらには、そんな思いをさせたくない」
羅刹が自分の過去について詳しく触れるなんて初めてではないだろうか。自虐的にあやかしの世から逃げたとは話していたが、多くは語ろうとしなかったのに。
羅刹には両親と過ごした記憶がほとんどないとタマから聞いたけれど、記憶がないどころか、そんな過酷な生活を強いられていたとは言葉も出ない。
しかし、羅刹が子供たちに対して厳しい態度をとる理由が垣間見えた。自分の命は自分で守らなければ、生きながらえられなかったのだ。
「そう、だったんですね。でも……」
ますます心配が募る。万が一羅刹に危険が及んでも、美空には助ける術などないからだ。
「約束するよ」
「約束って?」
「必ず戻ってくる」
美空を射る羅刹の強い視線に、覚悟を感じる。
「ほんと、に? 約束ですよ?」
美空は念を押しながら泣きそうになった。蒼龍や桂蔵は助けたいけれど、そのために羅刹を犠牲にするつもりなどさらさらないのだ。
「泣くなよ。不細工になるぞ」
いつものように悪態をつく羅刹だが、大きな手を伸ばしてきて美空の頬にそっと触れる。その触れ方があまりに優しくて、心臓がドクッと大きな音を立てた。
「不細工じゃないもん」
これは精いっぱいの強がりだ。いつも通りのやり取りをしていなければ、本当に泣いてしまう。
「それはそれは」
羅刹は美空をバカにするように言うけれど、表情は柔らかかった。
「タマ」
羅刹が障子の向こうに声をかけると、どこからかタマが現れる。
「少し留守にする。美空に協力してやってくれ」
――ニャーン。
子供たちがいるからか、タマは言葉を発しない。けれど、〝わかった〟という合図であることは、ふたりの視線のやり取りから伝わってきた。
「美空。大変だろうが、四人を頼む。お前もしっかり飯を食え」
「……おにぎり、おいしかったです。でもちょっと塩気が足りないかな。もっと上手に作れるようになるまで何度でもやり直しです。途中で投げ出すのは許さないから」
悪態に込めた美空の〝絶対に帰ってきて、またおにぎりを握って〟という気持ちが届いたのか、羅刹は鼻で笑ったもののうなずいた。
それからすぐに羅刹は屋敷を出ていった。
蒼龍と桂蔵が深い眠りに落ちたのを確認して、喉の渇きを癒しに台所に向かうと、タマがどこからともなく現れた。
「ねえ、羅刹さん大丈夫かな」
この不安は、子供たちには隠しておかなければならない。タマにしか漏らせないのだ。
「天知眼で、ある程度の状況は確認しているはずじゃ。しかし、わしがどんな状況になっているか聞いても答えないのじゃ」
「それって……」
平穏な時間が流れているならばそう言うだろう。隠しているということは、あまりよくないに違いない。
「じゃが、あいつは約束を破ったりせん。性格がひん曲がっているとはいえ、鬼一族なのじゃ。簡単にやられたりはせんじゃろ」
タマなりに励ましてくれているのだろう。
「鬼ってそんなにすごいの?」
「力の強さで右に出る者はいないが、それより頭の回転の速さがぴかいちじゃ。どう戦えば効率的か、なにをするのが最善か、瞬時に見極めて行動する。お父上が苦戦しているようじゃが、羅刹が囚われていなければ大蜘蛛など敵ではなかったはずじゃ」
「囚われて? その話、詳しく教えて」
閉じ込められていたのは、その大蜘蛛になのだろうか。聞き返すと、タマが〝しまった〟というような顔をして逃げようとするので捕まえた。
「教えてって」
「美空は知らなくていいことじゃ」
「私も家族なの! 羅刹さんの心配をさせて」
羅刹と家族になんてなりたくないとずっと思っていたけれど、彼はもうずっと前から美空にとって大切な存在になっているのだ。
口は悪いし、ろくに働きもせず偉そうだし……腹が立つことだらけだけれど、今回のようにいざというときは最後の砦になってくれる。
しかも、美空が気づいていなかっただけで、子供たちの様子を注意深く見ている。蒼龍の発熱にいち早く気づいたのもそのおかげだろう。
「羅刹に叱られる」
「叱られればいいじゃない」
「お前も鬼じゃのぉ」
タマは猫のくせにしかめっ面をするものの、あきらめたらしい。茶の間の畳に下ろしてやると、話し始めた。
「あやかしの世は、羅刹の父が治めていた。ただ、人間にもあるじゃろう? 権力争いというものが」
タマに問われて大きくうなずく。美空には縁遠い話だけれど、政治の世界だとか、大企業の上層部だとか、そうしたものがあるのだろうなとひしひしと感じるからだ。
「あやかしの世は、羅刹の父が頭となる鬼派が優勢で、長らく争いも起こらず平和じゃった。しかし敵対する大蜘蛛一派が欲を出し、羅刹の父のよくない噂をでっちあげて仲間を募り、戦いを挑んだ。それがあやかしの世全体を巻き込む大きな戦いとなったのじゃ」
「そういえば、蜘蛛……」
ダンゴムシだろうがトカゲだろうが平気な子供たちが、蜘蛛だけは怖がっていた。だからだったのか。
「ただし、能力が劣る大蜘蛛は鬼を簡単に倒せない。そこで大蜘蛛は羅刹を人質に取ったのじゃ。捕まったのはかなり幼い頃で、羅刹は牢につながれている時間のほうが長かった」
「そんな……」
美空はふと、羅刹の体にあった無数の傷を思い出した。あれは捕らえられていた間に負った傷かもしれない。
それで両親と過ごした記憶がないのだと納得したものの、羅刹のあまりにつらい状況を想像すると目が潤んでくる。
「羅刹がようやく逃げ出したのは、こちらの世に来る少し前。父やその仲間を助けようとしたが、仲間にすら『鬼が守れなかったからこんなひどい世になった』と責められ通しだったようじゃ」
「守れなかったって……あんまりよ」
ずっと牢で孤独に過ごし、もしかしたら命の危機もあったかもしれない羅刹にかける言葉ではない。
「両親がいるはずの戦いの中心地に向かう途中で、桂蔵と葛葉を託され、あとのふたりも拾って、一旦こちらの世に駆け込んだ。あちらの世とこちらの世をつなぐ入口が数カ所ある。だからその場所を知っているか、たまたまその近くにいなければ人間の世に避難することもままならないのじゃが……」
「それじゃあ、羅刹さんはそれを知っていたのね。よかった」
天知眼で見て知っていたのかもしれない。
それだけでも救われたと、美空は胸を撫で下ろした。
「鬼だけは別格じゃ」
「どういうこと?」
「鬼はその入口を自由自在に作ることができる。ただし、必要がなくなったら閉じてしまうのじゃ」
「タマはどうやって来たの?」
「わしは、そこそこ長く生きているからのぉ。入口の噂は耳にしておったんじゃ。実際に見たことはなかったが、一か八か行ってみたら本当にあったのじゃよ」
「ねぇ、タマっていくつなの?」
そうした話はしたことがなく気になった。
「羅刹より百歳ほど上じゃ」
「ひ、百歳!?」
驚きすぎて美空の声が裏返る。
「そうじゃ。だから尊敬しろ」
「尊敬できるところが見つかったらね」
美空がそう返すと、タマはあからさまに顔をゆがめた。
『一か八か行ってみた』ということは、タマも危険な目に遭ったのかもしれない。
「タマも争いに巻き込まれていたの?」
「あちらの世で巻き込まれていないあやかしなどいない。誰もがなにかしらの被害に遭い、悲しい思いをしているのじゃ。大蜘蛛側についた者も皆じゃ。大蜘蛛の欲のために、実にくだらん」
苦しげに吐き捨てるタマは、ふぅとため息をつく。
「それじゃあ皆、戦いをやめたいのね?」
それなら無駄な争いをやめられるのではないかと期待が高まる。
「そうだとしても、どちらかの頭が倒れるまでは難しいじゃろう。皆が大切な存在を亡くし、冷静さを失っておる。今や最初の目的より復讐心のほうが大きくなっているやもしれん」
「そんな……」
ひどい悪循環だ。
しかし、家族やパートナー、友人など身近な人を殺されて、仇を討ちたいと思う気持ちはわからないではなかった。美空も、子供たちに危害を加えられたら間違いなく取り乱すし、復讐しようと思うだろう。
「羅刹の父は賢い鬼じゃ。不毛な戦いを続けたいとは思っていないはず。じゃが、大蜘蛛に降伏したら、もっと恐ろしい世が待っているとわかっているのじゃよ」
「もっと恐ろしいって?」
「そもそも大蜘蛛は、国をよくしたいなんて気概は持ち合わせていない。私腹を肥やすことしか頭にないのじゃ。仲間ですら、自分に意見する者は反対分子とみなして容赦なく殺るようなやつじゃ」
「そんなの仲間じゃない」
美空が思わず漏らすと、タマはうなずいた。
「そもそも仲間だとは思っていないのじゃろう。自分の望みを叶えるための道具としか。一度大蜘蛛側に加担した者は、抜けようとしても指示に反しても殺される。最悪、家族まで」
肌が粟立ち、心臓をわしづかみされたように苦しくてたまらなくなる。
たった一度判断を誤り大蜘蛛の誘いに乗れば、限りなく死に近い場所に立つことを強いられて逃れられないなんて、あまりに残酷な運命だ。
「戦いが終わっても朽ちた世界が残るだけじゃ。復興しようにも長い道のりになるじゃろう。ましてや自分のことしか頭にない大蜘蛛が頂点に立ちでもしたら、皆が不幸になる未来しか見えぬ」
タマの話に美空は納得した。あやかしの世のすべてを巻き込んだ混乱は、間違いなく暗い影を落とす。それでも羅刹の父はその道を選択した以上、勝たなくてはならないのだ。そうでなければ、未来などない。
あまりにひどいありさまに、美空はしばらく言葉も出てこなかった。
「羅刹はそこから逃げたと自分を責めておるが、そうじゃなかろう。子供たちを守るためにはほかに方法がなかったのじゃ。あいつは今でも、あやかしの世が気になって仕方がないはずじゃ。もちろん、父や母がどうしているのかも」
「天知眼でご両親のことは確認できないの?」
大切な家族が危険にさらされているかもしれないとなれば、気にならないわけがない。
「戦いの中心部に結界が張られているようじゃ。天知眼はその中に入らなければ使えない。薬草は別の地域にあるから、それは確認できたのじゃろう」
「そう、なんだ……」
一瞬期待したが、美空が思いつくようなことは、当然羅刹も試しているに違いない。
争いの中心部に行かなければ両親の無事を確認できないとは。羅刹の胸はどれだけ痛んでいることか。
「羅刹さん、戦いに加勢しに行きたいのかな……」
美空は口に出したものの、声が震えてしまった。羅刹が死んでしまったらと怖くなったのだ。
「あいつ自身も大切な時間を奪われてきたのじゃ。大蜘蛛を憎んでいるのは間違いない。じゃが、ああ見えて子供たちを預かった責任は感じておる。妖狐のふたりの両親が命を落とすのを目の前で見たそうじゃから、残された子は守らなければと思っているはずじゃ」
まさか目の前で――とは。
衝撃の事実に、美空の顔がゆがむ。
「あいつは一日中ゴロゴロしているように見えるが、しょっちゅう天知眼であやかしの世を確認しているのじゃ。それにかなりの力を使うから、休まなければ回復できない」
「そうなの?」
部屋にこもって寝ているだけかと思いきや、そうではなかった。
美空は口うるさく小言をぶつけたことを反省した。
羅刹はぐうたらで、偉そうで、だらしないだけではないらしい。彼の心には大きな棘が刺さっているうえ、とんでもなく大きな責任を背負っているのだ。
「ああ、これは知らないことにしてくれ。あいつはこういうことを知られるのが嫌いじゃ。美空に話したとばれたら、全身の毛をむしり取られる」
「むしり取られたタマも見てみたいわ」
「なっ……」
重くなった空気を払拭するようにおどけてみせるタマに、美空ものった。
羅刹があやかしの世に旅立った今、泣いていたって仕方がない。とにかく自分にできることをして羅刹の無事の帰りを祈るしかない。
それにしても、羅刹が陰で努力するタイプだとは知らなかった。いや、あんな態度ではそう思うのが普通だ。
お茶を飲み、バナナをかじった美空は、一旦奥座敷へと向かった。すると葛葉と相模が手をつないで寝ている。
「かわいい」
やはりふたりでは寂しかったのだろう。四人もいるとケンカばかりで大変だけど、支え合える仲間がいるというのはなかなかいいものだ。
「おやすみ」
美空はふたりのお腹に布団をかけたあと、再び蒼龍たちのもとに戻った。
「母さま……」
ふたりの世話をしている間にうつらうつらしていると、か細い声が聞こえてきてハッとして目を覚ます。すると、眉間にしわを寄せて荒い息を繰り返す桂蔵の目尻から涙がこぼれた。
普段、両親についてなにも口に出さない双子だけれど、羅刹がふたりを預かったときに両親の死を目の当たりにしたのであれば、彼らもその光景を見ているのかもしれない。
「こんなに小さいのに……」
そのときの状況を考えれば考えるほど、美空の胸は痛む。桂蔵の手を握りしめ、口を開いた。
「ここにいるよ。頑張ろうね」
こんな嘘、ついてもいいものか迷った。でも、夢の中で母を捜しているのであれば、見つけさせてあげたい。
美空が声をかけると、桂蔵の体から力が抜けて呼吸が整ってきた。
「会えたのかな」
額の汗を拭いながらつぶやくと、桂蔵の頬がかすかに緩んだ気がした。
◇ ◇ ◇
天知眼で見るあやかしの世は、それはそれはひどいものだ。
羅刹が幼い頃に遊んだ緑豊かだった大地の面影は今では見られず、土砂がむき出しとなっている。それも、大蜘蛛が仕掛けた戦いのせいで洪水が起きたり、森を火で焼かれたりしたせいだ。
「あー、くそっ」
熱を出して苦しむ蒼龍と桂蔵の隣で、天知眼を使って薬草を探していた羅刹は、思わず声をあげた。
ふんだんにあるはずの地域に一本も生えていないのだ。
あやかしの万能薬と言われる薬草は、人間の世にある蓬に似ている。ただ、においがかなりきつく、煎じて飲むのもひと苦労。特に、幼いあやかしは吐き出してしまう代物だ。
すぐさま羅刹と看病を交代しに行くと、彼は蒼龍と桂蔵を見て顔をしかめている。
ふたりは先ほどより苦しそうで、胸郭が大きく動いていた。
「羅刹さん、ありがとうございました。あとは私が」
「やっぱり、薬草を採りに行ってくる。天知眼で、あることは確認した」
鬼の羅刹が持つ天知眼は、過去や未来、そして遠くのものを見られるという。それを使ってあやかしの世をのぞいたようだ。
「でも、羅刹さんが危ないじゃないですか」
苦しそうなふたりを前に、採りに行かないでほしいなんて冷酷だとわかっている。けれど、命が危ぶまれるあやかしの世に易々と行かせるわけにはいかない。
「俺がいなくなったら生活費が困るって? それなら――」
「そんなことを気にしているわけじゃありません。羅刹さんが心配なの。あなたは強いのかもしれないけど、ケガをするかもしれないでしょう?」
もしかしたら、あやかしの中でも力を持つという鬼一族の羅刹なら、なんでもない顔をして帰ってくるかもしれない。でも、少しでも危険があるなら行ってほしくない。
美空がむきになると、彼はきょとんとしてしまった。
「俺が?」
「どうしました?」
「いや……なんでもない」
落ち着きなく視線をそらす羅刹は、なにを考えているのだろう。
しばらく沈黙が続き、子供たちのヒューヒューという苦しげな呼吸音だけが部屋に響いた。
意を決したように表情をキリリと引き締めた羅刹は、重い口を開く。
「……俺は幼い頃、ずっとひとりで閉じ込められていた」
「えっ……」
「熱を出そうが死にそうになろうが、誰も助けてはくれなかった。こいつらには、そんな思いをさせたくない」
羅刹が自分の過去について詳しく触れるなんて初めてではないだろうか。自虐的にあやかしの世から逃げたとは話していたが、多くは語ろうとしなかったのに。
羅刹には両親と過ごした記憶がほとんどないとタマから聞いたけれど、記憶がないどころか、そんな過酷な生活を強いられていたとは言葉も出ない。
しかし、羅刹が子供たちに対して厳しい態度をとる理由が垣間見えた。自分の命は自分で守らなければ、生きながらえられなかったのだ。
「そう、だったんですね。でも……」
ますます心配が募る。万が一羅刹に危険が及んでも、美空には助ける術などないからだ。
「約束するよ」
「約束って?」
「必ず戻ってくる」
美空を射る羅刹の強い視線に、覚悟を感じる。
「ほんと、に? 約束ですよ?」
美空は念を押しながら泣きそうになった。蒼龍や桂蔵は助けたいけれど、そのために羅刹を犠牲にするつもりなどさらさらないのだ。
「泣くなよ。不細工になるぞ」
いつものように悪態をつく羅刹だが、大きな手を伸ばしてきて美空の頬にそっと触れる。その触れ方があまりに優しくて、心臓がドクッと大きな音を立てた。
「不細工じゃないもん」
これは精いっぱいの強がりだ。いつも通りのやり取りをしていなければ、本当に泣いてしまう。
「それはそれは」
羅刹は美空をバカにするように言うけれど、表情は柔らかかった。
「タマ」
羅刹が障子の向こうに声をかけると、どこからかタマが現れる。
「少し留守にする。美空に協力してやってくれ」
――ニャーン。
子供たちがいるからか、タマは言葉を発しない。けれど、〝わかった〟という合図であることは、ふたりの視線のやり取りから伝わってきた。
「美空。大変だろうが、四人を頼む。お前もしっかり飯を食え」
「……おにぎり、おいしかったです。でもちょっと塩気が足りないかな。もっと上手に作れるようになるまで何度でもやり直しです。途中で投げ出すのは許さないから」
悪態に込めた美空の〝絶対に帰ってきて、またおにぎりを握って〟という気持ちが届いたのか、羅刹は鼻で笑ったもののうなずいた。
それからすぐに羅刹は屋敷を出ていった。
蒼龍と桂蔵が深い眠りに落ちたのを確認して、喉の渇きを癒しに台所に向かうと、タマがどこからともなく現れた。
「ねえ、羅刹さん大丈夫かな」
この不安は、子供たちには隠しておかなければならない。タマにしか漏らせないのだ。
「天知眼で、ある程度の状況は確認しているはずじゃ。しかし、わしがどんな状況になっているか聞いても答えないのじゃ」
「それって……」
平穏な時間が流れているならばそう言うだろう。隠しているということは、あまりよくないに違いない。
「じゃが、あいつは約束を破ったりせん。性格がひん曲がっているとはいえ、鬼一族なのじゃ。簡単にやられたりはせんじゃろ」
タマなりに励ましてくれているのだろう。
「鬼ってそんなにすごいの?」
「力の強さで右に出る者はいないが、それより頭の回転の速さがぴかいちじゃ。どう戦えば効率的か、なにをするのが最善か、瞬時に見極めて行動する。お父上が苦戦しているようじゃが、羅刹が囚われていなければ大蜘蛛など敵ではなかったはずじゃ」
「囚われて? その話、詳しく教えて」
閉じ込められていたのは、その大蜘蛛になのだろうか。聞き返すと、タマが〝しまった〟というような顔をして逃げようとするので捕まえた。
「教えてって」
「美空は知らなくていいことじゃ」
「私も家族なの! 羅刹さんの心配をさせて」
羅刹と家族になんてなりたくないとずっと思っていたけれど、彼はもうずっと前から美空にとって大切な存在になっているのだ。
口は悪いし、ろくに働きもせず偉そうだし……腹が立つことだらけだけれど、今回のようにいざというときは最後の砦になってくれる。
しかも、美空が気づいていなかっただけで、子供たちの様子を注意深く見ている。蒼龍の発熱にいち早く気づいたのもそのおかげだろう。
「羅刹に叱られる」
「叱られればいいじゃない」
「お前も鬼じゃのぉ」
タマは猫のくせにしかめっ面をするものの、あきらめたらしい。茶の間の畳に下ろしてやると、話し始めた。
「あやかしの世は、羅刹の父が治めていた。ただ、人間にもあるじゃろう? 権力争いというものが」
タマに問われて大きくうなずく。美空には縁遠い話だけれど、政治の世界だとか、大企業の上層部だとか、そうしたものがあるのだろうなとひしひしと感じるからだ。
「あやかしの世は、羅刹の父が頭となる鬼派が優勢で、長らく争いも起こらず平和じゃった。しかし敵対する大蜘蛛一派が欲を出し、羅刹の父のよくない噂をでっちあげて仲間を募り、戦いを挑んだ。それがあやかしの世全体を巻き込む大きな戦いとなったのじゃ」
「そういえば、蜘蛛……」
ダンゴムシだろうがトカゲだろうが平気な子供たちが、蜘蛛だけは怖がっていた。だからだったのか。
「ただし、能力が劣る大蜘蛛は鬼を簡単に倒せない。そこで大蜘蛛は羅刹を人質に取ったのじゃ。捕まったのはかなり幼い頃で、羅刹は牢につながれている時間のほうが長かった」
「そんな……」
美空はふと、羅刹の体にあった無数の傷を思い出した。あれは捕らえられていた間に負った傷かもしれない。
それで両親と過ごした記憶がないのだと納得したものの、羅刹のあまりにつらい状況を想像すると目が潤んでくる。
「羅刹がようやく逃げ出したのは、こちらの世に来る少し前。父やその仲間を助けようとしたが、仲間にすら『鬼が守れなかったからこんなひどい世になった』と責められ通しだったようじゃ」
「守れなかったって……あんまりよ」
ずっと牢で孤独に過ごし、もしかしたら命の危機もあったかもしれない羅刹にかける言葉ではない。
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「どういうこと?」
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「ねぇ、タマっていくつなの?」
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驚きすぎて美空の声が裏返る。
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「あちらの世で巻き込まれていないあやかしなどいない。誰もがなにかしらの被害に遭い、悲しい思いをしているのじゃ。大蜘蛛側についた者も皆じゃ。大蜘蛛の欲のために、実にくだらん」
苦しげに吐き捨てるタマは、ふぅとため息をつく。
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「そんな……」
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「もっと恐ろしいって?」
「そもそも大蜘蛛は、国をよくしたいなんて気概は持ち合わせていない。私腹を肥やすことしか頭にないのじゃ。仲間ですら、自分に意見する者は反対分子とみなして容赦なく殺るようなやつじゃ」
「そんなの仲間じゃない」
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「そもそも仲間だとは思っていないのじゃろう。自分の望みを叶えるための道具としか。一度大蜘蛛側に加担した者は、抜けようとしても指示に反しても殺される。最悪、家族まで」
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「戦いの中心部に結界が張られているようじゃ。天知眼はその中に入らなければ使えない。薬草は別の地域にあるから、それは確認できたのじゃろう」
「そう、なんだ……」
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まさか目の前で――とは。
衝撃の事実に、美空の顔がゆがむ。
「あいつは一日中ゴロゴロしているように見えるが、しょっちゅう天知眼であやかしの世を確認しているのじゃ。それにかなりの力を使うから、休まなければ回復できない」
「そうなの?」
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美空は口うるさく小言をぶつけたことを反省した。
羅刹はぐうたらで、偉そうで、だらしないだけではないらしい。彼の心には大きな棘が刺さっているうえ、とんでもなく大きな責任を背負っているのだ。
「ああ、これは知らないことにしてくれ。あいつはこういうことを知られるのが嫌いじゃ。美空に話したとばれたら、全身の毛をむしり取られる」
「むしり取られたタマも見てみたいわ」
「なっ……」
重くなった空気を払拭するようにおどけてみせるタマに、美空ものった。
羅刹があやかしの世に旅立った今、泣いていたって仕方がない。とにかく自分にできることをして羅刹の無事の帰りを祈るしかない。
それにしても、羅刹が陰で努力するタイプだとは知らなかった。いや、あんな態度ではそう思うのが普通だ。
お茶を飲み、バナナをかじった美空は、一旦奥座敷へと向かった。すると葛葉と相模が手をつないで寝ている。
「かわいい」
やはりふたりでは寂しかったのだろう。四人もいるとケンカばかりで大変だけど、支え合える仲間がいるというのはなかなかいいものだ。
「おやすみ」
美空はふたりのお腹に布団をかけたあと、再び蒼龍たちのもとに戻った。
「母さま……」
ふたりの世話をしている間にうつらうつらしていると、か細い声が聞こえてきてハッとして目を覚ます。すると、眉間にしわを寄せて荒い息を繰り返す桂蔵の目尻から涙がこぼれた。
普段、両親についてなにも口に出さない双子だけれど、羅刹がふたりを預かったときに両親の死を目の当たりにしたのであれば、彼らもその光景を見ているのかもしれない。
「こんなに小さいのに……」
そのときの状況を考えれば考えるほど、美空の胸は痛む。桂蔵の手を握りしめ、口を開いた。
「ここにいるよ。頑張ろうね」
こんな嘘、ついてもいいものか迷った。でも、夢の中で母を捜しているのであれば、見つけさせてあげたい。
美空が声をかけると、桂蔵の体から力が抜けて呼吸が整ってきた。
「会えたのかな」
額の汗を拭いながらつぶやくと、桂蔵の頬がかすかに緩んだ気がした。
◇ ◇ ◇
天知眼で見るあやかしの世は、それはそれはひどいものだ。
羅刹が幼い頃に遊んだ緑豊かだった大地の面影は今では見られず、土砂がむき出しとなっている。それも、大蜘蛛が仕掛けた戦いのせいで洪水が起きたり、森を火で焼かれたりしたせいだ。
「あー、くそっ」
熱を出して苦しむ蒼龍と桂蔵の隣で、天知眼を使って薬草を探していた羅刹は、思わず声をあげた。
ふんだんにあるはずの地域に一本も生えていないのだ。
あやかしの万能薬と言われる薬草は、人間の世にある蓬に似ている。ただ、においがかなりきつく、煎じて飲むのもひと苦労。特に、幼いあやかしは吐き出してしまう代物だ。
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