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第四十一話 祭壇

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 第三層古城エリアには祭壇が高確率で出現するといわれる小部屋がいくつか存在する。

 オレたちはその小部屋を目指していた。

「この城はまた随分と広いな」

「敵も散見的に襲ってくるし、さっきはスケルトンとボーンビーストだったからいいけど、偶に出会う指揮官がいる集団は危険ね。……厄介な階層」

「でもお城探検は楽しいですね! なんだかワクワクします!」

 ラーツィアはどこでも楽しそうにしているな。
 まあ、こんな巨大な建物に侵入していると考えると気持ちはちょっとわかる。
 まさに冒険しているって感じだからな。

「噂をすればなんとやらだな」

 カタカタと古城に音が鳴り響く。
 ただし、現れたのは理路整然としたスケルトンの集団。

「スケルトンナイトね」

 十数体のスケルトンの中心にいるのは指揮官ともいうべき魔物。
 スケルトンナイト。
 動く骸骨なのはスケルトンと変わりないが、その特徴は装備している武器にある。
 
 鋭い剣を手に持ちスケルトンたちに指示をだす。
 そう、剣だ。
 何故魔物であるスケルトンが武器を持っているのか?
 その答えは武器の材質にある。

 外見からは金属の武器のように見えるが、実をいうとスケルトンの武器は身体の一部が変化した物だと言われている。
 それ故に魔力を付与されており、かなりの強度、それこそ恩恵の武器とも暫く打ち合える強度をもつ。

 魔力付与された武器といえば、あの武器を使えばいいと思うかもしれないが、スケルトンの武器はその武器を生み出したスケルトンしか真の力を発揮できない。
 オレたち冒険者があの武器を使っても魔力付与は消えてしまいただの少し頑丈な武器に成り下がる。

 あれを使えればオレの武器も新調できるんだが……残念だな。

「先手は私が――――『ファルシオン・ファング』」

 師匠の恩恵技、ファルシオンを空中に作り出しスケルトンナイト目掛けて射出する。

 キンッと甲高い音をたてファルシオンがスケルトンナイトの剣に弾かれる。

「油断は微塵もないようですね。姫様、お願いします」

「ええ、行きます! 岩石咆《ロックカノン》!」

 ラーツィアの中級土魔法。

 魔法陣から巨石、それこそ直径五メートル近い岩石が飛ぶ。

 何度見ても圧巻だ。
 
 スケルトンナイトが何かを察知したのかスケルトンたちに防御態勢を取らせるが……最早関係ない。

 ドガンと古城まるごと揺れる感覚の後、スケルトンの集団を見ればそこにはあれだけ整然としていた部隊が半壊している姿。

 凄いな、アレを耐えたのか……。

 それでも起き上がれるスケルトンはいない。
 どこかしらの骨が砕け歩行するのも困難になっている。

「カタカタッ」

 そんな中、片腕の欠けたスケルトンナイトが立ち上がり、剣を構える。

 さてそろそろオレの出番か。

「ラーツィアの攻撃に耐えるとは驚いたよ。……じゃあな『消毒液光線サニタイザー・レーザー』」

 スケルトン系統の魔物のもう一つの弱点。
 胸の内、肋角の内側に納められた魔石を射抜く。

 スケルトンナイトは糸が切れたようにその場に崩れ落ちた。

 オレたちの道を塞ぐ相手はすべて倒れ伏した。





 魔物の素材の中でも最も高く売れる部位をぶち壊したことを、師匠にこっぴどく怒られた後。
 オレたちは件の祭壇のある小部屋に辿り着いた。

 ここか、ここに高く売れるお宝があればヴィルジニーの両親の借金も簡単に返せるんだが……。

「あ! あれが祭壇ではないですか? 部屋の奥に台座が見えます!」

「やったわね。高確率といっても冒険者たちだけの噂だから半信半疑だったけど苦労下かいがあったわ」

 おお、あれが祭壇か、初めてみた。

 黒くおどろおどろしい雰囲気の腰辺りの高さの台。
 丁度腰掛けるのに適切ぐらいな……なんてそんな冗談はいい。

 台座の上にあるものが肝心だ。

 これは――――。

「剣の……柄?」

 所謂片手剣の柄部分だけが祭壇に鎮座していた。

 え? コレナニ?
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