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第二十二話 輝く極星

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 オレが約二年半前まで所属していた〈輝く極星〉は三人組の冒険者で構成されている。

 現リーダーであるレットは典型的な剣士であり、『ツーハンドソード』の恩恵で作り出した両手持ちの大剣を軽々しく振るい、魔物を一刀のもとに両断する。
 闘気によって身体能力を向上させた動きは重い大剣を持っているはずなのに俊敏で目で追うのがやっとの速度だ。

 パーティー唯一の魔法使いであるライミーは、水属性の魔法を攻撃に防御にと巧みに操る。
 魔法自体は恩恵で作り出した武器、防具には威力や強度で劣るが、それでも魔物相手には強力な武器となる。
 そんなライミーの恩恵は『ミキサー』。
 魔力を編んで生成する回転する刃は触れるものを尽く切り刻む。

 一際体格の大きい巨漢はフリーゲル。
 その恩恵『スクトゥム』は大型の盾であり、表面は丸みを帯びるように湾曲している。
 大部分の材質は木製で、盾の縁は鉄で補強されている。
 防具系統の恩恵だが、フリーゲルの筋力を持ってすれば、『スクトゥム』で殴りつけるだけでも弱い魔物は一撃で昏倒する。

 その三人組が今目の前にいる。

 風の噂ではオレを追放し、ランクルの街を飛び出した後は、数々のダンジョンに潜り、冒険者ギルドからの依頼で強大な魔物を倒したことでトントン拍子でランクを上げていったらしい。
 今や王都で貴族からも依頼のくる有名な冒険者パーティーになったと聞いたけど、なぜ今更こんな辺境に?

「なんだ、相変わらず辛気臭い顔だな。だがその格好、まだ冒険者は辞めていないようだな。……そろそろDランクからは昇格したのか」

「あはは、レット、冗談はヤメてよ。“万年Dランク”が昇格なんてしてる訳ないじゃない」
 
 レットの端正な顔が大声で笑うライミーの発言で一気に険しくなる。

 というか暫く会わないうちになんだかこいつら小綺麗になってるよな。
 レットなんか子供っぽいところが抜けてなかったのに、今や完全にベテラン剣士の風格が漂ってる。
 ライミーも田舎の街娘だったのが、化粧をして綺羅びやかな装飾品を着けているせいか別人のようにも見えるし、あんまり変わってないのはフリーゲルだけか。

 ……そりゃあそうか、こいつらは王都の大都会で活躍するAランク冒険者。
 住む世界が違うもんな。

 俺があまりの感慨深さに黙っているとレットが険しい顔のまま問いかけてくる。
 その言葉には隠しきれない怒りが籠められていた。

「まさか……まだDランクなのか? あれからどれだけ時間が経ったと思ってる」

 なんだよ。
 なんでそんなに怒ってるんだ?
 
「なんだ? Dランクで悪いのかよ」

 二年半前のあの日。
 オレは目の前が真っ暗になるほどの衝撃を受けた。
 自業自得とはいえパーティーを追放されたオレは失意のどん底にいた。

 だが、そんなどん底から救ってくれたのは爺さんだった。
 誰からも手を差し伸べられない中、一人こんなオレに優しくしてくれた。

 そしてここにはオレの運命を変えてくれたラーツィアとオレを鍛えてくれる師匠がいる。
 
 レットたちの前に立ったらもっと動揺して取り乱すかもしれないと思っていた。
 だが、不思議と今は堂々と立っていられる。
 ここに二人がいる。
 それだけで勇気を貰えている気がした。

「というかなんでこんな辺境に帰って来たんだ? お前らAランク冒険者になったんだろ。こんな辺境にも噂は届いてる。王都では引っ張りダコだろうに、なんでだ?」

「……お前には関係ない」

 めっちゃ機嫌悪いな。
 オレなんか変なこと言ったか?

「……もしかして霊峰アケトーに挑戦でもするつもりか?」

「……」

 いや何なんだよマジで、すっごい睨んでくるんですけど。

「ところで、そっちの金髪の小娘と、り、凛々しい紫髪のそちらの殿方はどなたなの? 紹介してくださらないかしら」

 おい、ライミー。
 ライミー……だよな。
 急に言葉使いが変になってるぞ!
 ……まさかこれが都会の話し方なのか?

 師匠をチラチラ見ながら頬を染めるライミーに、なぜだか嫌な予感を覚えた。
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