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第三章
第35話
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あれから少し日が経ち、ルーチェが公爵領の視察から帰ってきて、馬から降りると、ルーチェは何かの異変に気づいた。
(なんでこんなにも騒がしいの…?胸騒ぎがする。何かあったのでは?!)
ルーチェは、走ってドアを開いた。
すると、包帯を運んでいるメイドや、瓶を運んでいるメイド、たくさんの人たちが慌ただしく動いていた。
「お、お嬢様!」
と言ってレスがルーチェに駆け寄ってきた。
「レス、何があったの…?」
と、不安気な顔をしてルーチェが尋ねた。
「お嬢様、私に着いてきてください。」
レスに着いていくと、レンディスの寝室に着いた。
そして、ベッドには、酷い怪我を負ったレンディスがいた。
「レス、どういうこと?!」
ルーチェは、目を丸くして訊いた。ルーチェの悪い予感は的中してしまったのだ。
「陛下とお話をしている際、刺客が来て最初は上手く対処出来ていたのですが、武器を持っていないのにも関わらず、人数が多すぎたのと、…オーラナイトが複数名いたので、対処しきれず怪我をおってしまわれました…。」
そして、怪我の処置が終わると、ルーチェは、主治医にこう訊いた。
「容態は?」
「なんとか一命は取り留めましたが、出血が酷いためまだ分かりません。そして、右腕の傷が酷いため剣を持つのは厳しいかもしれません。」
(そんな…!そんなのだめ。絶対に…。こうなったらあの人を呼ぶしか無いかもしれない。だけど、こちらの頼みに応じてくれるか…。)
ルーチェは、レンディスの横に行き、
「パパ。その傷、直せる人、絶対連れてくるからね…。」
ルーチェの瞳には涙が浮かんでいた。
チュトラリーの当主、後継者は、人に弱みを握られてはいけない。だから、人前で泣くことはいけない、そう教えられできたからこそ、ルーチェは、レスの前でも主治医の前でも涙を見せなかった。
「レス、この手紙をアルセント侯爵家に送って。」
ルーチェは、一通の手紙を渡した。
「かしこまりました。」
と言って、レスは部屋を出ていった。
(アルセント前公爵なら魔術が使える。問題はこの手紙を読んでくれるか…、そして応じてくれるか…。)
そして2日後、アルセント侯爵家からの返事が来た。
その手紙を読んでルーチェは、涙を流した。
「私の愛しき孫、ルーチェ・ド・チュトラリー様へ
お手紙拝見致しました。なれない公務でさぞ大変だろうと思います。色々話したいことはありますが、それは実際に会ってからお話しましょう。私は、ただいま大至急、公爵邸に内密に向かっております。私がお力になれるのであれば引き受けましょう。
最後に、私はあなたの祖父に当たるものです。そこまでかしこまらなくてもよろしいのですよ。
イルデル・デ・アルセント…。
よかった…、本当に…、魔術師がいれば後遺症が残ろうと、パパが死ぬことはない…。」
(これで、無理やり命を伸ばさなくて済む…。)
そう、ルーチェは、延命魔法を使って、時間を稼いでいたのだ。
もちろん魔法の反動は大きく、吐血をかなりの頻度でしていた。
それだけでは無い。目の前が見えなくなる時や、匂いがしなくなる時もしばしばだった。
弱さを見せないためにレスにも話さず、全て1人で抱えてきた。
そんなルーチェにとって、この手紙は、とても嬉しい知らせだった。
その日の昼過ぎ、馬の鳴き声がしたのを聞き、ルーチェは急いで表に走った。
「おじい様…。」
と、ルーチェが言うのを聞いて、前公爵は、驚いた。
手紙では、イルデル・デ・アルセント様と書いてあったのだから。
「遅くなってしまって申し訳ありません。」
「いえいえ、おじい様、こちらです。」
と言って、ルーチェは、イルデルをレンディスの寝室に連れていった。
「…直せますか?」
「最善を尽くします。」
と言って、イルデルは、治癒魔法を使い始めた。
(なんでこんなにも騒がしいの…?胸騒ぎがする。何かあったのでは?!)
ルーチェは、走ってドアを開いた。
すると、包帯を運んでいるメイドや、瓶を運んでいるメイド、たくさんの人たちが慌ただしく動いていた。
「お、お嬢様!」
と言ってレスがルーチェに駆け寄ってきた。
「レス、何があったの…?」
と、不安気な顔をしてルーチェが尋ねた。
「お嬢様、私に着いてきてください。」
レスに着いていくと、レンディスの寝室に着いた。
そして、ベッドには、酷い怪我を負ったレンディスがいた。
「レス、どういうこと?!」
ルーチェは、目を丸くして訊いた。ルーチェの悪い予感は的中してしまったのだ。
「陛下とお話をしている際、刺客が来て最初は上手く対処出来ていたのですが、武器を持っていないのにも関わらず、人数が多すぎたのと、…オーラナイトが複数名いたので、対処しきれず怪我をおってしまわれました…。」
そして、怪我の処置が終わると、ルーチェは、主治医にこう訊いた。
「容態は?」
「なんとか一命は取り留めましたが、出血が酷いためまだ分かりません。そして、右腕の傷が酷いため剣を持つのは厳しいかもしれません。」
(そんな…!そんなのだめ。絶対に…。こうなったらあの人を呼ぶしか無いかもしれない。だけど、こちらの頼みに応じてくれるか…。)
ルーチェは、レンディスの横に行き、
「パパ。その傷、直せる人、絶対連れてくるからね…。」
ルーチェの瞳には涙が浮かんでいた。
チュトラリーの当主、後継者は、人に弱みを握られてはいけない。だから、人前で泣くことはいけない、そう教えられできたからこそ、ルーチェは、レスの前でも主治医の前でも涙を見せなかった。
「レス、この手紙をアルセント侯爵家に送って。」
ルーチェは、一通の手紙を渡した。
「かしこまりました。」
と言って、レスは部屋を出ていった。
(アルセント前公爵なら魔術が使える。問題はこの手紙を読んでくれるか…、そして応じてくれるか…。)
そして2日後、アルセント侯爵家からの返事が来た。
その手紙を読んでルーチェは、涙を流した。
「私の愛しき孫、ルーチェ・ド・チュトラリー様へ
お手紙拝見致しました。なれない公務でさぞ大変だろうと思います。色々話したいことはありますが、それは実際に会ってからお話しましょう。私は、ただいま大至急、公爵邸に内密に向かっております。私がお力になれるのであれば引き受けましょう。
最後に、私はあなたの祖父に当たるものです。そこまでかしこまらなくてもよろしいのですよ。
イルデル・デ・アルセント…。
よかった…、本当に…、魔術師がいれば後遺症が残ろうと、パパが死ぬことはない…。」
(これで、無理やり命を伸ばさなくて済む…。)
そう、ルーチェは、延命魔法を使って、時間を稼いでいたのだ。
もちろん魔法の反動は大きく、吐血をかなりの頻度でしていた。
それだけでは無い。目の前が見えなくなる時や、匂いがしなくなる時もしばしばだった。
弱さを見せないためにレスにも話さず、全て1人で抱えてきた。
そんなルーチェにとって、この手紙は、とても嬉しい知らせだった。
その日の昼過ぎ、馬の鳴き声がしたのを聞き、ルーチェは急いで表に走った。
「おじい様…。」
と、ルーチェが言うのを聞いて、前公爵は、驚いた。
手紙では、イルデル・デ・アルセント様と書いてあったのだから。
「遅くなってしまって申し訳ありません。」
「いえいえ、おじい様、こちらです。」
と言って、ルーチェは、イルデルをレンディスの寝室に連れていった。
「…直せますか?」
「最善を尽くします。」
と言って、イルデルは、治癒魔法を使い始めた。
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