悪い魔法使い、その愛妻

井中かわず

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求婚、結婚

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「さあ、夫婦になりましょう」

そっと唇がふれあう。

初めてのキスはなんとも柔らかく優しかった。

ヨルアは何度も小さなキスを繰り返していたが、段々呼吸が荒くなり、キスも長く激しくなっていく。
唇を食み、舐め、ついには舌を絡ませてきた。

「んっ…むう…」

苦しくなってぽんぽんと肩を叩くとやっと離れた。

「すみません、つい夢中に」

唾液で濡れた口許をぬぐいながらそう言ってはいるが、赤くなった顔やとろけたその瞳を見るに彼の興奮が収まる様子は無さそうだ。

「リコ、口を開けてください」

おもむろにそう言った。
急にそんなことを言うなんて警戒する他にない。

「な、なぜです…?」

「リコのためです。初めてだからと言って痛かったり、苦しかったりはイヤでしょう?」

そう言ってサイドテーブルから香水瓶ほどの大きさの小瓶を取り出した。

「あなたのために、あなたの身体に合わせて調合しました。一緒に気持ちよくなりましょう」

つまり、媚薬…ということだろうか。

というか私の身体にあわせてとはどういう意味だろう、何故そんなこを知っているんだ。
恐くなったので首を横にふった。

「困った子ですね」

そう言うと何を思ったのか彼は自分でその瓶の中身を自分の口に流し込む。
しかし、その理由はすぐにわかった。

「んっ…んん!」

彼は再び私の唇を奪い、深く舌を絡める。
口一杯に甘いような苦いような味が広がった。

ごくり

そしてついに流し込まれた液体を飲み込んでしまった。

「はは、僕も少し飲んじゃいました…
もう、リコが悪いんですからね?知りませんよ?」

そんな恐ろしいことを言ってから、今度は耳を舐めてくる。

ぬるり、ざらり、
耳を這う舌の感触に鳥肌が立つ。

「あっ…やぁ…んっ」

脳が痺れ、身体の芯から熱を帯びる。
感覚ひとつひとつが研ぎ澄まされているのに、なぜか蕩けていくような…

へんなかんじだ。

ヨルアは執拗に耳を舐めながらも、身体に手を伸ばしてきた。
彼はとても優しい触れ方をしてきたが、敏感にさせられた私はそれだけで身体が震えてしまう。
声が漏れ出る。

「ああ、柔らかい…
可愛い…可愛いですね…」

独り言のようにそう言いながら身体をまさぐる。
その手つきがあまりにもいやらしいものだからなんだか羞恥心を覚える。

「あっ…やぁ…んん」

自分の意思だけでは腰が動くのを止められなかった。

「僕の薬はすごいでしょう
こっちはどうなってますか?」

「あっ、んん…!」

「もうとろとろですね…」

首や頬に実に愛おしそうにキスをする。
彼の荒い呼吸が耳にかかってくすぐったい。

「はぁ、僕のもこんなになっちゃってるんです。
実を言うと、あなたを家に迎えてからずっとこうなんです…」

彼は下半身を私に押し付け、腰を動かす。
硬く、熱くなったそれを太ももに擦り付けられ、私はいよいよ顔から火が出そうなほど恥ずかしくなる。

「あ、あなたは変態です…!!!」

堪らずそう叫んだ。
彼はなぜか少し嬉しそうに笑って下に移動すると足にキスをする。

「変態なものですか。
男はみんな、愛する女性の前ではこうなるんです。
仮にもし、僕が変態だと言うのなら…」

「や、やだ…!どこ触って…!んあっ」

「あなたのことも変態にしてあげます。
夫婦なんですから…ね?」
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