上 下
9 / 16

9

しおりを挟む
あれ以来、すこぶる魔力の調子が良い。
今回の期末テストの結果は満足の行くものだった。

「最近ヴィオラ様は魔法に磨きがかかってますわね!流石自習してるだけありますわ」

「そのことをあまりつっこまないであげてキャロル」

「い、いいんですよルーナ。ありがとう」

知っている。キャロルに悪意はない。

ヨズキの部屋には週に2回ほど通うようにしていた。
相変わらず主導権は向こうな上に鎖や縄に繋がれたり鞭を使われ始めたり、ちょっとずつエスカレートしていることは不満だがこうして結果が伴ってしまっているので文句は言えない。

「でも本当に、今のヴィオラ様ならキースにも負けませんよきっと」

「そうだと信じたいですね」

「来週ハロウィーンのパーティーがあるせいで決闘の機会がなくて残念ですわ」

キンドル魔法学園では毎年ハロウィーンにダンスパーティーが行われている。
そのため、その一週間前から怪我や事故が起きないように実技の授業は控えられていた。

「お二人はダンスのお相手は決まったのですか?」

そう聞くとキャロルはポッと顔をピンクに染め、ルーナも珍しく照れたように頬を掻いた。

「私は先日ひと学年下のエル様に誘われましたの」

「私もその、クラスの男子と…。
ヴィオラ様はお決まりになりました?」

「相変わらずですよ、アテもありません」

ヴィオラは毎年誰を誘うことも誘われることもなく、なんとなく雰囲気を楽しむだけだった。

「私たちにとって最後のパーティーですし、折角ですからお誘いになってみては?」

ルーナが優しい微笑みでそう言った。一瞬ヨズキが浮かんだがすぐに振り払う。
そもそも彼は教師だ。

「そうしたいのですが誘いたい相手が見つからないのです」

そう笑って誤魔化した。
その日の夕方、自習のために自習室に行く。
今はテスト直後なのでヴィオラの貸しきりかと思ったが先客がいた。

「ヴィオラ、来ると思った」

キースだった。

「なにかご用?」

一瞥だけして「相手にする暇はないのよ」というアピールのために勉強道具を広げる。

「君、ダンスパーティーの相手はいるのかい?」

「貴方に関係あって?」

キースはヴィオラが勉強しようとしている机の上に座る。

「君を誘いたくってさ」

「はあ?」

「そう睨まないで。
ヴィオラに見合う男になりたくて俺は学年一位目指したんだぜ?」

「冗談でしょう?」

「本気だよ」

真剣な目で見つめてくるので思わずドキッとする。慌てて目を反らした。

「そ、そんなこと言われても困ります」

「困らないさ。毎年ひとりだし、今年も相手いないんだろ?」

煽っているわけではなく、それを願っているような言い方だった。

「…でも、」

「それとも魔力を上げるのを手伝ってくれてる相手と行く予定?」
  
「…!」

ヴィオラは変な汗をかきながら顔を真っ赤にする。

「不自然な魔力の上がり方だからね、察しがつくさ」

「あ、貴方もでしょう。
そちらの方をお誘いになったら?」

「訳アリでね、そうもいかないんだ。
それに本命は君だしね」

ヴィオラは頭の中はパニックになりながら急いで勉強道具を片付ける。

「からかわないで。失礼します」

部屋を飛び出すヴィオラに向かってキースは「返事待ってるよ」と言った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】奴隷が主人になりまして

おのまとぺ
恋愛
昼間は貴族の屋敷で下女として働くアンナは、夜間に特殊風俗で女王様になることで自分のプライドを保っていた。しかし、雇用切れで新しく配属された男爵家の主は自分の客であるロカルド・ミュンヘンで── ◇昼間の主人が夜は奴隷になる話 ◇基本的に男側がやられてます ◇少し逆転があったり(なかったり) ◇注意:第三者による無理矢理があります◆ 『初夜をすっぽかされたので私の好きにさせていただきます』のざまぁ退場した男がヒーローですが、未読でも問題ないです。未読の方がむしろ良いです。

【完結】お義父様と義弟の溺愛が凄すぎる件

百合蝶
恋愛
お母様の再婚でロバーニ・サクチュアリ伯爵の義娘になったアリサ(8歳)。 そこには2歳年下のアレク(6歳)がいた。 いつもツンツンしていて、愛想が悪いが(実話・・・アリサをーーー。) それに引き替え、ロバーニ義父様はとても、いや異常にアリサに構いたがる! いいんだけど触りすぎ。 お母様も呆れからの憎しみも・・・ 溺愛義父様とツンツンアレクに愛されるアリサ。 デビュタントからアリサを気になる、アイザック殿下が現れーーーーー。 アリサはの気持ちは・・・。

【R18】そんなお願いは叶えられない……はずなのに!

erodbook
恋愛
頭脳派の高校2年生男子による無茶なお願いを女の子たちが恥ずかしがりながらも何故か叶えてしまうという話。性描写あり。羞恥系。

さして仲良くない職場の先輩と飲み会の後に毎回セックスして繰り返し記憶をなくしている百合

風見 源一郎
恋愛
真雪が目を覚ますと、セックスをした後だった。隣には、すごくエッチな体をした女の人がいた。前日には会社の飲み会があったことだけを覚えている。 酔った勢いで、さして仲良くもない会社の先輩を相手に処女を散らしてしまった真雪は、しかし、見知らぬはずの部屋に、見知ったものばかりが置かれていることに気がついたのだった。

媚薬を盛られた天使が、腹黒悪魔にそそのかされ堕天する話(両思い)

夢伽 莉斗
恋愛
あざとい人たらし悪魔×好きを認めたくない意地っ張りの天使  理性溶けきったとろとろ天使が、頭のキレる悪魔に言葉巧みにおねだりさせられ、気づいたら中出しされてます。  地上に勉強にきていた天使のセラエルは、成り行きでカジノ店の客二人とお酒を飲むことになった。でもどうやらそのお客はセラエルに媚薬を盛って無体を働こうとしていたようで!?  店に来ていた悪魔のディアンシャが助けてくれたけど、媚薬の効果で体がまだおかしい。ディアンシャは堕天はさせないって言ってたし、彼に頼んで触ってもらってもいいかな。ディアンシャは冷たくて酷いことも言うけど、優しい時はすごく甘やかしてくれるからきっと大丈夫!  ※この小説は、小説家になろう ムーンライトノベルズで公開中の『悪キス』第30話ifです。本編では、ディアンシャはここでは手を出さず、飴と鞭でかわいがっています。悪役系キャラとの溺愛ものが好きな方はぜひ! 『悪魔のキスは愛が死んでいる』 〜怪我した悪魔を助けたら、腹黒ドSと発覚し執着されて弄ばれ堕天を狙ってきます〜 (もうじき完結) #執着 人外 スパダリ モブレ(未遂) 吸血鬼 異種姦 冷血 クズ 囲い込み 策略 ※イラスト:Yuba様(@fo___n) ※毎日更新、3話構成

下品な男に下品に調教される清楚だった図書委員の話

神谷 愛
恋愛
クラスで目立つこともない彼女。半ば押し付けれられる形でなった図書委員の仕事のなかで出会った体育教師に堕とされる話。 つまらない学校、つまらない日常の中の唯一のスパイスである体育教師に身も心も墜ちていくハートフルストーリー。ある時は図書室で、ある時は職員室で、様々な場所で繰り広げられる終わりのない蜜月の軌跡。 歪んだ愛と実らぬ恋の衝突 ノクターンノベルズにもある ☆とブックマークをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

処理中です...