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夫婦のはじまり
20歳と34歳 ①
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「はあ…」
朝からシュヤンが大きなため息をついてマリアをベッドに引きずり込む。
「ダメですよシュヤンさん。準備してください」
「欠席しない?」
「もう、アンバーくんの成人のお祝いですよ?」
シュヤンの兄の息子…つまり甥っ子のアンバーは今年18歳、成人を迎える。
その祝いの席に行くことをごねているのだ。
「わかってるよ、だから行きたくないんだ」
元々親族との関係が良好でない彼だが、何故かやけにアンバーに冷たい。
シュヤンはマリアの胸元に顔を埋めてすりすりする。
「僕の可愛い奥さんがいやらしい目で見られたり苛められたらどうするんだ」
「そんなことするのシュヤンさんくらいですよ」
「そんなことない!マリアさんは自分の可愛さとエロさを自覚すべきなんだ!このっ!」
「ちょ…イヤ!本当に準備しなかきゃダメだから…!」
シュヤンが胸元にグリグリと顔を押し付けながらお尻を触ってきた。
そのとき、コンコンと寝室の扉が叩かれる。
「旦那様、奥様、よろしいでしょうか」
オリビアだ。
(ナイスタイミング!!)
シュヤンは先ほどまでの態度が嘘のようにシャキッとする。
「入っていいよ、なんだい?」
「失礼いたします。そろそろ奥様のご準備を始めませんと…」
「そうか、じゃあ頼んだよ」
シュヤンは紳士的にマリアの手にキスを落とすとオリビアに引き渡した。
「うふふ、旦那様は奥様を大切にしてくださるのね。優しくていつも見ていて微笑ましいです」
オリビアはマリアの着替えを手伝いながらそう言った。シュヤンは使用人も含め決して人前であのようなデレデレな顔を見せないのだ。
パーティー会場でも実にスマートに振る舞っており、こういう時は本当にカッコいいと思う。
「叔父上!マリア!」
すっかり逞しく成長したアンバーが笑顔で2人を出迎えた。
「アンバーくん!この度はご成人おめでとうございます。久しぶりですね。もう4年ぶり…ですか?すっかり大きくなられて」
「はい本当に。何度か叔父上には遊びに行きたいと手紙で伝えていたのですが中々都合がつかなかったようで」
初耳だ。
「あら…!そうだったんですか?知らなかったです、言ってくだされば準備したのに」
シュヤンを見上げたが彼はマリアとは目を合わさず、微笑みながら彼女の腰に手を回す。
「僕たちも何かと忙しくて」
「おや、そうでしたか」
グッと腰を抱く手に力がこもった。
「おーい、アンバー!シュヤン!」
妙な緊張感が漂った時、既に酒を飲み出来上がっているフェイが大声で呼びながら手招きしている。
シュヤンは少し間を置いてから、マリアの両肩を掴んで子供に言い聞かせるように目を真っ直ぐ見る。
「いいかい。誰とも話さず、あの壁の辺りでじっとしているんだ。もし何かあったら迷わず僕を呼んで。いいね?」
「は、はい」
シュヤンは少し心配そうな顔をしながらも、アンバーを連れてフェイのところへ向かった。
マリアは大人しく言われた通りに壁に張り付く。
知らない人たち、貴族ばかりだ。育った環境も血筋も何もかも違う。
シュヤンと一緒か昔馴染みのアンバー相手ならいざ知れず、ひとりきりだと楽しくない。
ぼんやりとしていると、こんなに隅にいるのにドンッと誰かにぶつかられた。
「あ、すみません」
そう言った先にいるのは2人組の女性だ。
出で立ちを見るに貴族であることは間違いない。
よく似ている…姉妹だろうか。
「あら?なんか臭くありませんこと?」
姉らしき少し20代後半の女性がマリアを無視しながらそこそこのボリュームでそう言った。
「本当ですわねお姉様。なんだかケモノ臭いですねえ」
もう1人がそう言ったことで意味を理解する。
カアッと顔が熱くなるのを感じた。
朝からシュヤンが大きなため息をついてマリアをベッドに引きずり込む。
「ダメですよシュヤンさん。準備してください」
「欠席しない?」
「もう、アンバーくんの成人のお祝いですよ?」
シュヤンの兄の息子…つまり甥っ子のアンバーは今年18歳、成人を迎える。
その祝いの席に行くことをごねているのだ。
「わかってるよ、だから行きたくないんだ」
元々親族との関係が良好でない彼だが、何故かやけにアンバーに冷たい。
シュヤンはマリアの胸元に顔を埋めてすりすりする。
「僕の可愛い奥さんがいやらしい目で見られたり苛められたらどうするんだ」
「そんなことするのシュヤンさんくらいですよ」
「そんなことない!マリアさんは自分の可愛さとエロさを自覚すべきなんだ!このっ!」
「ちょ…イヤ!本当に準備しなかきゃダメだから…!」
シュヤンが胸元にグリグリと顔を押し付けながらお尻を触ってきた。
そのとき、コンコンと寝室の扉が叩かれる。
「旦那様、奥様、よろしいでしょうか」
オリビアだ。
(ナイスタイミング!!)
シュヤンは先ほどまでの態度が嘘のようにシャキッとする。
「入っていいよ、なんだい?」
「失礼いたします。そろそろ奥様のご準備を始めませんと…」
「そうか、じゃあ頼んだよ」
シュヤンは紳士的にマリアの手にキスを落とすとオリビアに引き渡した。
「うふふ、旦那様は奥様を大切にしてくださるのね。優しくていつも見ていて微笑ましいです」
オリビアはマリアの着替えを手伝いながらそう言った。シュヤンは使用人も含め決して人前であのようなデレデレな顔を見せないのだ。
パーティー会場でも実にスマートに振る舞っており、こういう時は本当にカッコいいと思う。
「叔父上!マリア!」
すっかり逞しく成長したアンバーが笑顔で2人を出迎えた。
「アンバーくん!この度はご成人おめでとうございます。久しぶりですね。もう4年ぶり…ですか?すっかり大きくなられて」
「はい本当に。何度か叔父上には遊びに行きたいと手紙で伝えていたのですが中々都合がつかなかったようで」
初耳だ。
「あら…!そうだったんですか?知らなかったです、言ってくだされば準備したのに」
シュヤンを見上げたが彼はマリアとは目を合わさず、微笑みながら彼女の腰に手を回す。
「僕たちも何かと忙しくて」
「おや、そうでしたか」
グッと腰を抱く手に力がこもった。
「おーい、アンバー!シュヤン!」
妙な緊張感が漂った時、既に酒を飲み出来上がっているフェイが大声で呼びながら手招きしている。
シュヤンは少し間を置いてから、マリアの両肩を掴んで子供に言い聞かせるように目を真っ直ぐ見る。
「いいかい。誰とも話さず、あの壁の辺りでじっとしているんだ。もし何かあったら迷わず僕を呼んで。いいね?」
「は、はい」
シュヤンは少し心配そうな顔をしながらも、アンバーを連れてフェイのところへ向かった。
マリアは大人しく言われた通りに壁に張り付く。
知らない人たち、貴族ばかりだ。育った環境も血筋も何もかも違う。
シュヤンと一緒か昔馴染みのアンバー相手ならいざ知れず、ひとりきりだと楽しくない。
ぼんやりとしていると、こんなに隅にいるのにドンッと誰かにぶつかられた。
「あ、すみません」
そう言った先にいるのは2人組の女性だ。
出で立ちを見るに貴族であることは間違いない。
よく似ている…姉妹だろうか。
「あら?なんか臭くありませんこと?」
姉らしき少し20代後半の女性がマリアを無視しながらそこそこのボリュームでそう言った。
「本当ですわねお姉様。なんだかケモノ臭いですねえ」
もう1人がそう言ったことで意味を理解する。
カアッと顔が熱くなるのを感じた。
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