6 / 14
思春期のはじまり
12歳と26歳 ①
しおりを挟む
12歳になったマリアは、ついに普通の学校に通うことになった。
そしてそこでカルチャーショックをうける。
マリアは赤ちゃんのときには既に許嫁がいた。マリアの周りには両親とシュヤン、そしてオリビアという未婚を貫く誓いを立てた修道女しかいなかったので、それが当たり前だと思っていた。
しかし、みんなには許嫁なんてものはいないのだ。
思春期の学友たちは興味を示し、根掘り葉掘り聞いてきた。
そして何故か、別の1人の男子生徒から恋文を渡された。
ひとり部屋で、それをペラリと開いて読む。
『許嫁のことを知ってショックでした。でも、貴女を諦めることができません。学校に通っている間だけでもお付き合いすることはできないでしょうか?
せめてあなたの昔の恋人という想い出になりたいのです』
そんな風に書いてあった。
別に好きでも嫌いでもない男子だ。顔は整っていて、正義感の強い人だ。
マリアは頬杖をついてその手紙をまた読み返す。
マリアも例に漏れずに思春期なので、異性に興味がないわけではないし、そこそこカッコいい男子なので悪い気はしない。
…シュヤンがこのことを知ったらどう思いどんな顔をするのだろう。怒るのだろうか。
ぼんやりとしていると、
「マリアさん、入るよ?」
とシュヤンが入ってきた。慌てて手紙を折って背中に隠す。
「ええ?!シュヤンさん!びっくりした…!」
「…。
声はかけたんだけど」
「ごめんなさい、ぼーっとしてて。今日いらっしゃるなんて珍しいですね」
「仕事が急に休みになったからさ」
「そうなんですね」
マリアは立ち上がりながら手紙をポケットに押し込んだ。
「お茶淹れてきますね」
シュヤンはそう言って部屋から出ようとするマリアの腕を掴んでベッドに座らせると、左隣に座った。
「今、何隠したの?」
シュヤンはいつもと同じようににこにこ微笑んでいて、マリアには彼が何を考えているのかわからない。
「いえ、何も隠してないです…」
「嘘、右のポケットに何か入れたよね。見せてよ」
スルリと腰に手を回し、そのままポケットまで伸ばすのでそれを両手で掴んで止めた。
ごつごつした大人の男性の手だ。思わずドキドキとしてしまう。
「ね、お願い。内緒にするから」
「あ、あの!!」
必死にそらす話題を考える。
「ん?」
「ロリコン…って、なんですか?」
ふと、シュヤンのことを話したときに言われた「ロリコンじゃん」という言葉を思い出したので聞いてみた。
「…。誰から聞いたの?そんな言葉」
「えっと…学校の友だちから…」
そう言えばこの手紙をくれた子だった気もする。
「マリアさんみたいな可愛くて幼い女の子が好きな人のことだよ」
顔を寄せ、耳元でそう囁く。マリアは顔が熱くなった。こんなに密着するのは初めてだ。
沸騰寸前の脳みそでなんとか質問を続けようと試みる。
「シュヤンさんは…そう言う人なの…?」
「んー…マリアさんのことは大好きだけど、幼いから好きなんじゃないよ。むしろ早く大人になって欲しいくらいだ。こんなに年が離れてるのが恨めしいよ」
大好きと言われて思わず黙る。熱くて熱くて首からつーっと汗が流れるのがわかった。
シュヤンは何を思ったのか、突然首筋を舐める。
「ひゃ?!」
思わず手を離すと、その隙にポケットの中身を取られてしまった。
「あ!ダメ!…うぅ…やだもう…」
マリアは顔を手で覆って隠した。
シュヤンは手紙を読んでしまうと、「へえ」と独り言を言ってマリアの肩を抱く。
「で、これどうするの?」
「どうするって…」
「受けるの?断るの?」
彼は先程からずっと変わらずにこにこしているが目が笑っていない。それだけはわかる。
「わかんないけど…」
「わかんないの?」
「…」
こんな怖いシュヤンは初めてだった。
そしてそこでカルチャーショックをうける。
マリアは赤ちゃんのときには既に許嫁がいた。マリアの周りには両親とシュヤン、そしてオリビアという未婚を貫く誓いを立てた修道女しかいなかったので、それが当たり前だと思っていた。
しかし、みんなには許嫁なんてものはいないのだ。
思春期の学友たちは興味を示し、根掘り葉掘り聞いてきた。
そして何故か、別の1人の男子生徒から恋文を渡された。
ひとり部屋で、それをペラリと開いて読む。
『許嫁のことを知ってショックでした。でも、貴女を諦めることができません。学校に通っている間だけでもお付き合いすることはできないでしょうか?
せめてあなたの昔の恋人という想い出になりたいのです』
そんな風に書いてあった。
別に好きでも嫌いでもない男子だ。顔は整っていて、正義感の強い人だ。
マリアは頬杖をついてその手紙をまた読み返す。
マリアも例に漏れずに思春期なので、異性に興味がないわけではないし、そこそこカッコいい男子なので悪い気はしない。
…シュヤンがこのことを知ったらどう思いどんな顔をするのだろう。怒るのだろうか。
ぼんやりとしていると、
「マリアさん、入るよ?」
とシュヤンが入ってきた。慌てて手紙を折って背中に隠す。
「ええ?!シュヤンさん!びっくりした…!」
「…。
声はかけたんだけど」
「ごめんなさい、ぼーっとしてて。今日いらっしゃるなんて珍しいですね」
「仕事が急に休みになったからさ」
「そうなんですね」
マリアは立ち上がりながら手紙をポケットに押し込んだ。
「お茶淹れてきますね」
シュヤンはそう言って部屋から出ようとするマリアの腕を掴んでベッドに座らせると、左隣に座った。
「今、何隠したの?」
シュヤンはいつもと同じようににこにこ微笑んでいて、マリアには彼が何を考えているのかわからない。
「いえ、何も隠してないです…」
「嘘、右のポケットに何か入れたよね。見せてよ」
スルリと腰に手を回し、そのままポケットまで伸ばすのでそれを両手で掴んで止めた。
ごつごつした大人の男性の手だ。思わずドキドキとしてしまう。
「ね、お願い。内緒にするから」
「あ、あの!!」
必死にそらす話題を考える。
「ん?」
「ロリコン…って、なんですか?」
ふと、シュヤンのことを話したときに言われた「ロリコンじゃん」という言葉を思い出したので聞いてみた。
「…。誰から聞いたの?そんな言葉」
「えっと…学校の友だちから…」
そう言えばこの手紙をくれた子だった気もする。
「マリアさんみたいな可愛くて幼い女の子が好きな人のことだよ」
顔を寄せ、耳元でそう囁く。マリアは顔が熱くなった。こんなに密着するのは初めてだ。
沸騰寸前の脳みそでなんとか質問を続けようと試みる。
「シュヤンさんは…そう言う人なの…?」
「んー…マリアさんのことは大好きだけど、幼いから好きなんじゃないよ。むしろ早く大人になって欲しいくらいだ。こんなに年が離れてるのが恨めしいよ」
大好きと言われて思わず黙る。熱くて熱くて首からつーっと汗が流れるのがわかった。
シュヤンは何を思ったのか、突然首筋を舐める。
「ひゃ?!」
思わず手を離すと、その隙にポケットの中身を取られてしまった。
「あ!ダメ!…うぅ…やだもう…」
マリアは顔を手で覆って隠した。
シュヤンは手紙を読んでしまうと、「へえ」と独り言を言ってマリアの肩を抱く。
「で、これどうするの?」
「どうするって…」
「受けるの?断るの?」
彼は先程からずっと変わらずにこにこしているが目が笑っていない。それだけはわかる。
「わかんないけど…」
「わかんないの?」
「…」
こんな怖いシュヤンは初めてだった。
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~
石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。
食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。
そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。
しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。
何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。
扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
捨てる旦那あれば拾うホテル王あり~身籠もったら幸せが待っていました~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「僕は絶対に、君をものにしてみせる」
挙式と新婚旅行を兼ねて訪れたハワイ。
まさか、その地に降り立った途端、
「オレ、この人と結婚するから!」
と心変わりした旦那から捨てられるとは思わない。
ホテルも追い出されビーチで途方に暮れていたら、
親切な日本人男性が声をかけてくれた。
彼は私の事情を聞き、
私のハワイでの思い出を最高のものに変えてくれた。
最後の夜。
別れた彼との思い出はここに置いていきたくて彼に抱いてもらった。
日本に帰って心機一転、やっていくんだと思ったんだけど……。
ハワイの彼の子を身籠もりました。
初見李依(27)
寝具メーカー事務
頑張り屋の努力家
人に頼らず自分だけでなんとかしようとする癖がある
自分より人の幸せを願うような人
×
和家悠将(36)
ハイシェラントホテルグループ オーナー
押しが強くて俺様というより帝王
しかし気遣い上手で相手のことをよく考える
狙った獲物は逃がさない、ヤンデレ気味
身籠もったから愛されるのは、ありですか……?
このたび、あこがれ騎士さまの妻になりました。
若松だんご
恋愛
「リリー。アナタ、結婚なさい」
それは、ある日突然、おつかえする王妃さまからくだされた命令。
まるで、「そこの髪飾りと取って」とか、「窓を開けてちょうだい」みたいなノリで発せられた。
お相手は、王妃さまのかつての乳兄弟で護衛騎士、エディル・ロードリックさま。
わたしのあこがれの騎士さま。
だけど、ちょっと待って!! 結婚だなんて、いくらなんでもそれはイキナリすぎるっ!!
「アナタたちならお似合いだと思うんだけど?」
そう思うのは、王妃さまだけですよ、絶対。
「試しに、二人で暮らしなさい。これは命令です」
なーんて、王妃さまの命令で、エディルさまの妻(仮)になったわたし。
あこがれの騎士さまと一つ屋根の下だなんてっ!!
わたし、どうなっちゃうのっ!? 妻(仮)ライフ、ドキドキしすぎで心臓がもたないっ!!
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
私を嫌っていた冷徹魔導士が魅了の魔法にかかった結果、なぜか私にだけ愛を囁く
魚谷
恋愛
「好きだ、愛している」
帝国の英雄である将軍ジュリアは、幼馴染で、眉目秀麗な冷血魔導ギルフォードに抱きしめられ、愛を囁かれる。
混乱しながらも、ジュリアは長らく疎遠だった美形魔導師に胸をときめかせてしまう。
ギルフォードにもジュリアと長らく疎遠だったのには理由があって……。
これは不器用な魔導師と、そんな彼との関係を修復したいと願う主人公が、お互いに失ったものを取り戻し、恋する物語
溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
王宮に薬を届けに行ったなら
佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。
カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。
この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。
慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。
弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。
「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」
驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。
「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる