人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず

文字の大きさ
上 下
5 / 14
はじまり

9歳と23歳 と7歳 ②

しおりを挟む
アンバーが狼の耳をとても気に入ったようなのでそのままピクニックへと出掛ける。オリビアも一緒に来るようなのでどのみち二人きりではないし、耳つきマリアを見られたのでシュヤンはアンバーのことを少し許した。

シュヤンは不振に思われない程度にアンバーと遊ぶじっとマリアを見つめる。
ふわふわの銀髪の間から飛び出したこれまたふわふわの耳…。
触りたい。触ったらどんな反応をするんだろう。にぎにぎ弄り倒したい。ちょっと強くつねったら痛がるんだろうか…。

(ああ、なんでこの子はまだこんなに小さくて幼いのか。大人だったら…早く、)

容赦なく愛しいじめたい。

「なんだか微笑ましいですね」

ひとり悶々と妄想していたシュヤンにオリビアが話しかける。

「…え、なんです?」

ワンテンポ遅れて、話しかけられていたことに気がついた。

「マリア様がこんな風に年の近い子と遊ぶことってあんまりないから…あの子、弟が出来たみたいで嬉しそう」

「ああ、そうですかね」

男の子と遊んで嬉しそうなマリアなど全く微笑ましくはないが適当にそう相槌をうった。

「マリア様とシュヤン様はいつご結婚されるんでしたっけ」

「7年後です。マリアさんが16歳になったら」

「今の私と同い年ですね。そっか、7年か…長いような短いような…」

彼女は16歳にしては大人びた雰囲気の少女だ。マリアもこのくらいだったら虐めても壊れないだろうか。

「僕には長過ぎます」

「ふふ、シュヤンさんも待ちくたびれちゃいますね。…でも大変ですよね、決められた結婚だなんて。…本当のところ想う人とかいらっしゃったりしないの?」

オリビアが小さな声で聞いてきた。
シュヤンは
(は?アンバーのやつ今マリアさんのこと呼び捨てした?)
とか思いながら答える。

「僕が好きなのはマリアさんですよ」

彼女はそれを冗談や建前と捉えたのか「そうでしたね」と笑った。

「やい!この狼の魔物めこの勇者アンバーが成敗してくれる!」

「ははは!やってみよ!」

そんな芝居をしながら2人は遊びの取っ組み合いを始める。
始めはじゃれているだけだったが、どんどんヒートアップしてきた。

「こら!マリア!!」「やめろアンバー」

オリビアとシュヤンの怒った声が同時に響いたとき、マリアがアンバーに馬乗りになりその持っていた棒切れに噛みついていたところだった。
シュヤンは冷静を装いつつも大人げなくアンバーに嫉妬心を燃やす。
マリアはそんなシュヤンと目が合うと顔をカアッと赤くして急いで立ち上がり服を整える。

「ご、ごめんなさい…私耳出してるとちょっと本能的になっちゃって…」

「全く!貴女はタオニ家に嫁ぐのですよ!もっとレディらしく振る舞ってくださいな!」

オリビアがマリアを叱りつけている横でシュヤンもアンバーの腕を掴んで立ち上がらせる。

「アンバー、お前が調子に乗りすぎたんだ」

「いてて、女のクセに結構力強いんだな」

性懲りもなくそんなことを言うのでまた頭を鷲掴みにした。

「マリア様は血は薄くとも人狼、普通の子供より力は強いんです」

シュヤンはそんな情報を知り、いつか組みしくために筋トレでもしとこうかな。などと思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あなたより年上ですが、愛してくれますか?

Ruhuna
恋愛
シャーロット・ロックフェラーは今年25歳を迎える 5年前から7歳年下の第3王子の教育係に任命され弟のように大事に大事に接してきた 結婚してほしい、と言われるまでは 7/23 完結予定 6/11 「第3王子の教育係は翻弄される」から題名を変更させて頂きました。 *直接的な表現はなるべく避けておりますが、男女の営みを連想させるような場面があります *誤字脱字には気をつけておりますが見逃している部分もあるかと思いますが暖かい目で見守ってください

訳ありな家庭教師と公爵の執着

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝名門ブライアン公爵家の美貌の当主ギルバートに雇われることになった一人の家庭教師(ガヴァネス)リディア。きっちりと衣装を着こなし、隙のない身形の家庭教師リディアは素顔を隠し、秘密にしたい過去をも隠す。おまけに美貌の公爵ギルバートには目もくれず、五歳になる公爵令嬢エヴリンの家庭教師としての態度を崩さない。過去に悲惨なめに遭った今の家庭教師リディアは、愛など求めない。そんなリディアに公爵ギルバートの方が興味を抱き……。 ※設定などは独自の世界観でご都合主義。ハピエン🩷  ※稚拙ながらも投稿初日(2025.1.26)からHOTランキングに入れて頂き、ありがとうございます🙂 最高で26位(2025.2.4)。 ※断罪回に残酷な描写がある為、苦手な方はご注意下さい。

W-score

フロイライン
恋愛
男に負けじと人生を仕事に捧げてきた山本 香菜子は、ゆとり世代の代表格のような新入社員である新開 優斗とペアを組まされる。 優斗のあまりのだらしなさと考えの甘さに、閉口する香菜子だったが…

最強退鬼師の寵愛花嫁

桜月真澄
恋愛
花園琴理 Hanazono Kotori 宮旭日心護 Miyaasahi Shingo 花園愛理 Hanazono Airi クマ Kuma 2024.2.14~ Sakuragi Masumi

人質王女の恋

小ろく
恋愛
先の戦争で傷を負った王女ミシェルは顔に大きな痣が残ってしまい、ベールで隠し人目から隠れて過ごしていた。 数年後、隣国の裏切りで亡国の危機が訪れる。 それを救ったのは、今まで国交のなかった強大国ヒューブレイン。 両国の国交正常化まで、ミシェルを人質としてヒューブレインで預かることになる。 聡明で清楚なミシェルに、国王アスランは惹かれていく。ミシェルも誠実で美しいアスランに惹かれていくが、顔の痣がアスランへの想いを止める。 傷を持つ王女と一途な国王の恋の話。

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。

112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。  ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。  ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。 ※完結しました。ありがとうございました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】 妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。

処理中です...