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はじまり
2歳と16歳
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マリアの誕生から2年後のその日起きたことは、シュヤンが最も危惧していた出来事である。
シュヤンの6歳年上の兄であるフェイに息子が誕生したのだ。
すっかりお祝いムードの屋敷の中、ひとり怖い顔をしたシュヤンは堪らず父親の背後に立つ。
「父上、ひとつお尋ねしたいのですが…」
「うわっ!びっくりした…なんだシュヤン」
「オルドルフ家との婚姻、よもやとは思いますが兄上のご子息に話が流れることはございませんな」
「な、ないけど…」
シュヤンが家族でも聞いたことの無い低く唸るような声を出すのでヤオは思わず冷や汗をかきながらそう答える。
尤も、タオニ家としても武勇猛々しいフェイの長男に人狼などあてがいたくはない。
「あ、そうですか!それならいいんです」
シュヤンはその返答を聞くといつも通りの笑顔に軽薄そうな声でそう言い、上機嫌にその場を去った。
(よかったよかった、無いとは思うけどもしそうなったら誘拐か殺しをするところだった)
そんな物騒なことを思いながらシュヤンはいつも通りオルドルフ家に向かう。
シュヤンは毎週末になると勉強を早めに切り上げてマリアに会いに行っていた。本当は毎日でも良いのだけど、流石に迷惑になると思い自重していたのだ。
シオンやメグには嫌われたくない。
「しゅやや!」
許嫁だと認識こそしていないが、マリアはこの頃には定期的に会いにくる謎のお兄さんとして認知していた。
「こんにちはマリアさん、今日も可愛いね」
マリアの頭を撫でると気持ち良さそうにほわぁっと笑う。
そんな顔を見ると愛おしすぎてぎゅっと抱き締めて噛みついてやりたい気持ちになるが、シュヤンはぐっと堪える。
「シュヤン君今日もありがとう。あなたがいるとマリアの面倒を見てくれるから助かるわ」
メグやシオンとはすっかり打ち解けていた。大切な人の両親だ、実の親以上に大切にしていた。
「そう言えば…今日甥っ子さんがご誕生したのでしょう?外報で知ったわ。
もしかしてマリアの許嫁が…」
「僕ですよ」
シュヤンは食い気味にそう言った。
「…失礼な話になりますが、父も兄も甥子にはもっと政治的に利用できそうな令嬢を用意したいはずです。
僕は彼らの価値観では落ちこぼれですからね、僕のほうが好都合なんでしょう」
先程は万が一を思ってヤオに確認したが、賢いシュヤンは婚姻が決まったその時からそんなことはわかっていた。
「そう…シュヤン君も災難よね…人狼の嫁だなんて…」
「何を言うんですか」
シュヤンはマリアの脇を持つと高く掲げ、たかいたかいをする。
マリアはきゃっきゃとそれは楽しそうに笑い、可愛い笑顔をシュヤンに降り注いだ。
「こんな素敵な子が僕のお嫁さんになるだなんて幸せです」
「シュヤン君…ありがとう。あなたがこの子の許嫁でよかったわ」
メグは心優しいシュヤンが気を遣ってそう言っていると思っているが、今の言葉は彼の本心である。
シュヤンは初めて触れたときから、前世からの因縁があったとしか思えないほどマリアに惹かれていた。
流石にこんな幼い身体に欲情することはないけれど、成長して大人の身体になり、抱き締めて噛みついても簡単には壊れなくなった時のことを思うと胸が高鳴った。
「早く大きくなってね」
シュヤンはとても爽やかな笑顔をマリアに見せた。
シュヤンの6歳年上の兄であるフェイに息子が誕生したのだ。
すっかりお祝いムードの屋敷の中、ひとり怖い顔をしたシュヤンは堪らず父親の背後に立つ。
「父上、ひとつお尋ねしたいのですが…」
「うわっ!びっくりした…なんだシュヤン」
「オルドルフ家との婚姻、よもやとは思いますが兄上のご子息に話が流れることはございませんな」
「な、ないけど…」
シュヤンが家族でも聞いたことの無い低く唸るような声を出すのでヤオは思わず冷や汗をかきながらそう答える。
尤も、タオニ家としても武勇猛々しいフェイの長男に人狼などあてがいたくはない。
「あ、そうですか!それならいいんです」
シュヤンはその返答を聞くといつも通りの笑顔に軽薄そうな声でそう言い、上機嫌にその場を去った。
(よかったよかった、無いとは思うけどもしそうなったら誘拐か殺しをするところだった)
そんな物騒なことを思いながらシュヤンはいつも通りオルドルフ家に向かう。
シュヤンは毎週末になると勉強を早めに切り上げてマリアに会いに行っていた。本当は毎日でも良いのだけど、流石に迷惑になると思い自重していたのだ。
シオンやメグには嫌われたくない。
「しゅやや!」
許嫁だと認識こそしていないが、マリアはこの頃には定期的に会いにくる謎のお兄さんとして認知していた。
「こんにちはマリアさん、今日も可愛いね」
マリアの頭を撫でると気持ち良さそうにほわぁっと笑う。
そんな顔を見ると愛おしすぎてぎゅっと抱き締めて噛みついてやりたい気持ちになるが、シュヤンはぐっと堪える。
「シュヤン君今日もありがとう。あなたがいるとマリアの面倒を見てくれるから助かるわ」
メグやシオンとはすっかり打ち解けていた。大切な人の両親だ、実の親以上に大切にしていた。
「そう言えば…今日甥っ子さんがご誕生したのでしょう?外報で知ったわ。
もしかしてマリアの許嫁が…」
「僕ですよ」
シュヤンは食い気味にそう言った。
「…失礼な話になりますが、父も兄も甥子にはもっと政治的に利用できそうな令嬢を用意したいはずです。
僕は彼らの価値観では落ちこぼれですからね、僕のほうが好都合なんでしょう」
先程は万が一を思ってヤオに確認したが、賢いシュヤンは婚姻が決まったその時からそんなことはわかっていた。
「そう…シュヤン君も災難よね…人狼の嫁だなんて…」
「何を言うんですか」
シュヤンはマリアの脇を持つと高く掲げ、たかいたかいをする。
マリアはきゃっきゃとそれは楽しそうに笑い、可愛い笑顔をシュヤンに降り注いだ。
「こんな素敵な子が僕のお嫁さんになるだなんて幸せです」
「シュヤン君…ありがとう。あなたがこの子の許嫁でよかったわ」
メグは心優しいシュヤンが気を遣ってそう言っていると思っているが、今の言葉は彼の本心である。
シュヤンは初めて触れたときから、前世からの因縁があったとしか思えないほどマリアに惹かれていた。
流石にこんな幼い身体に欲情することはないけれど、成長して大人の身体になり、抱き締めて噛みついても簡単には壊れなくなった時のことを思うと胸が高鳴った。
「早く大きくなってね」
シュヤンはとても爽やかな笑顔をマリアに見せた。
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