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肆章 氷雪の国・スノーメイル

四十話、マズイかもしれない

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「…ッッもうちょっとだから…頑張って…!」


瘴気を抑えつつ、魔力を送り続けてかなりの時間が経った。でも…このままだと私の魔力が足りなくなる…


“嗚呼…来てしまった…災厄が…ッ”


「まだ諦めちゃ駄目。もっと魔力を送るから」


“人の子…逃げなさい…瘴気がもう…”


その瞬間、竜の体から大量の瘴気が溢れ出た。それが私の魔力を伝って、私の体に入ってくる。


「…!?何、これ…」


体に黒い荊の様な模様が浮かび上がった。そして意識がナニカに持っていかれそうになる。


「貴方は…こんな物を長い時間耐えていたんだね…」


“自我が…失われて…”


「…!負けちゃ駄目!貴方は春告の竜。春をもたらす聖なる竜なの。貴方が一人で飛べないなら私も手伝う。だからこれに呑まれてはいけない!」


魔力を再び注いで瘴気に抗う。魔力を流せば確かに竜の瘴気は消える。でも…私の中の瘴気は膨れ上がって来てる。


「大丈夫…絶対に貴方を邪竜になんかさせないから。…一緒に春を呼びに行こう」


“貴女にまで私の瘴気が…!”


「関係ない。このくらいどうって事無いよ」


こうなれば一回、私の体に全部竜の瘴気を移せば何とかなるかもしれない。外にあるフェイクガルム達の気配は一旦無視だ。春さえ呼ぶ事が出来れば、丸く収まるんだから。


「…瘴気に侵され過ぎれば、自我を失ってただの破壊兵器となる…か」


かつて、師匠が私に教えてくれた事。魔術を学ぶ上で魔力や瘴気の基礎知識を学んだ時に教わった。故に瘴気は直ぐに浄化しなければならない。普通に生きてさえいれば瘴気を生成する事も無い。でも…大きな非魔術師の負の感情は時に瘴気に変わる。


“人の子、何を…”


「貴方を助けたい。私の我儘でも…皆には幸せであって欲しいの」


私は精霊達や動物が好きだ。人間よりも好きかもしれないくらいには。だから…助けたいし、苦しんで欲しく無い。だから瘴気を貰い受けるくらい…造作も無い。


「大丈夫、師匠曰く私は人よりも瘴気に耐性があるみたいだから。何とかなるよ」


杖を地面に突き立てて、私と竜の真下に魔法陣を展開する。これで私の魔力と竜の瘴気が入れ替わる筈。


「きっとこれで体が楽になる筈。そうしたら直ぐに春を呼びに…」


“なりません!それだけは頷けない”


竜の気迫に、咄嗟に魔法陣を打ち消した。成程、移す事は出来ない…か。


「なら、私の魔力で地道に浄化しよう。貴方は私を信じてて。その信頼で、私の魔力は強くなるから」


“…どうか無理せずに”


それに答える事はせず、ただ魔力を流す。でも目の前が少し…霞んで来てるかもな…
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