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肆章 氷雪の国・スノーメイル

二十五話、天使かと思った

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「…大分冷えて来たな…」


「嗚呼、寒さの方が強すぎてサラマンダーが弱り始めた…無理すんな、戻っとけ。俺は大丈夫だから、な?」


「俺からも感謝する。ありがとう、サラマンダー。君もゆっくり休め」


俺の言葉とヴィクトールの感謝を受けて、サラマンダーは嫌々姿を消した。今まで、自分も凍えてんのに俺等を助けたい~って頑張ってくれてたんだ。今度何か礼をしないとな。俺達が無事に帰れたらだけど!!


「さっっむい…」


「サラマンダーが居ないだけでこんなに違うのか…矢張り火を…」


「外見ろ馬鹿。どう考えても無理だわ大人しくしとけ」


外は真っ白の壁があるみたいに何も見えんし、オマケに風の音はゴオオオオオ!!だ。この中で火起こしに使えそうな木を探すのは鬼畜だし何なら帰って来れるかすら怪しい。


「…俺の管理不足だ。済まないな、ライハ」


「止めろよ。お前が俺に謝るとかキモいわ」


「本来なら、あの場でお前が落ちる事を見越して、俺が対策を立てるべきだった。大人としてお前も守る事が出来なかった事は謝罪する」


俺に向かってあのヴィクトールが頭を下げた。どう言って良いか分からなくて、視線を右往左往させてると、急にヴィクトールはバッと顔を上げた。んだよ!?ビビったが!!


「だがお前も危機察知能力と落ち着きを覚えろ。何度も言うが、今のお前は猿と同等だ間抜けが」


「はあ!?さっきまでの誠意は何処行ったお前!」


「大人としての責務を全う出来なかった謝罪だ。それとこれとは話が違う」


そんな憎まれ口を叩いているが、ヴィクトールの目は何時もと違って覇気が無い。偶に眠そうに長く瞼を閉じている。いやいや、不味い!


「お前寝んなよ!?」


「…嗚呼」


「寝んじゃん馬鹿野郎!!」


何もしてない様に見えるヴィクトールだけど、実は盾で俺を助けてくれた後も、上に戻れないか魔術を死ぬ程試したし、この洞窟を見つけたのも、魔獣が来ない様に結界を張ってるのもヴィクトールだ。何なら俺の方が…ってか俺は何もして無いな!!


「おい!死ぬって!」


「…」


「嘘じゃん!?」


必死にヴィクトールを叩いて目を開けさせようとしてるけど、実は俺も視界が危なかったりする。割ともう目が開けてられないとこまで来てて、俺自身も死の気配を感じてる。


「おい…!俺も!寝んな!」


自分の顔を叩くけど、眠気は一向に覚めない。返事が無いヴィクトールの上に雪崩れ込むみたいに俺も体が倒れた。


「…あー…ねっむ…ごめんなあ、風華…」


「兄さん!!!」


「ヴィクトール!ライハ!生きてっか!?」


微妙に残った意識の中で、この世で一番大好きな声が、俺の耳に入った後に抱き起こされる感覚がした。あー、幻聴でも良いや。やっぱお前は天使だよ、風華…
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