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肆章 氷雪の国・スノーメイル

九話、私もまだまだ成長途中だよ

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「フウカ、煮込み具合はどうだ?」


「…良い感じだと思います。良い匂いですね」


「嗚呼、この調子なら無事に作れそうだな」


今、私はヴィクトールさんとお料理をしてる。ヴィクトールさんはお魚をフライパンで焼きながら、私の方に声を掛けた。私はトマトシチューの煮込み具合を見ながらサラダを作ってる。


「フウカは相変わらず手際が良いな。一緒にやっていて楽しいよ」


「ありがとうございます。料理は母様と師匠に教わりましたから。それに、皆に喜んで貰えるのが嬉しくて、上達していった感じですね」


「良い事だ。いつか、ロゼルさんを吃驚させると良い」


ヴィクトールさんが優しい笑みを浮かべてる。そんな顔、絶対に兄さんには見せないよね。特別って感じがして嬉しいけど、私としてはもう少し仲良くしてくれても…って思う。


「そうだ、明日の鍛錬だが…フウカ、少し予定を変更しよう」


「変更ですか?」


「嗚呼、変わらず氷武の鍛錬をしようと思っていたが、気が変わった。攻撃魔法の訓練をするぞ」


私は驚きのあまり手を止めてしまった。だって今まで一度もヴィクトールさんは氷武以外での攻撃魔法は教えてくれなかったから。理由は、私が攻撃魔法に苦手意識を持ってたからって言うものなんだけど…


「氷武は、本来攻撃用途では無く威嚇射撃として使う。剣やナイフを作り出し、相手へ飛ばして相手の思考を止める。勿論攻撃にも転じられる魔術ではあるが、攻撃魔法としてはレベルが低い。だから、俺が教えられる攻撃魔法を教えようと思う。どうだ、フウカ」


「…是非お願いします。イーブルギルドと戦って、改めて私は攻撃する術を持っていないって思いました。勿論、兄さんみたいに攻撃ばかりでは駄目ですけど…でも、大切な人を守れるくらいには戦えるようになりたい」


「良く言った。ではその方向で行こう。中々ハードだが、着いて来られるか?」


ヴィクトールさんはテンションが上がったりすると挑発的な顔をして笑う。今がそう。意外とテンション上がってるんだね、ヴィクトールさん。


「勿論。師匠とヴィクトールさんの二人に教えて貰ってた時もある…絶対にどんな魔術でも自分の物にします」


「流石はフウカだ。これは俺の腕の見せ所にはってくるな。お前に相応しい美しい魔術を幾つか用意しておく」


「ありがとうございます、ヴィクトールさん」


氷武の鍛錬も勿論やるけど…でも、ヴィクトールさんか攻撃魔法が学べるのは凄く大きい…セルシウスを助ける為にも、師匠を見つける為にも…何より大切な人達を守る為に…気合い入れて頑張らないと!
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