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参章 芸術の国・アーティオン

四十一話、負けるか馬鹿が

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「どうしたんだい、ライハ!避けてばかりじゃないか」


「お前がナイフぶん回すからだろうが!」


そう言いながらも、俺は剣でナイフを受け止めて、空いた隙に攻撃を入れるも躱される。ウザいが!!


「チッ…!」


「おやおや、玉砕かい?」


一気に距離を詰めて、ナイフと刀を切り結ぶ。力押しならいけると思ったけど、流石に大人の奴は無理か!?


「ライハさん!」


「んだよエアル!取り込み中だ!」


「マキアさんをこっちに連れて行っても構わないかい!?敵の増援だ!」


「おっけ!ついでにシュピーゲル達も連れてってくれ!守りながらは流石にキツい!」


視界の端で、マキアが二人を連れてエアルの方へと移動していくのが見えた。切り結んでて良かったわ。エアル達の妨害されなかったし。


「一人で私に勝つ心算つもり?無理だよ。ライハ」


「煩えよ。元々俺は一人でお前を処す心算で来てるわ」


「本当に威勢が良いね。君達は」


埒が明かないから、一回切り結んでたのを解いて、もう一回距離を取る。ナイフを弾いて、手から離させれば勝ちだ。兎に角やるしかねぇ。


「サラマンダー!蛍火!」


低威力の蛍火をサラマンダーに連射して貰ってその中を一気に突き進む。一応俺に当たっても普通に火傷する。ある程度の耐性はあるけど、するもんはする。


「ガラ空きだぜ!!」


「君は流石に手強いねッ!」


当たる寸前で防がれて、また距離を取る羽目になった。反射神経バケモンなんなだけど此奴。仕方ねぇな…俺調節苦手なのに…


「なあデュース、何で俺が此処まで全然神力使わなかったと思う」


「そうだね、不得意なのかな。風華と違って、君は物理の方が得意みたいだからね」


「まあ、そうな。それもある」


俺は、最初に打った百雷と今の蛍火以外、神力を使ってない。それには理由がある。簡単な理由がな。


「だけど、一番の理由は、俺が加減出来ねえからだよ」


「加減かい?」


「俺はさ、常に火力が高すぎんだよ。通常だったら、肉を軽く焼けるくらいの威力の筈の蛍火で、俺は毎回炭に変えてた」


懐かしいなあ…師匠が毎回怒りながら戻してくれてたよ。未だに出来る気はしないけどな!


「つまりさ、ガチで殺す可能性ある訳よ。雷に炎って殺意マシマシだからさ。教会の中じゃ、彼処破壊するからあんま使えなかったけど、此処は外。自由に使える」


「…成程ね…それは確かに…」


「俺、殺しはしたく無いんだよ。お前等と同じに何てなりたくねぇからさ。でも、風華を狙うなら話は別だ。死なねぇ程度の加減なら多分出来る。少し火力を下げる事は学んだ。だから…耐えてみろよ!俺も全力出すからさ!!」


俺の全力に応える様に、ヴォルトが辺りを飛び回る。雷に耐性あるなら、こっちのが良いだろうからな!


「落ちろ…紫電雷!!」


紫色の雷が、轟音と共にデュースの近くに落下した。直撃は避けたぜ?流石にな。
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