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参章 芸術の国・アーティオン

三十四話、何だ!?緊急事態か!

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「フウカ、ライハ、あの後何事も無かった?」


「おう!すぐに俺達を逃してくれたお陰だ!ありがとな」


「無事じゃったなら、何より」


教会の食堂で、キャシーとシュピーゲル、それからシャーリー達と談笑する。風華も少し顔色良くなってるし、俺も肩の力が抜けた。


「そう言えば、朝言っていた事だけど…」


「嗚呼、皆にも意見が聞きたい」


「…?兄さん何か言ったの?」


「ん?あ、風華には言えて無かったな。今後の事を相談したんだよ。昨日の事含めてな」


風華は納得した様に頷いて、俺の話の続きを待っていた。賢い。


「…アタシは此処に残るのは反対よ。昨日から更に街がギスギスしてる。それにライハに見せて貰ったあのギルドマーク…偶に見かけるし、アタシとしては早めに此処を出た方が良いと思うわ」


「儂は君達の意見を尊重しよう。此処を出るのも、君達自身を守る選択じゃ。勿論残ると言う選択肢も、君達には知る権利があるからの」


「…私達としては、何方でも対応出来る様にするわ。国を出るにしても、次の国まで安全に送り届けるし、残るにしても最大限協力する。だから好きな方を選んで頂戴」


風華も俺も言葉がすぐには出てこなかった。まだマキア達が調べてくれている途中で、せんせー達が何処にいるのかも分からないから。


「シャーリー!」


「どうしたのエニシャ。そんなに慌てて…」


「大変なの!外に…!」


慌てて食堂の扉を開けて入ってきたエニシャの額には汗が滲んでいて、肩で息をしてた。外で何かあったのか?


「落ち着いて、ゆっくり話して」


「え、ええ…マスターが魔力を感知したって仰ったから、私が見に行ったの。でも、居たのは魔術師の人じゃ無くて、朝、ライハ君に見せて貰ったギルドマークのローブを着た人達が居たの…それで…それで…!その中に…デュースが…デュースが居たの…!」


言葉を失った。デュースと言えば、人の良い笑みで俺達を案内してくれたり、色々教えてくれた彼奴だろ?何でその中に…


「人違いって事はないの?」


「確かに見ました…でも…そうよね、人違いかもしれないわ」


「兎に角見に行きましょう。二人は部屋に…いえ、マキアさんとレオン君を連れて此処に居て頂戴」


取り敢えず俺はマキア達を連れて来ないとな。多分気付いて無い…いや、マキアは気付いてるか?いいや、行けば分かる。


「儂はエアルを呼んで来よう。キャシー、彼女を頼んだぞ」


「分かってる」


俺達は即座に動き出した。風華は俺を引き留めようとした手を下ろして、その場に立ち尽くしていた。悲しげに俯かせている顔を見ると、俺も罪悪感で死にそう。大丈夫だ、すぐ戻るからな!!
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