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参章 芸術の国・アーティオン

三十三話、兄さんのご飯、美味しいよ

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「おはよう…」


「お、起きたか風華!おはよう」


「フーカ、寝坊助だな!」


何やかんや昨日は遅くまで兄さんと話してたから起きるのお昼くらいになっちゃった…ふあ…まだ眠い…


「腹は?」


「空いた」


「ん、なら風華の分も盛り付けるな!」


珍しく兄さんがキッチンを忙しなく動き回っている。炒飯やスープの良い匂いがする…って言うか兄さんって意外と私の知らない料理とか知ってて手軽に作れるやつを作ってくれるんだけど、何処で知ったんだろう…?


「はい、お待たせ。炒飯に卵スープ、あと野菜な!」


「ありがとう、兄さん」


「オマエ料理出来たんだな」


兄さんの料理は簡素だけど、優しい味がするんだ。凄く安心する味。


「頂きます」


「おう!沢山食えよ」


「兄さん、マキアは?」


辺りを見回しても、居る筈のマキアが見当たらない。何処かにお出掛けしてるのかな?


「マキアは早めに飯食って、俺からの頼み事をやってくれてる。多分部屋にいるんじゃないかな」


「そっか…」


「オレサマも早く戻ってマキアのお手伝いをするんじゃ!」


張り切るレオンの頭を撫でて、私も炒飯を口に運ぶ。うん、やっぱり凄く優しい味。


「私、兄さんのご飯好きだよ」


「マジで?風華みたいなのじゃないぞ?簡素で男飯!ってやつくらいしか出来ないし」


「男飯が何かは分からないけど、私はこの味が好き。優しくて、凄く安心するの。母様とはまた違う味だけどね」


母様の料理は、あまり食べれなかったけど、それでもとても美味しくて温かかったのは鮮明に覚えてる。あまり無い食材を三人分にして、皆で食べて…懐かしいな…師匠は、私に沢山料理を教えてくれたっけ…色んな国のお料理を作れる様になる度に、凄く褒めてくれて…


「それなら俺も定期的に作るよ。取り敢えず、さっさと食って、キャシー達に会いに行くぞ。心配だしな!」


「そうだね」


割と食欲無いなと思ってたけどそんな事も無くて、ちゃんと食べれてる事に安心した。多分また兄さんは私のだけ味を調整してくれたんだろうな…私は薄い味が好きだから…それを調整してくれるから、私もちゃんと食べれる。本当に感謝しかない。


「うん、やっぱり美味しいよ」


「風華にそう言って貰えるなら、安心だな!味は大丈夫か?濃くない?」


「うん、丁度良いよ」


私の返答に兄さんは安心した様に頷くと、再び炒飯を掻き込み始めた。その横ではレオンも炒飯を一気に掻き込んで食べてる。喉に詰まらせそうで心配だけど…私も早くキャシーさんとシュピーゲルさんに会いたいし…少し急いで食べよう。
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