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参章 芸術の国・アーティオン

三十話、これからマジでどーしよ…

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「…マジかよ」


「残念ながら全部本当の事だ」


「分かってんよ…あああ…情報量…」


風華がエンジームでも見たイーブルギルドの奴等が此処にも居て?その狙われる対象風華がドンピシャで?何なら俺も狙われる可能性あるから…嗚呼もう!脳がバグ起こす!!


「所でフウカはどうしたんだい?」


「寝た。少し一人になりたいらしい」


「そうか…ライハ、君は先程居なかったが何処に行っていたんだ?」


嗚呼、此奴にはシャーリー達と居る事は言ってなかったな。結構長い時間話しちまって、風華が血相変えて来た時は驚いた。


「世話になってるギルドの人達と今日の事を話してたんだ。ちょっと色々あってな」


「ふむ…色々とは?」


「あー、まあ、隠しててもしゃーないか」


俺はアデルバードに今日の出来事を話した。ついでにこれまでの事もな。アデルバードは茶化す事なく、真剣に俺の話を聞いていた。


「そんで、俺達の間で出た結論が、誰かが嘘を垂れ流してるって事だ。間違い無く風華のショーで怪我人は出なかった。すぐに騒がれなかったし、何より俺達よりも鼻が良いレオンも匂いは何もしなかったって言ってたからな」


「成程…一つ可能性があるとすれば…だ」


「何だよ」


アデルバードは言い難そうに口を閉じたり開いたりしてたけど、すぐに真っ直ぐに俺を見つめて口を開いた。


「炙り出しだ」


「炙り出し?何を?」


「今日の魔法のショー、フウカは高度な魔術を何か披露したか?」


風華が使ってた魔術…いや、大掛かりに見えて実は簡単な魔術を応用してる事が多い筈だ…けど、それは俺から見てるからか…?あ…


「…無機物に属性を付与する魔術」


「他には何を?」


「マキアが記録を撮ってくれてるから今送って貰う。マキア!出来るか?」


ずっと空気を読んで黙っていてくれたマキアはOKサインを出して、アデルバードへと今日のショーのデータを送ってくれた。有能。


「これか…」


「ありがとな、マキア」


「いえ、これくらいの事しか出来ませんから」


アデルバードは真剣に映像に目を通していた。そして多分全部見終わった瞬間にゆっくりと言葉を紡いだ。


「まず、フウカは狙われた。これは間違いないだろう」


「何で!?」


「フウカの魔術は確かに高度な物は無機物への属性付与しか使われていない。しかし問題はこの精度だ。例えば氷の百合の花弁を本物に変換する…これは物質変化魔術…中級くらいの魔術だが、一度にこんなにも正確に出来るものでは無い。技術、魔力…平均してもこの歳での魔術師の中でフウカはトップクラスだろう」


そりゃそうだろ。風華は本当に凄いからな。でもそれとこれで何の関係があるんだ?


「分からないかい?この国の民達は、フウカが怪我人を出したと言う噂を信じて彼女を探すだろう。そして居場所がバレれば、噂を流した元凶がフウカを見つける。つまり…」


「狙われたから…噂が流れた」


「その通りだ。これからどうするかは君達に委ねよう。国を移るでも、調査を続けるでも良いだろうからね。調査を続けるなら私達もサポートをしよう。今はゆっくり考え給え」


アデルバードとの通信が終わって、静寂が部屋を包んだ。心配そうなマキアの視線を背中に感じながら、俺はただ目を瞑って明日の事を考えていた。とりま脳が爆発しそう…
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