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参章 芸術の国・アーティオン

十四話、落ち着かないね。こう言うの

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「フウカ様、お疲れではありませんか?」


「うん、平気。マキアこそ大丈夫?ずっと宿を探してくれていたんでしょ?」


「私は魔導人形ですから、疲弊はありません。しかし…この国の人々はどうしてあんなに魔術師を嫌っておいでなのでしょうか…」


異常な程の嫌悪…初めて向けられたものでは無いけど、久し振りだったから身体が過剰に反応しちゃったけど、やっぱり嫌なものだね。


「こう言う所は珍しくないよ。逆に今までが友好的すぎたんだよ。ジャック達も、アデルバード達も…普通怖いもんね…自分が持たない力を持った人」


「フウカ様…」


「また街に出るのは楽しみだけど、兄さんが心配だな」


私の事を悪く言う人がいたら、私よりも怒るんだもん。その人に殴り掛かったりしないか心配してる。


「でも、本当に厳重に隠されてるんだね。シャーリーさん達が連れて来てくれた時吃驚しちゃった」


「隠し扉でしたもんね。それも巧妙に隠されている…衣食住には困らなそうです」


「私達は出たら魔力でバレちゃうもんね」


さっきまで、エニシャさんとシャーリーさんのお手伝いをしてたんだけど、あんまり居すぎると魔力が漏れ出ちゃうからって、私達は早々に隠し部屋に入った。結構広くて綺麗。


「お辛くありませんか?私は魔導人形ですからまだあまり感情はありません。しかしフウカ様は人間であり、心優しい魔術師です。こんなにも優しい貴女が責められているのは…」


「ありがとう。その気持ちだけで嬉しいよ。マキアも嫌な事があれば言ってね。大丈夫、久し振りだっただけで、人からの罵詈雑言とか嫌な視線とかは慣れてるから」


「それは一体…」


あー、簡単にしか話して無かったっけ。記憶曖昧だな…濃い出来事が多すぎて。


「私達が育った集落って、此処より酷かったから。御使である私達はこの妖の子って言われてて、忌子として扱われてた」


「…ジャックは言ってました。御使様はとても大切にされなければならない存在だと。なのにどうして」


「それは分からない。でも、良い扱いは受けて無かった。母様も空に還って…父様は顔も名前も知らなくて…でも私達は世界を見たかったんだ。私達と同じ御使も、それを取り巻く環境とか、私の知らない魔術とか…」


改めて話すと、本当に行き当たりばったりで旅に出たよね。私達。あの時師匠に出会わなかったらどうなってたんだろ…師匠…何処に居るのかな…会いたい…


「…守ります」


「え?」


「私がフウカ様とライハ様を必ず守ります。あの日…お二人は私とジャック…そしてスタディアを救って下さいました。そして私にも世界を見せてくれている…私がお二人の道行を邪魔する者を排除します」


…マキア、心強いけどちょっと怖いかも…
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