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弐章 蒸気の国・エンジーム

四十話、きっと君達なら大丈夫

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「ライハ、フウカ。最終日の夜に済まないが話がある」


「ん、昼に言ってたやつな。俺は平気だ」


「私も。マキア、レオンを見てて」


「かしこまりました。行ってらっしゃいませ」


寝ているレオンをマキアに預けて、私と兄さんはアデルバードの後ろを着いて行き、ギルドマスタールームへ向かう。


「座ってくれ。紅茶でいいかい?」


「うん、お構いなく」


「俺も何でも」


私達の返事に頷いて、アデルバードがティーカップに紅茶を注ぎ始めた。ベレッツァのギルドマスタールームはキラキラしてるけど、何だろう…派手すぎず、でも高貴って感じがする。アデルバードらしい部屋なんだよね。


「…二人に話したい事は、今回の件についてなんだが…いや、単刀直入に言おう。ライハ、フウカ。改めて我々ベレッツァに入らないか?今回君達と行動して更に君達が欲しくなった。それに…」


「んだよ」


「君達は今回の件でかなり国中に名前や顔が広まった。イーブルギルドにも狙われるかもしれない。そうなったら…私は耐えられない」


悲痛そうな表情のアデルバードが私達に訴えてる。確かに…あの記者達の人達が記事を作ってから、私達に向けられてる視線が変わってきてるのは分かってたけど。


「大丈夫」


「フウカ?」


「私は大丈夫。そろそろエンジームも出るし、何より私達は旅をする為に此処にいる。こんな風に求めてくれて嬉しい。でも、頷けない」


初めて会った時は変な人とか、強引な人だって思ったけど、この二ヶ月くらいで優しくて思いやりのある人だって分かった。だから、しっかりと断りたい。


「そうだな。イーブルギルドの件に関しては、調査とかに協力出来なくなるから歯痒いけど…別に連絡が取れなくなる訳じゃねえ。俺達も他の国で情報手に入れたら其方にも教えるさ」


「フウカ…ライハ…そうか。変わらないな。君達は…いつもこの私の提案を突っ撥つっぱねてくる」


「それでも諦めないもんね、アデルバード」


アデルバードの表情が緩んで、私達の口角も上がる。うん、やっぱりベレッツァの人達と会えて、一緒に生活出来て楽しかったな。


「二人は次は何処に行くんだ?」


「ん?俺達はレオンを送り届けるついでに、近くにある国に寄ってくよ」


「ベレッツァはどうするの?」


私の問いに、アデルバードは頷いて、穏やかな顔で話し始めた。


「国の復興の続きと魔獣による被害の事後ケアにイーブルギルドの監視…君達が居なくなった後の方が忙しいな…本当に君達は心強かった」


「そう言ってくれると嬉しい」


「仕方ねぇから、本当に困った時は助けに来てやんよ」


もう、素直じゃないんだから…でも、二個目の国も…とても素敵で良い所だったな…うん、楽しかった。


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