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弐章 蒸気の国・エンジーム

二十四話、進展は無し…かな

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「…疲れた…」


「お疲れ様です。休憩しますか?」


「ううん、此処の範囲だけは調査終わらせちゃうよ。ジャックも良い?」


疲労が溜まった私をジャックとマキアが気遣ってくれるけど、流石に私ばっかり休む訳にはいかないからね。兄さんには言わないって決めたのは私だから、しっかりやんないと…


「分かった。でも此処が終わったら休もうね。君が倒れたらライハ君にドヤされちゃう」


「そうだね。最近面倒くささに拍車掛かってるし…」


「あはは、ライハ君は相変わらず心配性だね」


心配性のレベルを超してると思うんだよね。アレは…まあ、母様亡くなっちゃったし、父様はいないも同然だし…仕方はないのかもしれないけどね。


「最近こっちがバタバタしててあんまり近況聞けてないんだけど、どんな感じ?」


「今は大きく三つに分かれてるよ。まず、ボアの出現場所に行って追い払う討伐班に、そのボアに関して調べてる調査班、それからイーブルギルドの動向を調べる捜査班。討伐班には兄さん、調査班に私とジャック、アデルバードは討伐班と捜査班を兼任してる」


「成程…そうだよね。ボアを倒して呪いを食い止めたとしても、イーブルギルドが蔓延はびこってる事に変わりないんだ。すっかり失念してたや」


イーブルギルドがあんまり派手に動いてないから、今はボアの調査、討伐に集中出来てるけどあっちまで活発に動き出したら流石に人員足りないもんね…はあ…面倒…


「…あ、魔獣反応の位置は此処だけど…ハズレだね。あれは大人しい魔獣だよ。こっちから攻撃しない限り襲ってこない」


「そっかあ…兎に角休憩しようか。お疲れ様、フウカちゃん」


「うん。ん?」


あの魔獣…見た目からしてアクリスだけど…何か警戒してる?どうしたんだろう…?


「…!?弓矢?」


サクッと音がして、アクリスの足元に一本の矢が刺さった。アクリスが驚いて体制を崩して倒れる。もしかして…密猟者…?アクリスは後肢に関節を持たないから、一回倒れると起き上がれない!


「誰!?」


「フウカちゃん!?」


居ても立っても居られず、倒れ込んだアクリスの前に立ち塞がった。弓矢が飛んできた方向に杖を向けて、ローブのフードを深く被って。


「マキア、人の気配は?」


「…五十メートル先に生体反応を確認」


「マキア、警戒を。フウカちゃんも」


何か…嫌な感じがする。ピリピリする感じ…この感覚は、あの集落に居た時の感覚と似てる…だったら私に向けられてるこれは…嫌悪…それか…


「殺気かな…良かったね、兄さんが居なくて。居たら即斬り掛かられてたよ…」


勝手に冷や汗が流れて、手と足が震える。進展無いと思ったけど、もしかしたらあるのかもしれないね…
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