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弐章 蒸気の国・エンジーム

十二話、全力疾走まで五秒前!!

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「フィアスボアの大群!?」


「それだけじゃない…奥に…!」


フィアスボアの群れの奥には、群れの頭だと思うんだが、巨大な猪の魔獣の姿があった。デッカ!!?


「何あれ…」


「此処はボアの出現範囲外の筈…!まさか此処まで侵食してきているとは…」


「どうするだ!この先は街があんだろ!?」


ボアの群れは真っ直ぐ街へと直行してる。普通に戦えねえ奴も居る街の中心部にあんなデカブツ…しかも凶暴化してる魔獣が現れたら大惨事なんて生易しいもんじゃねぇぞ!!?


「フウカのさっきの風で飛ばす事は出来ないのかい!?」


「通常サイズなら出来ると思うけど、あのリーダーみたいのは流石にあの程度じゃビクともしない!」


「風華!水は!?」


水なら風よりも押し流せる確率高くないか!?体力も奪える可能性もあるし!!


「分かった!やってみる!」


風華は杖に手を添えて、詠唱を始める。流石にこんな大人数の前で神力は使えないからな。いざと言う時は使うって言ってたけど、これくらいなら、神力じゃなくて、普通に魔術で出した方がコスパも良いからな!!

風華の頭上に現れた青色の魔法陣から大量の水が流れ出し、ボア達へと向かった。かなりの量だ。多少は足止め出来るんじゃ…


「駄目だ…やっぱりリーダーが固すぎる!」


巨体のリーダーの後ろにボア達が続いてやがるな…!これじゃあ全部一番前のリーダーに弾かれて終わりかッ。


「おい!俺の剣返せ!足止めくらいはしてやるからよ!」


「兄さん危険だから。あんなのに突っ込んで行ったら即死だよ」


「じゃあどうすればいいんだよ!」


風華に詰め寄った俺の頬に軽い衝撃が走った。ペチンと風華が俺の頬を叩いたのだった。え、可愛い。


「一回落ち着いて。私も落ち着く。兄さん、私達が足止めしてる間にマキアを連れて来て。マキアの電気を使った攻撃なら効くかもしれないから」


「でも、こん中で俺が一番火力出るのに…」


「近接は無謀だよ。今回ばかりは遠距離で何とかしないと危険過ぎる。私は兄さんの足の速さを信じてるの。街を守る為だよ。行って」


風華の目が真剣に真っ直ぐ俺を見つめた。うっそんな顔されたら断れる訳ねぇもんな。それにこう言う作戦は風華に従った方が上手く行く。


「分かった、五分で戻ってやる」


「信じてるからね」


「フウカ、取り敢えず勝負はお預けだ」


ナルシ野郎の言葉に頷いて、風華はそのまま前を見据えた。カッコいい…


「私達が絶対時間稼ぐから。兄さんは兎に角走ってマキアを連れて来て。それで上手くいかなくても、ジャックと協力出来る」


「嗚呼、任せとけ」


風華が頷いたのを確認すると、俺は一目散に宿へと走り出した。兎に角俺は…走れええええええ!!!!!
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