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壱章 始まりの街・ステンリア

三十一話、本当にお前はそれでいいのかよ

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「ごめんね二人共。態々来てもらっちゃって…あ、お茶ね!」


「さんきゅ」


「ありがとう」


今日は何にもない暇な日だったけど、急遽ジャックに呼び出されて、俺達は今スタディアのマスタールーム?らしい場所に居る。あ、お茶美味い。


「えっと、二人はもう次の旅の行き先は決まってるの?」


「ん?別に決まってねえけど、それがどうしたんだよ」


「ほら、ギルドを守ってくれたお礼にボク達も二人の手助けをするって約束したでしょ?だから、準備はしてるんだけど、もうすぐ行くのかなって思って」


あー、成程な。別に手助けとかいいのにな。変に負担になる事やんなくていいんだけど。まっ楽にはなるから有難いんだけどな!!


「それでさ、相談なんだけど」


「ん?どした」


「マキアを一緒に連れて行って欲しいんだ」


ジャックの一言に俺と風華の挙動が止まった。俺は口をあんぐり開けて、風華はティーカップとソーサーを持ったまま固まっていた。無理もないよな!?


「は?え、お前。自分が何言ってるか分かってんのか?第一にギルドの奴とマキアは了承してんのかよ!?」


「そ、それは勿論だよ!ボク達はマキアにいつか、広い世界を見せてあげたいと思ってる。でも…今回の事件で確信した。今のボク達じゃそれは不可能だって」


ジャックの目は、ゆらゆらと揺れていて、悲しそうに顔を伏せた。泣きそうなんだが此奴…


「ボクは…マキアの一番近くにいた筈なのに…守るばかりか守られて…それにこの先二人がまた旅に出てボク達がサポートしてる間にまた輪廻石を狙う奴等が来たらボク達は今度こそ…」


「でも、それとこれとじゃ私達にマキアさんを連れて行って欲しい理由としては不十分だよ」


「うん。分かってるよ。自分の無力さは理解した。でももう一つ思い付いた事があったんだ。マキアには沢山の知識や機能がある。これから更に学習する。でも、此処ステンリアだけだと、彼女の学習には限界がある」


俺達に目を向けると、ジャックは真っ直ぐに頭を下げた。は?お前何してんの!!?人入って来たら俺達死ぬんだが!?


「マキアの更なる成長と、キミ達をより手厚く手助けする為に」


「…成程な。確かにマキアくらいの奴からしたら、沢山の知識を得る為にこの国一つじゃ小さいわな」


「じゃあ!」


喜んで口を開いたけど、その先はまだ言わせない。何故って?まだ俺のターンだからだよ!!


「お前は本当にいいのかよ。開発者」


「…ッ」


「俺達はお前等全員が了承してんなら連れてくさ。マキアは俺達にとっても力になるし心強いしな。だが、お前はマキアの親だろうが。お前が全力の笑顔と応援で送り出せなきゃ、それはお前がまだ了承してねぇってこった」


親って言うのは大切なんだわ。それが種族違いでも、もう会えなくてもな。


「…五日後にステンリアを発つ予定だ。それまでに俺達は別れの挨拶に回る。最後にまた此処に来るから、その時に答えを聞かせろよ。ちゃんとマキア子どもお前の気持ちに向き合え。それで出た答えなら、俺達は否定しねぇよ」


「ゆっくり考えて。じゃあまた五日後」


俺達は言うだけ言って部屋から出る。キツく言い過ぎたか??でもやっぱ…親にはさ、笑顔で全力で送り出して欲しいもんじゃん?…俺達には…無かったらけどさ…集落を出て行く時も…この旅に出る時も…大切な家族の姿はさ…それってさ、友達に送り出されても…ししょーの姿が無いのは寂しいんだぜ…?
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