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壱章 始まりの街・ステンリア

二十五話、護る為の攻撃

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「はっ…はぁ…は…此処まで来れば大丈夫かな…大丈夫、直ぐに治してあげるから」


未だ傷が塞がらないノームはグッタリと目を閉ざしたまま…大丈夫、血は止まってるから…このまま回復魔法を掛け続ければきっと助かる。


「大丈夫…大丈夫だからね…シルフもウンディーネも大丈夫…絶対に治すから」


契約してくれてる精霊達も不安気にノームを心配する声を上げてる…そうだよね…私が何とかするからね。


「少し顔色も良くなった…ふぅ…あ、魔法障壁忘れてた…我ながら不用心…」


杖を地面に叩き付けると、私とノームを包む様に魔力の壁が造られる。うん、これで安心…だけど、彼奴は何だったんだろう…宿屋に帰ったら、一回調べてみないと…


「ん?何?兄さん来たの?」


精霊達が忙しなく私を振り向かせようとしてるけど…今ノームから目を離すわけにはいかないし…それに不審者だとしても障壁を壊すには時間掛かるし…ぇ…?


「嘘…障壁に…ヒビが入ってる…しかも…あのガルムみたいな魔獣…一体じゃなかったの…?」


私の視線の先には、師匠や兄さん、ヴィクトールさんすら破るのに苦労していた魔法障壁に牙を使ってヒビを入れているあの魔獣の姿があった。あ、手が震えてる…足も…


「…ッ!この場に踏み込んだら容赦なく貴女を攻撃するから…!嫌なら退いて!」


やっぱり聞く耳を持たないし、此奴の目は私を写してなんかいなくて、一心にノームを見つめてる。ノームを…殺す気でいる…

怖い…私の魔法で人であっても魔獣であっても命を奪ってしまうのが怖い…だからいつも攻撃系の魔法は無意識にリミッターが掛かっちゃうけど…精霊は私達の家族で…大切な相棒…この子達を傷付けるなら…容赦なんてしたくない…


「…入ったね…残念…氷武グラースアルム・造形…ソード…!」


氷で作られた剣が次々に其奴に刺さる。さっきみたいに粒子になって再生はしてるけど、攻撃速度と量は私の魔法の方が速いから着いて行けてない。うん、これなら行ける…!


「造成…!コフィン!」


粒子になった所を狙って、氷の棺に閉じ込めたけど…うん。良かった…出れないみたい。後はこれをどうするかなんだけど…


「ん、どうしたの?もう彼奴はいないよ。え、目が覚めたの?分かった。ありがとう」


シルフがノームが目覚めた事を伝えてくれた。良かった…一安心だね。でも…急に話しかけて大丈夫かな…


「こんにちは。ノーム。怪我の具合はどう?何か違和感や痛みは無い?そう。なら良かった。大丈夫、貴方を傷付けた奴は其処の棺の中で眠ってる。もう心配ないよ。ふふ、当たり前でしょう?私達は精霊が大切で大好きなんだ」


きっと側から聞けば、ノームの言葉は土を踏み締めた様な音に近いけど、言葉は伝わるし伝わってる。彼は優しい。怖がらずに普通に接してくれてるけど…兄さん…大丈夫かな…
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