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壱章 始まりの街・ステンリア

三話、お前何してたん!!?

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「助かったよ。ありがとうね」


「いえ、お力になれて良かったです。それではまた」


「またいつでも声掛けてくれよ!」


魔獣討伐以外の依頼は、畑の手伝いで幕を閉じた。これから依頼場所の森に移動すんだけど、この爺ちゃんと婆ちゃん凄く良い人でな!!報酬と自分の畑で採れた野菜と果物くれたんだ!前にも言った通り、風華の神力は、畑仕事に意外と向いてるからな!!喜んでくれてたぜ!


「無事に終わって良かったね。子供達も良い子だったし、荷運びもスムーズに終わって」


「おう!魔獣討伐の体力も温存出来たし、ちゃちゃっと行って、ジェンキンスのオッサンに御褒美貰おうぜ!!」


「そうだね」


えーっと…地図に寄ると…


「風華、北ってどっち??」


「えっと…うん、こっち」


風の精霊は方角も教えてくれる良い奴らだ。こう言う時は、正確に聞き取れる風華に聞くのか一番の近道だからな!!


「にしても、やっぱこう言う冒険者が集まる街にも、魔獣って出るんだな。少し魔獣の特性とか、この先知らないと不便かもしれん」


「そうだね。私達が知ってるのは、本で見たのと、家の森の中にいた魔獣だけだし…こっちとあっちじゃ強さも凶暴性も違うだろうから」


「だなー。兎に角、この辺りなら普段通り行けば大丈夫だろ!!俺達は最高のコンビなんだからな!」


双子は以心伝心と言うが、俺達の場合はそうでは無い。何を考えてるか何て分かる方が稀だ。俺達は、兎に角俺が突っ込んで、それを見て風華が援護をしてくれる。近接が得意な俺と、後方支援と魔術が得意な風華だから、割と良い感じに成り立ってるのが現状だ。


「お、看板発見!!この先、ユーリエの森…風華!場所は此処か?」


「うん。ユーリエの森に出現する、蛇型の魔獣討伐…このまままっすぐだね」


「て事はやっぱサーペントか?彼奴等急に噛み付いて来るから嫌いなんだよなー!」


蛇型の低級魔獣のサーペント。近付いて来たモノを見境なく襲う凶暴なヤツだ。まあ、それも地域によるんだけど…多分な。森に出てくる事も多くて、何回か追っ払ったんだけど…彼奴等引っ込んだと思ったらガッて急に来るから本当無理なんだよな…何回か毒にやられて風華に助けられた…嫌な思い出だ…

そんなこんなの間にも、俺達の足は森を進んでいた。木漏れ日が暖かくて、鳥の鳴き声も聞こえる森林浴には持って来いの綺麗な場所だった


「空気が綺麗…シルフ達も嬉しそう」


「そうだな。なんだ、サラマンダー?日向ぼっこでもしたいのか?」


精霊には人と同じく種族があって、一人一人性格も特性も違う。だから俺達は成るべく此奴等とコミュニケーションを取る。何が嫌で何が好きなのか。どこから来たのか。俺ははっきりとは言葉は分からねぇけど、嬉しそうなのは伝わってくるんだぜ!


「もう少し奥か?静かだし、居なそうだけど」


「…兄さん、可笑しいよ。さっきまで聞こえてた鳥の鳴き声が止んだ…構えて。来るよ」


「…!さっすが風華!俺一人だったら死んでたよ!!」


せんせーから貰った剣を構えて、俺は前を見据える。数歩後ろには、糞野郎ヴィクトールから貰った杖を握り、前方を注意する風華が居る。


「さあ、どっからでも来い!!」


遂に、茂みがガサガサと派手な音を立てて揺れ出した


「来たか!!」


この剣は初めて振るうから自然と口角が上がって来やがる…あ、戦闘狂じゃねえからな!?


「た、助けてーー!!!」


「はあ!?」


予想に反して、茂みから飛び出してきたのは、サーペントでは無く…


「はあ!?男!?何だよお前!!」


「人…?やったぁ!!ボク助かったんだね!」


情けなく涙を溜めた一人の男だった。はあ!?意味が分かんねぇよ!!


「兄さん!警戒を緩めないで!来るよ!」


「チッ、お前風華の近くでジッとしとけ!!」


後で事情はたっぷり聞くからな!?
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