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零章 祝福された呪いの双子

十三話、視点によってタイトルを言う人が変わるんだって。兄さんが言ってたよ

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「そこまで。少し休憩しなさい」


「…はぁ…はぁ…はい…」


ヴィクトールさんの元で学ぶ様になって早一年が過ぎた。師匠からの課題と並行して、ヴィクトールさんにもしっかりと教えて貰ってる。


「最初に比べて威力もしっかりと上がっているな。コントロールも相変わらず洗練されているから、このままならしっかりと氷の神力も物に出来るだろう」


「ありがとうございます」


氷は精霊の皆の誰かに力を借りるんじゃなくて今私に力を貸してくれてる水と風の精霊の力を混合させて使ってる。少し難しいけど、慣れてくれば少しずつ使える様にはなってくる。今は医療魔法と氷の神力、あとは付与魔法を教わってる。師匠に医療魔法と付与魔法を。ヴィクトールさんに氷の神力を。少し医療魔法も教えてもらってる。


「大丈夫、フウカは飲み込みが早いからな。私が教えたものもきちんと全て自分の物に出来ている。胸を張るといい」


「…!はい!」


ヴィクトールさんは普段殆ど褒める事はない…らしいけど、実は私との授業では、かなり高頻度で褒めてくれてる。それを見たアビィさんが吃驚してた。


「フウカ。少し嫌な話になると思うが、耳を貸してくれるか?」


「…はい」


「有難う。フウカ、お前とライハの神力は、私から見てもとても稀有だ。これまで様々な国を渡り歩いて来たが、お前達の様に、一つの力を分け与えられた者も、精霊スピリットと言う神力も…お前達が初めての事例だ。歴史的に見たらどうなるかは分からない…が…恐らくロゼルさんがお前達を頑なに城下へ連れて来なかったのもそれが関係しているだろう」


「…私達は…狙われ易いって事ですか…?」


ヴィクトールさんの言葉である程度仮説はできたけど、怖いものは怖い。少し声が掠れたけどヴィクトールさんはゆっくりと頷いて、私の目を見つめた


「…フウカは理解力が高いな。それは分かり切っていた事だが…お前の兄はそう言った事に疎いし鈍いだろう。双子は兄妹とまた違う。助け合って行け。最も、お前達なら心配はいらないか」


「…そうですね。あの…ヴィクトールさん」


「どうした」


「どうして、私に魔法を指導してくれているんですか?それがずっと気になってました」


ヴィクトールさんは、兄さんの事を嫌ってるし何より私に指導をするメリットが何もない。だから不思議だった。親身に、とても熱心に教えてくれるから。


「ロゼルさんには世話になったと言うのが大きいが…興味を持ったのもある。私は、フウカの歳には魔術を習得していたが、師はいなかったからな。その大変さ、不自由さは分かっている心算だ。お前には、そうなって欲しくなかったんだ。我ながら呆れるがな。ロゼルさんにも、教えられるものの限界があるからな」


「…やっぱり、ヴィクトールさんは優しいですね」


「そう言うのは、ギルドの者とお前くらいだ。さあ、休憩は終わりだ。行けるな、フウカ」


「はい!」


まだ難しい事も…世界の事も分からないけど…今は自分に出来る精一杯を頑張ろう。それしか今の私には出来ないから。
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