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Majesty
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紫電を身に纏った千尋を前にしても初代有間、一陽は余裕の表情を崩すことはなくただ感心の声をあげた。
「その天力・・・俺に本気を出させるという言葉、ハッタリではないようだな。」
「天力・・・?」
"天力"という聞き慣れない言葉に千尋が聞き返す。
「俺たち有間家の人間は神性体質により神を身体に宿す、ゆえに魔力ではなく神の力である天力が俺たちの身体には流れている。」
一陽がいま話したことは千尋にとって初耳であった、現当主である道雪も先代当主である万歳も、天力という言葉を口にしたことは無かった。
しかし有間家の人間が持つ力を神の力というのであれば、姿絵の一陽が神仏のように描かれていたことにも頷ける。
「まぁ、些細なことだ。それよりも・・・」
「えぇ、続きですね。」
千尋は頷きファイティングポーズをとると大地を蹴り姿を消した、そして閃光と共に一陽の目の前に現れ拳を突き出す。一陽は首を傾けて躱すが千尋は文字通り光速で動き回り猛攻を仕掛ける、そしてここまで攻撃に対して回避しかしていなかった一陽は遂に千尋の拳を掌で受け止め防御した。
「どうです、本気を出す気になりましたか?」
「ぬかせ───!」
一陽は千尋の拳を押しのけ、蹴りを繰り出すが千尋は後方へと飛び退いた。そして左手で手刀を構え、姿勢を低くして走り出すと一陽の背後に現れる。反応した一陽が後ろを振り向きながら紅蓮の炎を纏った裏拳を振るうがそこに千尋の姿は無かった。
千尋は瞬時に一陽の正面に回り込んでおり、一陽が正面へ向き直した時には左手の手刀が一閃した。
「雷切───紫電!」
千尋の紫電を纏った手刀は一陽が鎧のように纏っていた紅蓮の炎ごと彼の身体を切り裂いた、傷口からは血が流れておりその不気味なほどの黒さに千尋は戸惑う。
「ふん、血なんぞ流したのはいつ振りか・・・」
そう言って一陽は傷口に手を触れ指に付着した血を眺めている、その表情は心做しか嬉しそうに見えた。
「いいだろう、有間の若き強者よ。その力を認め、星霊として本気で相手をしてやる。」
一陽が身に纏っている紅蓮の炎が火花を散らしながら紫炎となり瞬く間に紫色の光へと昇華した、そして光は一陽の号令と共に神仏の姿となり顕現する。
「"帝釈天"───」
その神々しくも威厳に満ちた姿に千尋は尋常ではないほどの威圧感を感じていた、そして閃光と共に一陽の姿が視界から消えると次の瞬間には脇腹に衝撃が走り千尋の身体は吹っ飛ばされた。
突然の事ではあったが自分がなぜ吹っ飛んだのか千尋は理解しており脇腹に走る痛みを堪えながらすぐさま立ち上がる、すると目の前に神性を身体に纏わせた一陽が現れ拳を構えた。咄嗟に後方へと飛び退くが瞬時に追いつかれ、千尋は防御の体勢をとった。
「安易に後ろへ退くな。」
その言葉と共に一陽は千尋に向けて拳を突き出した、紫電の鎧を纏っていてもその衝撃は凄まじく再び千尋の身体は吹っ飛ばされる、立ち上がろうとする千尋の前に一陽が腕を組んで立つ。
「なぜ俺たち有間家の人間が"双璧"と呼ばれているのかわかるか?」
一陽からの問いに千尋は言葉を詰まらせる、有間家と長門家に与えられた双璧という称号に対してあまり深く考えたことなどなかったのだ。
「そんなの、有間家の人間が力を持っていたから───」
「ならばその力をもってなにを成す?御前が退けば、後ろにいる者達に災厄の牙が近づく。臆せずに戦え、御前にはその力がある。」
初代有間、一陽の生きていた時代は戦乱の世であり敵は人間だけではなく、人々を食らう魑魅魍魎が跋扈していた。その中で彼は人々を災厄から守り双璧と呼ばれた、そんな一陽から送られた檄は千尋を奮い立たせるには十分すぎるものであった。千尋は力強く立ち上がり、再び一陽と対峙する。
「ありがとうございます、おかげで目が覚めました。」
「いい表情だ、それでこそ有間の次期当主よ。」
自身の威圧、帝釈天の威光にも怯む様子を見せず逆に威圧し返してくる程の気迫を纏った千尋に一陽は満足気な表情を浮かべた。
千尋と一陽はお互いに拳を構え、二人とも同時にその拳を突き出した。紫電と威光がぶつかり合い、それが始まりの合図かのように二人は両腕で拳の連打を繰り出す。風切り音と破裂音を辺りに響かせながら殴り合い、お互いに一歩も退く様子を見せない。
千尋は何発か身体に拳を受けたが痛みに耐えながら負けじと一陽の身体にも拳を叩き込んだ。一陽は久しく感じたことの無い痛みに一瞬僅かに表情を歪めるがすぐに楽しそうな笑みを浮かべ拳を振るう、千尋は一陽の拳撃の重さに後ずさりそうになるが必死に踏みとどまっている。
千尋は左腕に紫電を集中させ力強く拳を突き出した、合わさった一陽の拳を弾き彼の身体が仰け反るとその隙を突いて千尋は左手の手刀でまず一閃し、すかさず縦横無尽に移動しながら切りつけると最後に千尋が上に飛び上がった。
「雷切───紫電ッ!」
紫電を纏った手刀を真っ直ぐ振り下ろすと一陽の纏っていた帝釈天の鎧を、そして千尋が光速で移動した時に生じた稲妻の軌跡をも切り裂いた。
「その天力・・・俺に本気を出させるという言葉、ハッタリではないようだな。」
「天力・・・?」
"天力"という聞き慣れない言葉に千尋が聞き返す。
「俺たち有間家の人間は神性体質により神を身体に宿す、ゆえに魔力ではなく神の力である天力が俺たちの身体には流れている。」
一陽がいま話したことは千尋にとって初耳であった、現当主である道雪も先代当主である万歳も、天力という言葉を口にしたことは無かった。
しかし有間家の人間が持つ力を神の力というのであれば、姿絵の一陽が神仏のように描かれていたことにも頷ける。
「まぁ、些細なことだ。それよりも・・・」
「えぇ、続きですね。」
千尋は頷きファイティングポーズをとると大地を蹴り姿を消した、そして閃光と共に一陽の目の前に現れ拳を突き出す。一陽は首を傾けて躱すが千尋は文字通り光速で動き回り猛攻を仕掛ける、そしてここまで攻撃に対して回避しかしていなかった一陽は遂に千尋の拳を掌で受け止め防御した。
「どうです、本気を出す気になりましたか?」
「ぬかせ───!」
一陽は千尋の拳を押しのけ、蹴りを繰り出すが千尋は後方へと飛び退いた。そして左手で手刀を構え、姿勢を低くして走り出すと一陽の背後に現れる。反応した一陽が後ろを振り向きながら紅蓮の炎を纏った裏拳を振るうがそこに千尋の姿は無かった。
千尋は瞬時に一陽の正面に回り込んでおり、一陽が正面へ向き直した時には左手の手刀が一閃した。
「雷切───紫電!」
千尋の紫電を纏った手刀は一陽が鎧のように纏っていた紅蓮の炎ごと彼の身体を切り裂いた、傷口からは血が流れておりその不気味なほどの黒さに千尋は戸惑う。
「ふん、血なんぞ流したのはいつ振りか・・・」
そう言って一陽は傷口に手を触れ指に付着した血を眺めている、その表情は心做しか嬉しそうに見えた。
「いいだろう、有間の若き強者よ。その力を認め、星霊として本気で相手をしてやる。」
一陽が身に纏っている紅蓮の炎が火花を散らしながら紫炎となり瞬く間に紫色の光へと昇華した、そして光は一陽の号令と共に神仏の姿となり顕現する。
「"帝釈天"───」
その神々しくも威厳に満ちた姿に千尋は尋常ではないほどの威圧感を感じていた、そして閃光と共に一陽の姿が視界から消えると次の瞬間には脇腹に衝撃が走り千尋の身体は吹っ飛ばされた。
突然の事ではあったが自分がなぜ吹っ飛んだのか千尋は理解しており脇腹に走る痛みを堪えながらすぐさま立ち上がる、すると目の前に神性を身体に纏わせた一陽が現れ拳を構えた。咄嗟に後方へと飛び退くが瞬時に追いつかれ、千尋は防御の体勢をとった。
「安易に後ろへ退くな。」
その言葉と共に一陽は千尋に向けて拳を突き出した、紫電の鎧を纏っていてもその衝撃は凄まじく再び千尋の身体は吹っ飛ばされる、立ち上がろうとする千尋の前に一陽が腕を組んで立つ。
「なぜ俺たち有間家の人間が"双璧"と呼ばれているのかわかるか?」
一陽からの問いに千尋は言葉を詰まらせる、有間家と長門家に与えられた双璧という称号に対してあまり深く考えたことなどなかったのだ。
「そんなの、有間家の人間が力を持っていたから───」
「ならばその力をもってなにを成す?御前が退けば、後ろにいる者達に災厄の牙が近づく。臆せずに戦え、御前にはその力がある。」
初代有間、一陽の生きていた時代は戦乱の世であり敵は人間だけではなく、人々を食らう魑魅魍魎が跋扈していた。その中で彼は人々を災厄から守り双璧と呼ばれた、そんな一陽から送られた檄は千尋を奮い立たせるには十分すぎるものであった。千尋は力強く立ち上がり、再び一陽と対峙する。
「ありがとうございます、おかげで目が覚めました。」
「いい表情だ、それでこそ有間の次期当主よ。」
自身の威圧、帝釈天の威光にも怯む様子を見せず逆に威圧し返してくる程の気迫を纏った千尋に一陽は満足気な表情を浮かべた。
千尋と一陽はお互いに拳を構え、二人とも同時にその拳を突き出した。紫電と威光がぶつかり合い、それが始まりの合図かのように二人は両腕で拳の連打を繰り出す。風切り音と破裂音を辺りに響かせながら殴り合い、お互いに一歩も退く様子を見せない。
千尋は何発か身体に拳を受けたが痛みに耐えながら負けじと一陽の身体にも拳を叩き込んだ。一陽は久しく感じたことの無い痛みに一瞬僅かに表情を歪めるがすぐに楽しそうな笑みを浮かべ拳を振るう、千尋は一陽の拳撃の重さに後ずさりそうになるが必死に踏みとどまっている。
千尋は左腕に紫電を集中させ力強く拳を突き出した、合わさった一陽の拳を弾き彼の身体が仰け反るとその隙を突いて千尋は左手の手刀でまず一閃し、すかさず縦横無尽に移動しながら切りつけると最後に千尋が上に飛び上がった。
「雷切───紫電ッ!」
紫電を纏った手刀を真っ直ぐ振り下ろすと一陽の纏っていた帝釈天の鎧を、そして千尋が光速で移動した時に生じた稲妻の軌跡をも切り裂いた。
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