コワモテαの秘密

たがわリウ

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改めて伝えさせてくれ

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「うなじを噛んで欲しいんです」
「っ!」

 形の良い唇からこぼれた言葉に驚き、息を飲む。
 俺と結月はαとΩだし、もちろん考えたことは何度かあった。この関係が続いていけばいつかはと期待もしていた。
 しかし結月から提案されるのはまったく予想していなかった。嬉しいことだし、以前ならすぐに喜んでいただろう。けれど今の状況では、戸惑いが頭を占める。

「それが何を意味するか、わかってるんだよな」
「はい。何度も考えました。考えて考えて出した僕の答えです。トキオさんと番になればこの前みたいなヒートもなくなるし、僕がΩであることで生まれる不安も少なくなります」
「それは、そうだけど……」
「不安が少なくなれば、僕もトキオさんと同じように事務所にお世話になれますよね?」

 確かに結月の言う通り、番になれば不安が少なくなり社長の提案を受けられるし、一番上手くいくのかもしれない。しかし俺は首を縦に振れなかった。大事なところが抜け落ちている。

「結月がよく考えた結果だってことはよくわかった。でも、必要になったから番になるのは、俺は嫌だ。それに無理やり事務所に入っても結月が辛いだけだと思う」

 結月のことを信頼してるけど、焦りや不安から番になることを選びたくなかった。この世界に入ると決まったら、今までの生活もがらりと変わるだろう。好きでも無いことのために結月が傷つくのも嫌だった。

「ごめんなさい、大事なことを言ってなかったですね……僕はトキオさんが大好きだから、番になりたいんです。事務所に入るのも無理やりじゃありません。実はトキオさんのお仕事を見学した時に、少し惹かれていたんです。プロフェッショナルな人たちと作り上げるお仕事ってすごいなって……口にするのもおこがましくて、言えませんでしたけど。挑戦できるのなら、してみたい」

 俺を安心させるように柔らかく微笑む結月。しかし真っ直ぐ俺を見る瞳は真剣で、本気なのだと伝えてくる。
 結月が本心から俺と番になりたくて、挑戦してみたいと言うのなら俺から言うべきことはひとつだった。
 自分の気持ちをちゃんと伝えてくれた結月に向き合い、俺も息を吸う。

「……わかった。それなら俺からも改めて伝えさせてくれ。結月、俺と番になってほしい。俺を結月の番にしてくれ」

 今度は結月が息を飲んだ。堪えるように眉根は寄るのに、口元は幸せそうな弧を描く。
 今までも何度も思ってきたのに、俺はまた強く、結月が好きだと思った。好きで幸せなのに、胸は切なく軋む。喉が熱かった。

「ありがとうございます、トキオさん」
「俺の方こそ、ありがとう……じゃあ、チョーカー、外すな」
「はい」

 うなじを噛むのなんて初めてだし、緊張する。
 おずおずとタートルネックのセーターをずらし、チョーカーを晒す。ベージュ色のそれは結月の肌と馴染んでいた。
 震えそうな指先を後ろに持っていき、留め具を掴む。ゆっくりとチョーカーを外し、左手に収めた。右手で何も纏わないうなじを優しく撫でる。

「結月」
「トキオさん……っん」

 うなじを撫でていた手を後頭部に置く。自然と俺は結月に顔を寄せていた。啄むように何度も唇を触れ合わせる。

「結月、触りたい」
「ん、っあ」

 柔らかな唇を堪能しながら、セーターの中へ手を滑り込ませる。裾を押し上げる手は腹を這い、胸へと行き着く。
 手のひらが先端をかすめると、結月の肩がビクッと跳ねた。

「気持ち良いか……?」
「んっ、はぁっ……きもちい、です」

 恥ずかしそうにしながら体を火照らせる結月。そんな姿を見てしまえば、俺も更に熱が宿る。
 チョーカーをテーブルに置くと俺は結月をベッドに倒した。早くと急いでしまう気持ちを抑え、自分の服を脱いでいく。下着だけになると、次は結月の服に手をかけた。
 肌触りの良いセーターを脱がせ、パンツと下着も下ろし、足から抜きとる。キスでぼうっとした結月の腰に右手を持っていく。左手はさっきと同じように胸の先端を撫で付けた。

「っ、んん、あっ」

 左手の指で胸の先端を挟み、刺激する。それと同時に右手は熱に這わせゆるく動かした。

「あ、あっ……はぁっ」

 どんどん息を乱す結月。促されるように俺の息も荒くなる。俺の手で乱れる結月を見ているだけで体の熱は昂っていた。
 右手をそえている結月の熱も大きく、硬くなっていく。そろそろもっと強い刺激が欲しいだろうかと、扱くスピードを速めた。

「ん、んんっ、っあ」

 順調に熱を大きくしていく結月。俺も我慢ができなくなって、下着をずらした。自分のものと結月のそれを擦り合わせる。

「あぁっ、はぁっ、ん」
「っ、結月」

 荒く熱い息が混じり合う部屋。気持ち良さそうに体をくねらせる結月も、もれる甘い声も、すべてが卑猥だった。擦る度にビリビリと頭が痺れる。
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