コワモテαの秘密

たがわリウ

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何も心配いらない

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 吐き出す息が熱っぽいのが自分でもわかる。ベッドの上で脱力し、ぼんやり天井を見上げる。
 さっきよりも少しだけ倦怠感は軽くなっていた。

「どうだ? 薬効いてきたか?」
「……はい。少し楽になってきました」
「良かった……」

 視界に入り込んできたトキオさんは僕を覗き込む。トキオさん自身も、さっきより苦しくなさそうだった。

「トキオさん、撮影は……?」
「機材トラブルで中止になったんだ。タクシー使って正解だったな……間に合ってほんと良かった」

 トキオさんが来てくれなかったらと思うと恐怖で足がすくむ。さっきの男性のことを思い出したと気づいたのか、トキオさんは僕の髪を優しく撫でた。

「何も心配いらない。結月はゆっくり休んでくれ」

 髪から耳に移動した手は安心させるように毛を数度撫でる。好きな人に撫でられる心地良さもありながら、ヒリヒリとした渇きも感じた。

「じゃあ俺ちょっと離れてるから、何かあれば……」
「トキオさん」

 ベッドから離れようとしたトキオさんの手を掴み、引き止める。トキオさんの顔には驚きと戸惑いが浮かんだ。

「薬で少し落ち着いたけど、ずっと辛いんです……トキオさんが欲しい」
「っ、結月、でも……」
「お願いです、どうにかしたいんです」

 倦怠感とは別の渇き。今すぐにでもトキオさんが欲しくて疼き、抗えない欲求は消えない。
 僕はねだるようにトキオさんを見つめる。

「……わかった。じゃあ、触るな」

 意を決したように息を吐いたトキオさんはすぐにベッドに上がる。服を脱ぎ下着だけになると、僕の服も脱がせていった。
 やっと待ち望んでいたものが得られる。やっと楽になれる。

「結月、辛いよな」
「あっ、はぁっ」

 晒された素肌、胸を熱い手がすべる。それだけで僕はビリビリとした甘い痺れに襲われた。
 ちゅっ、ちゅっと唇が肌に吸い付く。鎖骨の下、胸を何度も啄むようにキスされる。

「あぁっ、ん」
「もっと急いだ方がいいか? 結月はどうしたい?」
「はぁっ……すぐで、大丈夫です……今すぐ、トキオさんが欲しい」
「わかった。痛かったら言ってくれ」

 欲求を素直に口にした僕から一度トキオさんは離れる。僕の熱も十分大きくなっているけど、ずらした下着からこぼれたトキオさんの熱も同じだった。
 僕のヒートにあてられてしまったのだろうそれ。早く早くと目で訴える僕の上で、トキオさんはローションとコンドームの用意をする。封が乱暴に切られ、早急に装着される。
 僕のために急いでいるのもあるのだろうけど、トキオさんも同じように僕が欲しいのだと伝わってきて胸のあたりがぎゅっと縮む。
 この前の丁寧な行為とは違い、忙しなくお互いを求める僕たち。

「よし、入るぞ、結月」
「はい……トキオさん、きて」

 足が開かれ、その間に体が入り込む。熱く硬い感触が押し付けられ、じょじょに僕の中に入ってきた。

「あっ、んんっ」
「っ、あつい……平気か?」

 前回のように指で慣らしていないけど痛みはなかった。強く欲していた異物を僕の体は喜んで飲み込んでいく。

「んっ、大丈夫、です……はぁっ」

 僕の中を押し広げていくトキオさんの熱。縋り付くように締め付けてしまう度、トキオさんも艶やかな息を吐く。すべてがおさまると、ゆるい動きが始まった。

「はぁっ、結月」
「あ、あっ、っん」

 初めはゆっくり、浅く抜き差しされる。痛がらない僕の様子を見て、だんだん動きは激しくなった。

「あぁっ、はぁっ、ときおさんっ」
「結月、結月っ……」

 頭の横に置いていた手に熱い手が触れてくる。絡まった指に僕も応えて、ぎゅうっと握った。

「ん、んんっ、はぁっ」

 深いところにグッと押し込まれる。奥に奥に入ろうとする動きに、僕は体を震わせた。

「あっ、んんっ、ときお、さんっ」
「結月、イけそうか? はぁっ」
「はぁっ、ん、っあ、ぼく……っ、あぁ」

 僕を絶頂に促すかのように腰が打ち付けられる。頭からつま先までがじんじんとして、何かがせり上ってくる。僕は抗うこともせず快感に身を委ねた。

「あぁっ、ん、んんーっ」
「はぁっ、っ」

 熱が弾けて頭が真っ白になる。勝手に体が震え、気持ち良いとしか考えられなくなる。
 ようやく味わえた絶頂を受け入れ、ただ呼吸を繰り返した。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
「少しは楽になったか?」

 達した僕を気遣い、トキオさんは動きを止める。呼吸が整ってくると、辛いほどだった渇きが少し満たされている気がした。

「ん……はい、ちょっと、楽になりました」
「そうか、良かった」

 心底ほっとしたように眉を下げるトキオさん。その顔を見て、本気で心配してくれていたのだと改めて実感し、申し訳ないような、ありがたいような気持ちになる。
 こんなに僕のことを考えてくれる人がいるのだと思うだけで心強かった。
 さっきよりもしっかりとした様子の僕を見て引かれそうになる体。僕はまだ離れて欲しくなくて、握る手の力を強める。

「結月?」
「ちょっと楽になりましたけど、もう少し、駄目ですか……?」
「っ」

 全身を巡る熱は少しだけ引いた。けれど僕はもっとトキオさんと触れたいし、トキオさんを感じたかった。
 迷うように視線が動いたあと、じっと僕に向けられる。

「俺も、もっと結月が欲しい」
「あぁっ、ん」

 中に埋まったままだった熱がまた擦り付けられる。何度も押し付けられる唇に体をくねらせながら、僕はまたトキオさんを求めた。
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