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尋常一様
不要部位とヒステリー・前
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尋常一様10
「で、何だったの例の山盛り生首は」
時計の針が正午からずれた頃。早めの昼食を済ませた東が樹へ茶を淹れつつ質問、茉莉花の香り漂う【東風】。ちなみに本日のランチメニューは牛腩麺と猪潤焼売。樹は麺を3杯おかわりした。
如何せん一連の事柄と微妙に関係性の掴めない生首が、数日前に再登場。東達の発見した物はワンペアだったが樹と上が遭遇した物は積み上がったタワー、世にも嬉しくない盛り合わせ。ついでに割と腐っていた。訊けば、スラム街ないし貧困区ではどうもちょくちょく生首が発見されているようだ。煙草へ火を点けつつ燈瑩が口を開く。
「そんなにいっぱいあるってなると、身体がどっかに卸されてるってことだからさ。臓器売買のほうとかに手ぇ広げて調べてみた」
「おめぇの十八番か」
「人聞き悪過ぎるよ」
猫の茶々を‘死体はたまに運ぶだけで売ってない’と否定する燈瑩に樹はウンウン納得。上が居なければ、基本的にこういったやり取りにツッこむ人間はゼロだ。白煙を流して続ける燈瑩。
「そしたら、出回ってた。頭無しの商品」
東はコテンと首を傾ける。頭から下を持っていくなら内臓、ないし手足を売り払っているのだろうが…死んでから臓器を摘出したりなんやりかんやりまでの許容時間は、部位にもよるけれど概ね最短4時間から最長24時間。猶予はあまりない。うっかり殺ってしまった死体を放置して、たまたまそれを別の誰かが持って行く…というパターンではなく、元より売買目的なのであれば微妙に方法が雑だ。そう述べる違法薬師に燈瑩も頷く。
「だから、死体を量産してる大元と売り捌いてるのは無関係の組織ってことになるかな」
「大陸の製薬会社と九龍のチンピラて訳ね」
東の言に樹はウンウン納得。それを横目に猫は‘樹腹いっぱいだから考えてねぇな…何なら眠ぃんじゃねぇのか…’などと思った。開いているようないないような瞼。
とにかく話を整理すると───城砦に転がっているジャンキーを使い新薬の実験をしている製薬会社、その過程で生まれた死体を掠め盗り四方に売っている九龍のチーム。生首に関わっているのは主にこの2つ。
頭を棄てる理由は、まず目玉や歯の感じから重度の薬物中毒者だと発覚し買取不可になる可能性を下げる為。腸は掻っぴらいてみるまでは良し悪しがわからない、売買終了したあとでボロさが捲れたとて知ったこっちゃあない。内臓以外にも死体の使い道は各方面でそこそこあるし、あとはそちらでお好きにどうぞだ。
他には商品の身バレ防止。ジャンキーに紛れ棄てられている死体…例えば最初に見付けた生首、アレはカジノ関係の輩。その手合いを拾って売り飛ばすにあたり、顔は邪魔。奴等は元々金融機関方面の回し者だろう。殺られた理由はビーニーのようにお喋りだったか、立場を利用して勝手にポケットマネーを膨らませていたか、そんな処。小道に生息するだけの薬中とは違い裏社会に知り合いがいる類の人間だ、面出ししては余計なトラブルへ発展しかねない。
「製薬会社ブチ切れてんじゃねーの」
「新薬のこと漏れちゃうし?」
トントンと顳顬を叩く猫へ東が唇の端を上げた。使用済みの被験者の死体は、転がしておくだけならいいものの、売り払うとなると弊害が出てくる。パクっている側のやり方も非常に杜撰。生首の廃棄も適当。まずもって‘製薬会社’が出した不用品を‘医療関係’へ売買しているのだ、足が付くのはもう時間の問題な気もした。
「でもまぁ…範疇の外だね」
別に俺らが解決する案件じゃないと燈瑩は灰皿を紙巻きでノック。ドラッグ及びカジノ界隈でいくらか実害はでていたが、香港での騒動以降それも静かになっている。今回発見されたタワーが新品ではなかったのもそのせいだろう。もしかしたら、事が納まる前に、死体を盗んでいるチームと製薬会社側のマフィア連中の間に一悶着起こるかも知れないが…それはそれ。割と対岸の火事。結論に樹はまたもウンウン納得───しているのではなかった。寝てる。コックリコックリ、船を漕いでるだけ。‘お昼寝ならベッド行きなさい’と東。
現時点で花街のピンクカジノ系列に飛び火も無し、ここから事態が拡大することは多分ないだろう。猫の懸念も払拭、東は顧客へとそれとなく注意喚起してルートを守り、燈瑩も密輸品のチェックをほんのり強化。騒動は緩やかに鎮静化されつつあった。
ある方面を除いて。
「で、何だったの例の山盛り生首は」
時計の針が正午からずれた頃。早めの昼食を済ませた東が樹へ茶を淹れつつ質問、茉莉花の香り漂う【東風】。ちなみに本日のランチメニューは牛腩麺と猪潤焼売。樹は麺を3杯おかわりした。
如何せん一連の事柄と微妙に関係性の掴めない生首が、数日前に再登場。東達の発見した物はワンペアだったが樹と上が遭遇した物は積み上がったタワー、世にも嬉しくない盛り合わせ。ついでに割と腐っていた。訊けば、スラム街ないし貧困区ではどうもちょくちょく生首が発見されているようだ。煙草へ火を点けつつ燈瑩が口を開く。
「そんなにいっぱいあるってなると、身体がどっかに卸されてるってことだからさ。臓器売買のほうとかに手ぇ広げて調べてみた」
「おめぇの十八番か」
「人聞き悪過ぎるよ」
猫の茶々を‘死体はたまに運ぶだけで売ってない’と否定する燈瑩に樹はウンウン納得。上が居なければ、基本的にこういったやり取りにツッこむ人間はゼロだ。白煙を流して続ける燈瑩。
「そしたら、出回ってた。頭無しの商品」
東はコテンと首を傾ける。頭から下を持っていくなら内臓、ないし手足を売り払っているのだろうが…死んでから臓器を摘出したりなんやりかんやりまでの許容時間は、部位にもよるけれど概ね最短4時間から最長24時間。猶予はあまりない。うっかり殺ってしまった死体を放置して、たまたまそれを別の誰かが持って行く…というパターンではなく、元より売買目的なのであれば微妙に方法が雑だ。そう述べる違法薬師に燈瑩も頷く。
「だから、死体を量産してる大元と売り捌いてるのは無関係の組織ってことになるかな」
「大陸の製薬会社と九龍のチンピラて訳ね」
東の言に樹はウンウン納得。それを横目に猫は‘樹腹いっぱいだから考えてねぇな…何なら眠ぃんじゃねぇのか…’などと思った。開いているようないないような瞼。
とにかく話を整理すると───城砦に転がっているジャンキーを使い新薬の実験をしている製薬会社、その過程で生まれた死体を掠め盗り四方に売っている九龍のチーム。生首に関わっているのは主にこの2つ。
頭を棄てる理由は、まず目玉や歯の感じから重度の薬物中毒者だと発覚し買取不可になる可能性を下げる為。腸は掻っぴらいてみるまでは良し悪しがわからない、売買終了したあとでボロさが捲れたとて知ったこっちゃあない。内臓以外にも死体の使い道は各方面でそこそこあるし、あとはそちらでお好きにどうぞだ。
他には商品の身バレ防止。ジャンキーに紛れ棄てられている死体…例えば最初に見付けた生首、アレはカジノ関係の輩。その手合いを拾って売り飛ばすにあたり、顔は邪魔。奴等は元々金融機関方面の回し者だろう。殺られた理由はビーニーのようにお喋りだったか、立場を利用して勝手にポケットマネーを膨らませていたか、そんな処。小道に生息するだけの薬中とは違い裏社会に知り合いがいる類の人間だ、面出ししては余計なトラブルへ発展しかねない。
「製薬会社ブチ切れてんじゃねーの」
「新薬のこと漏れちゃうし?」
トントンと顳顬を叩く猫へ東が唇の端を上げた。使用済みの被験者の死体は、転がしておくだけならいいものの、売り払うとなると弊害が出てくる。パクっている側のやり方も非常に杜撰。生首の廃棄も適当。まずもって‘製薬会社’が出した不用品を‘医療関係’へ売買しているのだ、足が付くのはもう時間の問題な気もした。
「でもまぁ…範疇の外だね」
別に俺らが解決する案件じゃないと燈瑩は灰皿を紙巻きでノック。ドラッグ及びカジノ界隈でいくらか実害はでていたが、香港での騒動以降それも静かになっている。今回発見されたタワーが新品ではなかったのもそのせいだろう。もしかしたら、事が納まる前に、死体を盗んでいるチームと製薬会社側のマフィア連中の間に一悶着起こるかも知れないが…それはそれ。割と対岸の火事。結論に樹はまたもウンウン納得───しているのではなかった。寝てる。コックリコックリ、船を漕いでるだけ。‘お昼寝ならベッド行きなさい’と東。
現時点で花街のピンクカジノ系列に飛び火も無し、ここから事態が拡大することは多分ないだろう。猫の懸念も払拭、東は顧客へとそれとなく注意喚起してルートを守り、燈瑩も密輸品のチェックをほんのり強化。騒動は緩やかに鎮静化されつつあった。
ある方面を除いて。
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