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光輝燦然・下
魔法の終わりと夢の始まり・前
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光輝燦然12
「呑気にデートか?」
そう言って笑いながら、数人の男達が近付いてくる。
「…デートやないよ。アンタらこそ何なん、魔鬼山炮台まで来よって?大ファンかい」
低い声で返しつつ上は陽と男達の間に身体を入れた。男の1人がため息まじりに答える。
「女ケガさせれば報酬、って話が無くなってな。まぁ売り飛ばしたほうが儲かるからそうしようかと」
五顏六色が依頼をかけていたマフィアたち…ではないな。その下っ端?半グレ程度か?
けれど、五顏六色が陽から手を引いたのは確実なはず。となるとこいつらは指示もなく独自で動いている。黙って勝手に荒稼ぎしようという魂胆。
「えらい杜撰なご計画やな。そない上手いこといかへんやろ」
上は眼球だけを動かして周りを確認した。相手は5人。こりゃ無理とちゃうか?小さく舌打ちをする。
だがどうやら全員素手のようだ。商品に傷を付けない為にという事なのかも知れないが、上にとっては好都合だった。
1人…あわよくば、2人倒したい。陽が逃げる隙をつくれればそれでいい。
「陽さん。俺がなんとか時間稼ぐから後ろの道から逃げぇや」
「でも、上君…」
「ええから。今度こそは絶対に守るって決めとんねん」
上の頭の中に藤の顔と、それから月の話がチラついた。もう二度と───指をすり抜けさせたくない。
男が殴りかかってきた。上はそのパンチを躱し、自身も右ストレートを繰り出す。威力はあまり無いがとりあえず当たった。
男がすかさず反撃してきたので腕を掴んで引っ張り顔面に頭突きをかます。よろめいて後ずさる男、その横から別の1人が蹴りをお見舞いしてきた。が、上はそれも躱しお返しの前蹴りを食らわせる。当たった。
ん?なんでこんなに避けれるし当たるん?
上の頭に疑問符が浮かぶ。その間も男達は攻撃をしてくるが、躱す、躱す、躱す。一発として上を捉えることはない。
身体が軽い。見える。イケる。
最近不思議と調子がいい気はしていた。もしかして自分、成長したんとちゃうん?
上の口元に笑みが浮かぶ。ちょっと何だかテンションがあがってきた。
「なんだこのデブ、ちょこまかと…」
「誰がデブじゃ!!」
上は素早くポケットから小袋──東特製ハーブバッグ──を取り出し男に向けて投げ付ける。バスン!と顔に命中し、葉っぱや粉が風に舞ってブワッと散らばった。
「うわっ、何だコレ…ゲホ!ゲホッ!」
「陽さん!!逃げ!!」
一瞬の目眩まし。
陽は既に走り出しており、ヒールが地面を叩く音が遠ざかっていく。上は敵を引き付ける為に珍しく挑発的な仕草をしてみせた。
「ほら、来てみぃや。こないなデブに負けとったらカッコぉつかへんやろ。な?」
怒り心頭の男が襲い掛かってくる。その拳を避けようとした上の耳に、今度は段々大きくなるヒールの音が飛び込んだ。
ゴンッ。
そして最後に鈍い音。男が地面に倒れ込む。上の視界に入ったのは、小心地滑の文字───が書かれた看板を持った陽。看板で男をブン殴ったのだ。
「え!?ちょぉ、何で…」
「1人だけ逃げるなんて出来ないよ」
どこかから武器を奪って戻ってきたのである。ごめんね、と、陽は凛とした瞳で上を見据えた。
謝られるような話ではないが、陽を守り切る自信がない上は焦った。いくら普段よりやれるとはいえ、そもそもが強くはないのだから正直たかが知れている。
だけど、やるんだ。やってやる。
絶対に守る。
上は陽から看板を受け取り、目の前の男をひっぱたく。残るは3人、だが1人は先程の上の頭突きがまだ効いている様子。鼻が折れたのかも知れない。実質あと2人か。
その時、後方にいた男の1人が上着から拳銃を取り出した。マズい────…!!商品は傷付けないだろうと思っていたが。
上は陽の前に再び立ち、庇う体勢をとる。
「上君!!」
銃声と陽の叫び声が夜を貫いた。
「呑気にデートか?」
そう言って笑いながら、数人の男達が近付いてくる。
「…デートやないよ。アンタらこそ何なん、魔鬼山炮台まで来よって?大ファンかい」
低い声で返しつつ上は陽と男達の間に身体を入れた。男の1人がため息まじりに答える。
「女ケガさせれば報酬、って話が無くなってな。まぁ売り飛ばしたほうが儲かるからそうしようかと」
五顏六色が依頼をかけていたマフィアたち…ではないな。その下っ端?半グレ程度か?
けれど、五顏六色が陽から手を引いたのは確実なはず。となるとこいつらは指示もなく独自で動いている。黙って勝手に荒稼ぎしようという魂胆。
「えらい杜撰なご計画やな。そない上手いこといかへんやろ」
上は眼球だけを動かして周りを確認した。相手は5人。こりゃ無理とちゃうか?小さく舌打ちをする。
だがどうやら全員素手のようだ。商品に傷を付けない為にという事なのかも知れないが、上にとっては好都合だった。
1人…あわよくば、2人倒したい。陽が逃げる隙をつくれればそれでいい。
「陽さん。俺がなんとか時間稼ぐから後ろの道から逃げぇや」
「でも、上君…」
「ええから。今度こそは絶対に守るって決めとんねん」
上の頭の中に藤の顔と、それから月の話がチラついた。もう二度と───指をすり抜けさせたくない。
男が殴りかかってきた。上はそのパンチを躱し、自身も右ストレートを繰り出す。威力はあまり無いがとりあえず当たった。
男がすかさず反撃してきたので腕を掴んで引っ張り顔面に頭突きをかます。よろめいて後ずさる男、その横から別の1人が蹴りをお見舞いしてきた。が、上はそれも躱しお返しの前蹴りを食らわせる。当たった。
ん?なんでこんなに避けれるし当たるん?
上の頭に疑問符が浮かぶ。その間も男達は攻撃をしてくるが、躱す、躱す、躱す。一発として上を捉えることはない。
身体が軽い。見える。イケる。
最近不思議と調子がいい気はしていた。もしかして自分、成長したんとちゃうん?
上の口元に笑みが浮かぶ。ちょっと何だかテンションがあがってきた。
「なんだこのデブ、ちょこまかと…」
「誰がデブじゃ!!」
上は素早くポケットから小袋──東特製ハーブバッグ──を取り出し男に向けて投げ付ける。バスン!と顔に命中し、葉っぱや粉が風に舞ってブワッと散らばった。
「うわっ、何だコレ…ゲホ!ゲホッ!」
「陽さん!!逃げ!!」
一瞬の目眩まし。
陽は既に走り出しており、ヒールが地面を叩く音が遠ざかっていく。上は敵を引き付ける為に珍しく挑発的な仕草をしてみせた。
「ほら、来てみぃや。こないなデブに負けとったらカッコぉつかへんやろ。な?」
怒り心頭の男が襲い掛かってくる。その拳を避けようとした上の耳に、今度は段々大きくなるヒールの音が飛び込んだ。
ゴンッ。
そして最後に鈍い音。男が地面に倒れ込む。上の視界に入ったのは、小心地滑の文字───が書かれた看板を持った陽。看板で男をブン殴ったのだ。
「え!?ちょぉ、何で…」
「1人だけ逃げるなんて出来ないよ」
どこかから武器を奪って戻ってきたのである。ごめんね、と、陽は凛とした瞳で上を見据えた。
謝られるような話ではないが、陽を守り切る自信がない上は焦った。いくら普段よりやれるとはいえ、そもそもが強くはないのだから正直たかが知れている。
だけど、やるんだ。やってやる。
絶対に守る。
上は陽から看板を受け取り、目の前の男をひっぱたく。残るは3人、だが1人は先程の上の頭突きがまだ効いている様子。鼻が折れたのかも知れない。実質あと2人か。
その時、後方にいた男の1人が上着から拳銃を取り出した。マズい────…!!商品は傷付けないだろうと思っていたが。
上は陽の前に再び立ち、庇う体勢をとる。
「上君!!」
銃声と陽の叫び声が夜を貫いた。
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