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喧嘩商売
後日談と期待の新星
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喧嘩商売 5
「お待たせぇ!」
大地が元気な声とともに【東風】のドアを開ける。手には様々な種類の鶏蛋仔、後ろから付いて入ってきた樹もお持ち帰り袋の中に沢山の鶏蛋仔を抱えていた。
「こんなにもろたん?食えへんやん」
「1人2個ずつだよ、すぐ無くなるよ」
「3個食べたい…」
「俺1個でいいから樹食べな?」
そう言うと燈瑩は2個ずつわけようとする大地からひとつだけ頂戴し、もうひとつを3個欲しがる樹に手渡した。
カウンターの中に居る東が、俺は1個もいらない、樹に全部あげると声を飛ばす。思いがけず5個へ増えた取り分に樹は嬉しそうだ。
うっかり不正の手助けをしたうえに敵方の人間との仲介をしてしまい色々な疑いをかけられたが、猫の計らいもあり難を逃れることができたレフェリー…もとい鶏蛋仔屋店主は、【東風】の面々が店に顔を出す度に諸々の礼を兼ねこうして鶏蛋仔をプレゼントしてくれる。
わざと負けた樹も樹なのだが、ここは九龍城、より報酬の良い方につくのはどのタイミングであってもなんら問題はない。
それにもともと樹は【獣幇】ではなく部外者。自らの力量で挑まず喧嘩屋を金で雇うというズルをした以上は【獣幇】も何も言えないのである。
あのあと猫は【獣幇】に話をつけ、下っ端の管理下から小さい店を2ついただいた。そこに知り合いの水商売人や【宵城】の従業員を置いて簡易な飲み屋を作り、訪れた客を花街へ流す。新規顧客ルートの拡大だ。
その飲み屋自体の売上は【獣幇】にも少し回して、マフィアとも良好な関係を保つ。結果として幾ばくかのシマは獲ったが、双方に利のある角が立たない形におさめたのだった。
「しかし、新規ルート良い感じだな。あの辺に手ぇ伸ばしてる花街の奴ぁほとんどいねぇから全部【宵城】に流れてくるぜ。丸儲けだわ。にゃはは」
「【獣幇】的にも花街側に店舗運営して貰って実際得なんじゃないの?【獣幇】は喧嘩賭博での稼ぎがメインで、経営には力入れてなかったからね」
笑い声をあげる猫に、ライター貸してとジェスチャーしながら燈瑩が言う。
猫は【宵城】特製ライターのラインストーン♡デコバージョン非売品を、やるよと放り投げた。
実際今回の騒動で一番損を被ったのは燈瑩だ。【獣幇】から貰えるはずだった金額の倍払うという提案で樹との試合を決着させているのだから、額はかなりのものである。
それを思えば猫としては非売品特製ライターくらい何個くれてやってもかまわなかった。
上もボコボコにされてはいるが頑張った対価として【宵城】への従業員紹介料を大幅に増やしてもらえている。
東はそもそもの元凶なので最終的に丸く収まり咎められなくなっただけでも御の字とすべき。
報酬を渡された樹は若干申し訳無さそうだったが、燈瑩はこれで【獣幇】とも顔見知りになったし俺も新しく売買ルート作れるからいいよと笑っていた。
猫が見るに燈瑩はすでに界隈の売買ルートは持っていると思うのだが、何か他の算段があるんだろう。本人がいいよと言っているのだから周りが考えても詮無い事だ。
「ところで何で鶏蛋仔のオッサンがレフェリーしとったん」
疑問を呈する上に、パンダクッキーの刺さったトッピング増し増し甘々キュートな鶏蛋仔をかじりつつ答える樹。
「喧嘩見るのが好きで仲裁とかもしてたら、いつの間にか街で決闘の審判のポジションになったって。地下格闘技とかもよく行くらしいよ」
「見かけによらんな…」
上が呟く。苺ソースがなんとなく血に見えてくる。
あ、そういえばと樹が顔を上げ言った。
「おじさん、上に地下格闘技出ないかって」
「え!?俺!?人選おかしいやろ」
「上が一番良かったんだって。外見とか逃げ回り方とかボロボロで立ち向かう感じとか」
褒められているのかいないのかまったくわからず、上は複雑な気持ちになった。
弱いからこその泥臭さが皆の心を揺さぶったのか?いや、でも、嬉しくない。願わくば上だってカッコよく戦いたいし勝ちたいのだ。ただ実力が全然足りていないだけで。
「へぇ、なら俺チケットさばくわ」
「東、やらんで俺は」
「まぁ上の負けに1万ドルだな」
「やらんて、猫」
「そしたら俺は勝ちに張ろうか?」
「えっじゃあ勝って!頑張れ上!」
「燈瑩さん!!大地!!」
誰の助けも得られずに、一人で首をブンブンと横に振って否定する上。
その上が翌週、皆の声援を背負って死にそうな顔でリングに姿を現すのはまた別の話だ。
「お待たせぇ!」
大地が元気な声とともに【東風】のドアを開ける。手には様々な種類の鶏蛋仔、後ろから付いて入ってきた樹もお持ち帰り袋の中に沢山の鶏蛋仔を抱えていた。
「こんなにもろたん?食えへんやん」
「1人2個ずつだよ、すぐ無くなるよ」
「3個食べたい…」
「俺1個でいいから樹食べな?」
そう言うと燈瑩は2個ずつわけようとする大地からひとつだけ頂戴し、もうひとつを3個欲しがる樹に手渡した。
カウンターの中に居る東が、俺は1個もいらない、樹に全部あげると声を飛ばす。思いがけず5個へ増えた取り分に樹は嬉しそうだ。
うっかり不正の手助けをしたうえに敵方の人間との仲介をしてしまい色々な疑いをかけられたが、猫の計らいもあり難を逃れることができたレフェリー…もとい鶏蛋仔屋店主は、【東風】の面々が店に顔を出す度に諸々の礼を兼ねこうして鶏蛋仔をプレゼントしてくれる。
わざと負けた樹も樹なのだが、ここは九龍城、より報酬の良い方につくのはどのタイミングであってもなんら問題はない。
それにもともと樹は【獣幇】ではなく部外者。自らの力量で挑まず喧嘩屋を金で雇うというズルをした以上は【獣幇】も何も言えないのである。
あのあと猫は【獣幇】に話をつけ、下っ端の管理下から小さい店を2ついただいた。そこに知り合いの水商売人や【宵城】の従業員を置いて簡易な飲み屋を作り、訪れた客を花街へ流す。新規顧客ルートの拡大だ。
その飲み屋自体の売上は【獣幇】にも少し回して、マフィアとも良好な関係を保つ。結果として幾ばくかのシマは獲ったが、双方に利のある角が立たない形におさめたのだった。
「しかし、新規ルート良い感じだな。あの辺に手ぇ伸ばしてる花街の奴ぁほとんどいねぇから全部【宵城】に流れてくるぜ。丸儲けだわ。にゃはは」
「【獣幇】的にも花街側に店舗運営して貰って実際得なんじゃないの?【獣幇】は喧嘩賭博での稼ぎがメインで、経営には力入れてなかったからね」
笑い声をあげる猫に、ライター貸してとジェスチャーしながら燈瑩が言う。
猫は【宵城】特製ライターのラインストーン♡デコバージョン非売品を、やるよと放り投げた。
実際今回の騒動で一番損を被ったのは燈瑩だ。【獣幇】から貰えるはずだった金額の倍払うという提案で樹との試合を決着させているのだから、額はかなりのものである。
それを思えば猫としては非売品特製ライターくらい何個くれてやってもかまわなかった。
上もボコボコにされてはいるが頑張った対価として【宵城】への従業員紹介料を大幅に増やしてもらえている。
東はそもそもの元凶なので最終的に丸く収まり咎められなくなっただけでも御の字とすべき。
報酬を渡された樹は若干申し訳無さそうだったが、燈瑩はこれで【獣幇】とも顔見知りになったし俺も新しく売買ルート作れるからいいよと笑っていた。
猫が見るに燈瑩はすでに界隈の売買ルートは持っていると思うのだが、何か他の算段があるんだろう。本人がいいよと言っているのだから周りが考えても詮無い事だ。
「ところで何で鶏蛋仔のオッサンがレフェリーしとったん」
疑問を呈する上に、パンダクッキーの刺さったトッピング増し増し甘々キュートな鶏蛋仔をかじりつつ答える樹。
「喧嘩見るのが好きで仲裁とかもしてたら、いつの間にか街で決闘の審判のポジションになったって。地下格闘技とかもよく行くらしいよ」
「見かけによらんな…」
上が呟く。苺ソースがなんとなく血に見えてくる。
あ、そういえばと樹が顔を上げ言った。
「おじさん、上に地下格闘技出ないかって」
「え!?俺!?人選おかしいやろ」
「上が一番良かったんだって。外見とか逃げ回り方とかボロボロで立ち向かう感じとか」
褒められているのかいないのかまったくわからず、上は複雑な気持ちになった。
弱いからこその泥臭さが皆の心を揺さぶったのか?いや、でも、嬉しくない。願わくば上だってカッコよく戦いたいし勝ちたいのだ。ただ実力が全然足りていないだけで。
「へぇ、なら俺チケットさばくわ」
「東、やらんで俺は」
「まぁ上の負けに1万ドルだな」
「やらんて、猫」
「そしたら俺は勝ちに張ろうか?」
「えっじゃあ勝って!頑張れ上!」
「燈瑩さん!!大地!!」
誰の助けも得られずに、一人で首をブンブンと横に振って否定する上。
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