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~おまけ小話集~
アルファポリス限定<感謝>SP小話:世界に広げよう、BBQの輪!!
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ルティと結婚してから初めての里帰り。里と言っても【エルフの里】の方ではなく、私の義実家である魔国のお屋敷の方。
結婚式の設営から、準備、食事までたくさんお世話になったので、今日は久々にお礼も兼ねてみんなにランチでも作ろう!とたくさん食材を買い込んできた。
作ると言っても、小庶民な私がフルコース的なものや、懐石のようなものを作れるはずもないので、今回は旅行の帰りにパイッシュでダーツさん親子と即席で行った海鮮BBQ……の肉ver。あれは美味しかった。
ユーロピアへの移動の道中で初めてお披露目した時は、肝心の決め手となる材料がなくて私お気に入りのタレが作れなかったけど、ワノ国でショーユ、アジェアでゴマオイルなるものも手に入れ、再現が可能になったのだ!!見つけた時は号泣したっけ……。
野菜やお肉の処理などは『これくらいはプロの私達にさせて下さい』と押し切られ、バーべさんとフランベさんが準備してくれた。ありがたく甘えておく。
私達はというと、肝心要の【タレ作り】を行うわけですが……
「まずは焼き肉のタレからかな。ルティ、ゴーちゃん、ニンニクとショーガをもの凄く細かく、これでもかってくらい細かくしてもらえる?」
「では、私はショーガを担当しましょうか」
「細かく切り刻む作業なら得意だから任せて!」
『料理は壊滅的だから行わない』と言っていたゴーちゃんの、細かく切り刻む作業って【切り絵】以外になんだろうと若干気になりつつもスルーし、作業は続行。
二人の魔法による裏技で、おろした並みに細かくなったショーガ、ニンニク、ゴマオイル、ゴマ、ワノ酒、ミリンっぽいやつ、砂糖、ショーユを入れ、軽くアルコールを飛ばす程度に温め混ぜる。
「あとは粗熱を……」
「はい、アオイ冷ましましたよ」
「あ、はい。強制的に冷やされて出来上がったものが、こちらでーす」
「すごいね!すぐにできちゃうんだね」
それはあなた達が料理を科学せずに魔法を使うから早いんだな。
「じゃあ、次はマヨネーズショーユも焼き野菜に合うし美味しいから作ろう!卵黄、オイル、酢、塩で作りまーす」
「攪拌と言えば、私ですね」
マヨ製造に慣れているルティ工場長にここはお任せで良さそうですね。
「そうだね。私は無理だからお願いします」
「では……。はい、できましたよ」
「……早過ぎです」
「さすがルーティエ兄さん!」
なんで瞬きの間に攪拌が終わっているのか。ブレンダーよりも早いかもしれないルティンダー。料理苦手な割に手伝いたい系男子のゴーちゃんも、『次は僕もやりたい!』的キラキラした視線を向けてくるので、ここは一つ【混ぜ混ぜ】をお願いしよう。
幼稚園児の初めてのクッキングなら混ぜるか握るか、潰す、だろう……。
「じゃあ、マヨネーズにショーユ入れたから、これをゴーちゃん混ぜてくれる?」
「うん、わかった。……はい、できたよ!」
「だから早過ぎだって!」
「早い分には良いのではないですか?」
「急がない方が良かったの?」
こっちは普通に手作業で指示しながらやっているんでね、ええ。こうも『できた、できた』とすぐに言われてしまうと自分の作業が進まないんですよ!
この『次何やるの?もっと手伝いたい!』という、嬉しいが、若干困ることへの対応をそつなくこなしている世の中の親御さんや、保育士さんは偉大だ。
「いや、もういいよ。手伝いに関しては本当に助かってるし。最後はいよいよBBQソースを作りたいと思いまーす!」
「これは初めての時は衝撃的でしたね」
「兄さんはすでに経験済みなんですね。どんな味なんだろう~」
葡萄酒、ミリンっぽいやつ、砂糖、ニンニク、塩、ショーユ、手作りケチャップ、ウスターがまだこれってのが見つかってないので、ソースで代用。
二人の好みの割合を決めるのが大変だったけど、結構楽しかった。商品開発部にでもなった気分。
「では、焼き肉のタレ同様に火にかけて……はい、ゴーちゃん混ぜ混ぜ係ね」
「任せて!……できました!」
「だから早……いいです。ありがとうございまーす!」
「料理って結構楽しいね。僕もちょっとは上達しているのかもしれないよね。お肉でも焼いてみようかな?」
「「ぼ、坊ちゃん!!」」
バーべさんとフランベさんが、絶対に止めてくれ!と必死の形相で私を見ているんだけど……そんなにヤバいのか。お屋敷でも実績ありなんだね?
「まぁまぁ、とりあえず今日は私がもてなしたいわけだし、たまには義妹の料理を食べてよ」
「あ、それもそうだね。じゃあ、今度リイルーンにお邪魔する時、何か作って行くね!」
チラリとバーべさん達を見る……手を握り締め、すごい早さで首を横に振っていた。彼は毒でも生み出す才能でもあるのだろうか?もしくは齧ると歯が欠けるとか?
「ゴーシェ、その気持ちだけで十分です。もしでしたら、やはり実家の味の詰め合わせや、魔国でも流行りの菓子など、魔国らしさが詰まったものが良いのでは?」
「そ、そうだね!決してゴーちゃんのがってわけじゃないけど、あっちでもやっぱりここの味が恋しくなるし、そうしてくれると嬉しいな」
「確かに。それもそうだね、わかったよ」
ふぅ、よくわからないけど平和が守られたようだ。
タレが出来上がったので、お屋敷の広い庭に用意してもらったBBQセットにお肉や野菜、少し魚介なんかも焼いたりして。
タレはお好みで試してもらって食べてもらった。
「アオイちゃん!これすっごく美味しいわ!!」
「うん!これは美味しい!!お酒にも合いそうだよね」
「アオちゃん!お肉が、お肉が美味しい!!自分で混ぜたBBQソースのせいかな、これが一番好き」
「アオイお嬢様が作られた中で、三本の指に入るほど美味しいですね」
え!?本当に?なんかカーモスさんが私を本気で褒めてくれる事なんてほとんどないから、ちょっと嬉しいかも。
「私的にはカーモスに妻の料理を食べさせるのは不本意極まりないですが。今回は仕方がないとは言え、くっ!やはり不愉快ですね」
「私はお前のその顔が見れて愉快ですが?」
「は?」
「まぁまぁまぁ!!!カーモスさん、ちょ~っとモルガお義母様の隣に移動しましょうか、ね?」
ちょっとひと悶着起きかけたけど、料理人のバーべさん、フランベさんからも美味しいと太鼓判を押して貰えたし、これを商品化して売ったらどうかとモルガお義母様が言うのでお任せした。簡単に手に入る方が楽でいいし、BBQ文化も広まればいいな。この和気藹々とした雰囲気が私は好きなんだよね。
こうして私がパイッシュや魔国で披露したBBQとタレは見事にこの世界にもマッチしたようで、西のパイッシュ式 海鮮BBQ、東の魔国式 肉のBBQから始まり、瞬く間に広まっていった。
その内、暑い国にはさっぱり目、寒い国には少しスパイスを利かせてなど、独自の改良も加えられ、私にしては初めてこの世界にほんの少しお役に立てたかもしれないと思えたのだった。
「私、BBQ文化とタレを広める為にこの世界に来たのかもしれない……」
「……そこは普通、『私と出会う為』と言うところではないのですか?」
かもね?
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