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~エンジョイのその先~

エピローグ:私の家族 ★

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 ここはリイルーンの私達の家。

 相変わらず日課となっている、午後のティータイム。ルティの入れてくれる美味しい紅茶と、私が作ったナッツのタルトでホッと一息中である。

 結婚式にプリンタルトを大量生産してからというものの、タルトって土台さえ覚えてしまえば少しのアレンジだけでもバリエーションが増えるじゃないか!と気付いてからよく作るようになり、今では得意なお菓子の一つとなっている。

 夫は昔から浴びるほど木の実を食べ続けているというのに、本日も飽きもせず『やはりナッツは食感が最高ですね』と言ってお上品にタルトを食べている。そんな夫を眺めていて気付いた……


「あ、今年だったかなぁ?」
「今年?なにかありましたか?」


 ふと思い出したけど、そろそろ結婚50周年……金婚式だろうか

 ご存じエルフ族は超長寿だ。それ故に誕生会やら記念日やらはあまり積極的に行う風習がない、らしい。年齢もざっくりカウントしているし、記念日なんてボーっとしている間に過ぎてしまっているので、確かに細かく気にしていたらケンカになってしまいそうではある。

 そういった経緯もあって、私も特にルティの誕生祝も、当然自分のものもしてこなかった。

「して欲しい!」と言えばきっと優しい夫のことだ、何が何でも祝ってくれるとは思う。だけど、おそらくそのスケールが大きすぎて、お返しに祝ってあげようとなった時に、平凡なお祝いしかできない自分が嫌になるだろう。

 なんせ自他共に認めるセンスのなさだ!我ながら不憫。

 そしてそれ以降続いて行くお祝いに100以上もサプライズを考えるのも無理な話だし、ケーキ作りはタルト以外得意ではないし……でも、一度バレンタインはやってしまったが為に、さりげなく記憶されてしまい『今年もバレンタイン愛し合う者達の日のシーズンがやってきましたね』と、チラリ期待の眼差しを向けられて毎年頭を悩ませているのだ。

 むしろこの経験があったからこそ、郷に入っては郷に従おう精神がより芽生えたと言ってもいい。お祝い事がストレスに感じるようになるのは私も本意ではないので、なにかしたいなと思った時にその都度やるくらいがちょうどいいのだなと悟りを開いた。
 
 まぁ、バレンタインの場合はチョコがメインの感じではなく、「愛を囁かれたい」というのがメインのようなので、愛の花言葉にちなんだお花を渡したりして、「愛」囁かせて頂いております。ええ。


 そう、だからこの場合は【記念日】なんて表現をしてはいけない。とりあえず平静を装い、ソファにポスっと凭れながら、なるべくサラ~っとなんてこともないように話してみた。


「……あ、うん。そろそろ結婚して50年くらい経ったんだなぁって、しみじみ思っただけ」
「50年?もうそんなに経っておりましたか。まだ私的には5年程度にしか感じていなかったので、実感が沸かないですね」


 こいつはおったまげたな……

 私が多少エルフ寄りな考え方ができるようになったとは言っても、50年が5年に思えるほどの猛者になるにはまだまだ修行が足りないようだ。とは言え、一生わかることはないと思うが。
 
 年月の圧縮の仕方が半端ないけれど、本人は冗談ではなく本気で思っているので、色んな意味でエルフってすごいなと思うし、種族の違いを感じるところではある。


「それはともかく、私的には何だかんだで10年くらいまでには子供が出来ているんじゃないかなって漠然とだけど思っていたんだけど。私が人族だからなのかなやっぱり……」
「またそんなことを……私はアオイと共に生きていければ十分だと何度も申したはずでしょう?」


 ルティが私との子供を望んでいる事も、私にもこの世界で血の繋がった家族を作ってあげたいと思っていることも知っていたから。私だって結婚後、割とすぐに子供を望むようになっていた。
 
 妊娠は望んでも、周期を合わせても、たとえお互い健康であろうとも、簡単にできるものではない。そう知識では知っていた。でも、当事者になるとわかる『なんでできないのだろう』って。

 種族が違うんだから仕方ない、そもそもエルフ族自体が子供が出来にくいんだって、でももしかしたら見た目が若いだけで、子宮は50歳オーバーで子供を望めないとかだったら?

 10年が過ぎ、20年を迎えた時に思考の沼に嵌ってしまい、これでは良くないとそれからは年数をあまり考えないようにしてきた。
 全くなかったわけじゃないけれど、沈みそうな時はルティとあえて冒険をしに行ったりして、おっかなびっくりな気持ちに塗り替えたりしてきた。


「でも、もう50年だよ?確かに見た目は大きく変わってないけど、いい加減私に飽きてない?」
「おかしなことを言いますね。むしろ、より一層大人の女性の色香が増したと言えるではないですか。それに50年ではまだまだ新婚です。どうして飽きましょうか」


 またまた、おったまげたな……
 
 エルフジョークかと思いきや、エルフ界の常識らしい。なんと100年までは新婚期というのだ。どうやって新鮮さを保っていらっしゃるので?

 残りの寿命と魔力量に見た目は比例するので、ざっくり残り250年とすると、見た目の変化は通常よりもやや早めではある。寿命はあくまで概算なので+αあると思われるけど。

 
「逆にアオイは私にもう飽きてしまわれたのでしょうか……?」
「そんなことないよ!むしろ以前よりも素敵になったというか……」


 そう、私の見た目が18歳から20代中頃くらいになったということは、ルティにも変化があったわけで。30代前後の見た目になった、(私的)男盛りになる年齢の彼は、更に男前度が上がったと思う。

 ただ、この男はそれには当然気付いているので、「飽きられた」なんて微塵も思っていないくせに、しょんぼり耳まで下げてアピールしてくるあざとさを身に着けてしまった。
 
 毎回わかっているのに、このルティのしょんぼりには弱い私だ。


「しかし、それほどまでアオイが私達の子供について思い悩んでいるとは……これはやはり、夫の頑張りが足りないせいですよね」
「え?いや、そんなことは言ってな……」


「しまった!」と思った時にはもう遅く……『慰めるのも、頑張るのも夫の役割です』と、嬉々として抱き上げられ、深い深い愛の海に溺れたのであった。



 そうして夫の頑張りなのか、それとも相当強い念が籠っていたからなのか――


 それは突然やってきた。
 

「おにぎり握るか!」とお米を炊いていた時に、急に吐き気を催す。

 一瞬食べ過ぎも疑ったけど、米の炊ける匂いが気持ち悪い、あれ?月の障りはいつ来たっけ?最近眠い……などなど、聞き齧っていた知識に当てはまるものばかりだったので、「もしかして……」と、里内にある医院のようなところへ連れて行ってもらった。


「おめでとうございます!妊娠してますよ」

「ル、ルティ!私、妊娠!妊娠してるって!!」
「ええ、ついにあなたと私の愛の結晶が宿ったのですね!」


 安定するまではお知らせを控えようと思っていたのに、私の妊娠は即、里中に知れ渡ることとなった。個人情報の漏洩が半端ない。

 ただ、これもエルフの常識らしく、妊婦や子供は里内で守られる存在なので周知させておくことが大切なのだとか。お陰で今まで以上にSPが増えたような感覚で、里内の遊歩道なんか小石一つ落ちていないし、妊娠中に食べると良いものを届けてもらえたりと、出産前からウエルカムベビー状態だった。

 初産ということもあり私は妊娠・出産はリイルーンから出ないことになった。これには理由があって、転移テレポートには胎児が育つ為に必要な魔力まで消費してしまう恐れがあること、逆に乗り物にしても陸・空共に危険も多いから。

 もちろん、私もそこは同意で、魔法があるとはいえ医療技術には差があるだろうし、まして異種族同士の子供となると、人族同士での出産経験もない私には未知数で不安も多かったからだ。


 そして順調に妊娠中期も過ぎた


 軽いマタニティブルーというやつなのだろうか?大きくなっていくお腹を見て、ルティがどう思っているのだろうと心配になり泣いてしまった。
 
 そんな心配をよそに、それを聞いた彼は『見る度に我が子がここに居るのだと実感が持てて嬉しいです。それに私の愛をそれほどまで求めて下さる時が来るだなんて!』と違った方向に受け入れ、これでもかと愛を囁かれた。

 お陰でマタニティもピンクに早変わり、そこからは誕生をただただ楽しみに待つのみとなった。


 臨月に入った。


 いつも通り早めにベッドに入り、そろそろ生まれるかなぁなんてルティと話していたら、パチン!とお腹から音が鳴った。なんだか生暖かいものが意志とは裏腹に抜けていく感覚……破水したのだと気付いた。

 もちろん知識として「そういうこともある」と知ってはいても、いざ自分にふりかかれば平常心ではいられない。

 こういう時、真っ先に慌てふためくだろうと思っていたルティと言えば、逆にもの凄く冷静に『破水していますが、大丈夫です。すぐに産婆さんを呼びますからね』といい、テキパキとお産の準備を産婆さん、アイさんらと一緒に行っていた。……彼はルティですよね?


 そしてあれよあれよと迎えた出産。鼻からスイカは未だに想像もできないけど、ようするにお産は想像もできない痛さってことにおいての表現としては正しいのかもしれない。
 なんなら意識を失っている間に生まれて欲しかったが、残念ながら意識を失うことはなかった私。15時間戦い続けてようやく、ようやく私達の新しい家族が誕生した。


 無事に生まれてくれた喜びと、私とルティの血を分けた愛しい我が子との初対面に全員うまく話せないくらい泣いてしまった。
 ルティは私を労ってからも『アオイ、ありがとう……本当にありがとうございます』と繰り返し、涙でぐしゃぐしゃな状態だった。でも、それだけ嬉しさと喜びが限界を突破した結果なのだろうと思うと、私も嬉しくて疲れも吹き飛んだ。HPはほぼゼロだけどね。


 ちなみに母乳で育てるのは人族と哺乳類系の獣人族のみだとか。娘は一応ハーフなので産後すぐは飲んでくれたけど、ルティのDNAが強いのか、直に飲まなくなり魔素を取り入れるようになった。
 これには結構なカルチャーショックだったけど、高魔力持ちの成長には必要なことと教えられ納得することにした。


 ルティは結婚前に『アオイ似の娘はアーチャと呼べる名前にしたい!』と言っていたこともあって、一族であーでもない、こーでもないと散々名付けに悩んでいた。
 
 私はセンスがないからお任せしようかなと思ってたんだけど、ふと『エルフ族と人族を明るく照らす架け橋みたいな意味でアーチライトは?』と呟いたら、みんな驚愕の顔で『それいい!!』となってあっさり決まってしまった。

『まさかアオイからあのような発想が出るとは』とか『今までのアオイちゃんには考えられないくらいセンスある名前よね』とか?
 多分みんな悪気はないんだよね。うん、でもそれってディスってると思うんですよ。産後の豆腐メンタル状態の私は密かにシクシク泣きました。ルティは土下座してたけど。


***


 あれから5年、アーチライトことアーチは、夫の希望を汲み取ったのか、髪と肌色、魔力はルティ似、瞳の色、顔の全体的印象は私似の元気いっぱいの女の子へと成長した。
 アーチを相手している時の夫の目じりは常に下がりっぱなしで、一緒におやつを食べている時の夫の長い耳と娘のハーフならではの少し短いとがり耳がピコピコしているところを見るのが毎日の癒しでもある。

『ルーチェと呼ばれたい!』と言っていた割に、初めての発語が『パッパ』だったことから『アーチは素晴らしく賢い子ですね!私をパパとわかっているのですよ!!』と興奮しきりで、結局『パパ』呼び固定となった。

 こだわりなんて可愛い娘の前には簡単にポイっとできちゃうものだよね。

 私的には50年も経ってようやく授かった子供だったけれど、エルフ族からするとで授かったことは奇跡だと言う。たとえエルフ族同士であっても50年は早い方で、異種族間では同族同士よりもさらに遅いとされていたからだ。

 ルティはイクメンというか、娘と妻の為ならなんでもやります・やりたいマンで、手伝うというよりも関わりたくて仕方がないといった感じで、育児ノイローゼになる隙間もなかった。

 それに、あんなに面倒がっていたランクについても、娘に『ララたん(ラトさん)はS、パパはAらから、ララたんのほうがつおい強いの?』と言われ、その日の内にSランクになって帰って来た。
『パパもSランクですし、パパの方が強いのですよ』とアーチにパパはすごいんだよアピールを必死にしていて面白かった。


 基本的には自分たちで子育てを!という考えしか持っていなかったので、頑張らなきゃ!と勝手に一人力んでいた。けれど本当にエルフの里ではみんなが優しく子育て相談に乗ってくれたり、見守ってくれたり、遊んでくれたりと古き良き昭和みたいな雰囲気で、益々リイルーンが大好きになった。

 それにアイさん達も初孫にメロメロで『たまには二人でデートしてきたら?』と言われ、週一回は食材を仕入れに行ったり、時には魔国のお屋敷に顔を出したりと、こんなにノンストレスでいいのかと心配になるほど子育てライフをエンジョイしていた。


「アーチが生まれてからの5年間はあっという間だったなぁ~。つい最近産んだような気がするのに。ルティが言ってた50年が5年っていうのも、アーチの成長を見ていたら案外ありえたりして?」


 昔、小さくなった私の為に作った遊具園の跡地に、ちょっとしたミニ遊園地のような公園を作り上げた。そこで遊ぶ二人を眺めていたら、どうしてもこの喜びを伝えたくなって声を掛けた。


「ルティ、アーチ」
「なんです?アオイ」
「ママなぁに~?」


 二人同時に振り返り、目が合うなり私に笑顔を向けてくれる二人がとても愛おしい。ルティはアーチを抱き上げ私のところまで駆け寄って来てくれた。


「ルティ、私の帰る場所になってくれてありがとう。いつも家族を守ってくれてありがとう。アーチ、ママのところへ来てくれてありがとう!二人共大好きよ、愛してる!」

「あなたは、また急に……私こそ出会ってくれて、愛する喜びを教えてくれてありがとうございます。そしてアーチを産んでくれて本当にありがとう。アオイ、アーチ、心から愛してますよ」


 ルティと私でアーチにチュッ、チュッと両頬にキスを贈る。娘は嬉しそうに足をパタパタとさせて喜んでいるようだ。もちろん娘からも私達にお返しにちゅっとされ、私もルティとキスを交わした。


「アーチもパパとママらいすき大好き~♡」
「ありがとうアーチ、パパは嬉しいですよ」

「ありがとう、ママもとっても嬉しいわ」 


 両手を広げて二人に抱き着く。ルティじゃないけど、片手に愛する夫、片手に愛娘。


 うん、ホント最高に幸せ!

 






 ガラポンの特賞は異世界でした。
 アオイ、推定100歳超え!?異世界で素敵な夫と可愛い娘と共に第二の人生エンジョイしてます!







――…ピコン♪ピコン♪ピコン♪

【神いいねb】





  Fin
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