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ずっと二人でエンジョイしたい…ね?
26:長い、長い…ホントに長い一日②~ゴーシェナイトのパーリィナイトウエディング!!~【魔国編】 ★
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全面クリスタルのように輝く温室の扉が開かれる――
私の隣には、やはり真っ白いタキシードが世界一似合うと思う義兄こと、ゴーちゃんがいる。先ほどは天使の輪…いや、リングボーイを勤め上げたゴーちゃんだけど、『僕もアオちゃんをエスコートしてみたい!』と、鼻血噴射もののお願いをしてきたので、私は貧血になる前に了承した。むしろお願いします!
魔国の方が、ナイトウエディングになった経緯としては、まぁ第一に古いかもしれないけど、嫁ぎ先側で挙げたかったのと、リイルーンの方がガーデンウエディング向きだったから。
魔国は当日のお天気に左右されちゃうので、むしろ夜に温室でやろうということになったのだ。
クリスタルのようにキラキラと輝く温室の中は暖かく、薄手のウエディングドレスでも全く問題のない環境だ。そして、ナイトウエディングらしく、魔灯と宝石の輝きを融合させた、大変煌びやかな式場となっていた。もう、キラッキラのシャラランって感じと言いますか。
ゴーちゃんが主にコツコツと作り上げてくれたようで、『世界に一つだけの花で作ったよ』と細かい宝石を散りばめて作られた、色とりどりの宝石花のブーケとティアラに私の涙腺は完全に決壊してしまった。『もう無理、泣く!綺麗!素敵!やっぱり泣く~』と語彙力まで崩壊した。
若干、もらい泣きしそうなゴーちゃんに涙を拭いてもらいながら、今度はゴーちゃんとバージンロードを歩く。義兄とバージンロード……いえ、天使と歩いてるだけですけど何か?
式当日の服装について、ゴーちゃんから相談を受けた時に、脳内お花畑の私が白いタキシード一択しか権利を与えなかったせいで、ゴーちゃんが新郎のように見えなくもない。
元の世界なら間違いなく揉めるだろう
でも、こちらの世界では結婚式=白のイメージがあるわけではないので問題ナッシングですし、理由を知っているルティからは嫉妬はなく、むしろ同情だけだった。そんなに駄目?
それに白って言うてもたくさんあるやん?私とルティの白は同じだけど、ゴーちゃんの白は汚れなき白をイメージしてますのでね!洗濯洗剤のCMにも出れますよ!!
「アオちゃん、こっちのドレスもとっても綺麗で似合っているよ」
「ありがとうゴーちゃん……ゴーちゃんは、羽がもがれても天使だよ」
「そ、そう……。じゃあ、行こうか」
「うん。宜しくお願いします」
エスコートの邪魔になるからと、残念ながら羽は外した状態ではあるけれど、リイルーンで降臨された景色ごとバッチリ記憶しているので、脳内CGできちんとくっつけておく。
さすがに二度目なので、ルティが飛び掛かってくる心配はなさそうだったけど、私の締まらない笑顔におそらく思考を読まれているのだろう。
溜息も「ほぅ…♡」の方じゃなくて「ハァァ…」の残念な方。結婚式だろうが案外マイペースなのは年の功でしょうか?
温室とはいえ、花が少ないからとガラスでできた花が生花の隙間に挿してあって、魔灯で照らされていた。他にもリボンやスパンコールみたいなものを駆使し、キラキラを通り越して、ギラギラになりつつあったけど、昼間とは全く違い、慣れ親しんだ友人たちに祝ってもらえる幸せを私は噛みしめていた。
そして、こちらでのリングボーイを務めてくれるのは、なんとラトさん!『どう考えてもゴーシェばっかり役目が多すぎる!ズルい、俺だって義兄なのにっ』とゴネにゴネまくったので、『ぜひ…』とお願いしたら、本気で泣いて喜んでいた。ラトさんも義兄になるのだから、なるべく平等にしないとね
そんなラトさんもやはり美丈夫ではあるので、キチンとした格好で口を開かなければトキメキがメモリアルしちゃうかもしれない。ようやく「モテる」と言っていたことに納得できた。
「やぁ……リイルーンの時のトレーンが長いドレスも綺麗だったけど、こっちの形はシンプルなのに首回りや手首までがレースっていうのが上品で素敵だね。思わず攫っちゃいたくなるなぁ。指輪、俺がアオイちゃんにはめてもいい?」
「ふふ。ドレスを褒めて頂いて、ありがとうございます。でも、指輪はご遠慮しますね!」
私のさっきまでのトキメキを返して頂きたい。最近はかなり落ち着いたと思っていたのに。まぁきっと照れ隠しかなにかなんだろうけどね。ルティが怒る前に、戻った方がいいですよ~
「ラト、私も思わずあなたをどこかへ攫ってしまう可能性があるので、指輪を置いてさっさと退場して頂けませんか?できれば、あちらの出口側へ」
「あちらのって……玄関の方じゃねーか!?今日はここに泊まるって言ってあるから、絶対帰らないぞ!」
ほらー!!やっぱり怒っちゃったじゃない!!なんで今日くらい大人しくしてくれなかったのかなぁ?リイルーンの時はすごく仲の良い兄弟って感じだったのに。腕を掴んでおくから早く逃げてーー!!
「ル、ルティ、そんなことより早く指輪をはめて欲しいな。二つで一つ、なんでしょ?」
「そうですね。こちらをはめると指輪幅も合うかと……私達も二人で一つなので、指輪にもその想いを込めてみました」
リイルーンではめてもらった、ラズベリー色のルベリウスのはまったプラチナリングと、今回はめてもらった月の輝きに似たフェルスパーがついたリング。
確かに二連揃えると程よい……ってあれ?
「ルティ……これ、くっついてない?バラバラの指輪のはずよね?」
隙間らしきところをカリカリしてみるけど、瞬間接着剤でもつけましたかってレベルでくっついている
「ええ、二つで一つ、ですから。一つになるように魔力で合体させているのです」
「えぇ!本当にくっついたんだ…すごい。でもフェルスパーにルベリウス、プラチナの銀色、見事に全部ルティ色だね」
これなら、誰が見ても「あなたのご主人はこの人ですね?」って思うよね
「あ、強いて言えば、プラチナではなくオリハルコンです。絶対に壊れないように、と願いを込めまして」
「は?オリハルコン……?なんかファンタジーではよく聞いた、伝説級の?どちらかと言えば武器向きでは?」
『絶対に壊れない』の圧がスゴイ……「願い」ではなく「念」を込めたのは「指輪が」なのか「関係が」なのか、、、うん。両方だね
「そんなに大したことはないのですよ?ちょっとトレーニングで山登りへ行ったら、偶然見つけたようなものです。とは言え、やはり世界一硬いので加工に時間がかかりましたけど」
「へ、へぇぇぇぇ……大事にするね」
山登りって、ちょっとコンビニに行くような感覚なのだろうか。そして『道端で100円拾っちゃってさぁ』みたいな感覚がオリハルコン…?
「私がアオイの色の石に選んだオニキスは<夫婦の幸福>という石言葉がありますし、もう一方はお揃いのフェルスパー、これはアオイの誕生石ですよね。<災いから身を守り、幸せを呼び寄せる>まさにアオイに身に着けて頂きたい宝石です」
彼はオリハルコンにオニキスと、もう一方が黒く染めたというオリハルコンにフェルスパーの組み合わせで、黒地に月のような石の組み合わせは素敵だった。二人でよく月を眺めているから、私はこの石のチョイスはすごく気に入っている。
そして迎えた二度目の誓いのキスの時、うっかり休憩中の時を思い出してしまい、急に恥ずかしくなって思わず顔を引いてしまったのだけど、そんなことを彼がさせてくれるはずもなく……
むしろ引き寄せられて濃厚な誓いになってしまったことは、ぜひとも皆の記憶から消してもらいたい。
こちらでは昼のリイルーンでのアフタヌーンティー的な軽食ビュッフェと違い、割としっかり目のディナービュッフェをバーべさん、フランベさん、陳さんが張り切って用意してくれた。
私もリイルーン同様にノーマルなプリンタルトと、ラズベリー入りのプリンタルトをせっせと作って用意していた。
結局あの様々な情報源となっている『雑誌』には、余計なことにファーストバイトのシーンの写真まで出ていた。
勘の良いルティに『結婚式ではこのように新郎があーんとするものなのでは?二人の仲の良さを周知させるのにはピッタリですよね』とニコニコ期待の眼差しで言ってくるので『そうかもしれない……ね』と返さざるを得なかった。
そしてあくまでも新郎のみとしか情報を与えていないはずなのに、『私もアオイに食べさせたいのですが、してはいけないのでしょうか……?』としょんぼり捨て犬のような目で見られては『花嫁にもやっていいような……気がする』と返さざるを得なくなるわけで。
でも、私もだいぶ強くなった!このファーストではなく何バイト目かの給餌行動を逆手にとり、花嫁のくせにあれ食べたい、これ食べたいと言いながら、しっかり食事をしましたよ。小籠包はやっぱり美味しいなぁ~
キラ君が持ってきた竜王様の音声祝辞にはビックリした。泡のようなボールを弾くと音声メッセージが聞けて、そのまま消えてしまうものだ。持ち運べる言玉なんだって!
『結婚おめでとう』というメッセージと共に、『所帯持ったなら安定した仕事をしないか?』と、また引き抜きの話まであって、ルティは非常に嫌そうな顔をしていた。祝辞に見せかけた勧誘?
***
それから夜の暗さを生かして魔灯を消し、星空マーケットでも使用した星形のランタンだけを灯した幻想的な雰囲気の中、友人たちの歌や、手紙の披露なんかもあって、これまた涙腺ダムが崩壊、大決壊!
上を見上げれば、温室のガラスを通しても尚、月や星が今日も変わらずに瞬いていた。私とルティは少し休憩の為に離れ、同じ温室内に簡易的に設けられた休憩室で二人掛けの小さなソファへと腰掛けた。
二人きりの空間だけに、ルティが『アオイを充電します!』とか言ってきそうだなぁと身構えていたら、水を一口、二口飲み、『結婚式のことなんですが…』と、ポツリ静かに話し始めた。
「……当初は二人きりか私の両親のみで式は行えればいいと考えていたのです」
「……うん」
「ですが、アオイとの交際が始まり、さらに学園に通ってからは次々と他者との関りも増えて……煩わしいだけだと思っておりましたが、案外悪くないものですね。こうして皆に祝福して頂けるのは」
「うん。ありがたいことだよね、本当に。でも、ルティがそう思えるようになったって聞けたことが私は嬉しい」
昔は幸せそうな人たちを、ただ円の外側から眺めているだけの人間でしかなかった。
視線を外にやると、温室のガラス越しに会話や食事を楽しむ友人たちが映っている。学園でもそうだけど、人種も違えば、髪色も様々で……今日は会場が特別キラキラしているせいなのか、まるで宝石箱をひっくり返したみたいだなと思った。
それぞれが幸そうな笑顔に満ちていて、思わずこちらも自然と笑顔になる
今、私は信じられないことにその幸せの輪の中にいる。夢の中の出来事なんじゃないかと、夢ならば覚めないで欲しいと願うほど、怖いくらいの幸せの中にいるのだ。
悲しさや悔しさ、痛みなんかの涙は我慢できたのに、感動や幸せ、喜びからくる涙は全然止められないのはなぜだろう?零れ落ちないように上を見上げても意味はなくて、次々に溢れてくる。
幸せも愛と同じように内から溢れて出てくる感情なんだ
思えば、いつもなら泣いている私を気にするであろうルティから何のリアクションもないことに気が付いた。隣に視線を向ければ、彼もまた私と同じように空を見上げたまま泣いていた。
夜露に濡れた花が、その雫を溢すように、一度流れた涙の筋を辿り、次々に零れ落ちていった。
どれほど流れようとも一切拭うこともせず、銀のまつ毛から零れ落ちる雫は、月が流したものかと見紛うほどに輝いていて、思わず魅入ってしまうくらいで……美しいな、と思った
どうして泣いているの?なんて聞かない。きっと彼も同じ理由のはずだから
私は黙って彼の肩に頭を寄せた
ねぇルティ、私達幸せだね
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