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ずっと二人でエンジョイしたい…ね?

(別作品との)コラボ小話:子犬になった恋人 ☆

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 コンコン、3回ほどノックをしたけれど、部屋の住人であるルティからの返事はない。ちょっとマナー違反ではあるけれど、鍵が掛かっていなかった為、こっそり部屋の中を覗いてみた。
 念の為、弁明しますが『心配だったから』ただそれだけです。万が一にも倒れてたら…ねぇ?まぁ、ほぼ考えられないけどさ


「ルティ…?お邪魔しま~す。あれ?いない……」


 昨夜、『ギルドから火急の仕事が入った』と、毎度の如く舌打ちをした後、討伐に出掛けたけど……普段なら何が何でも朝には戻っていたのに。今回は相当に手強い魔獣なのかな……


「はぁ、今日中には戻るかな……心配だなぁ」


 ため息を一つ落とし、部屋から出ようと思ったら、ベッドの枕元辺りでモゾモゾと動いているのが視界に入った


「ひゃっ!なに?魔獣!?わ、どうしよう…背中を見せずに後ずさりがいいんだっけ?それともなるべく、こちらも大きく見せるために両手両足を大きく広げて威嚇しながらがいいんだったかな……」


 誰か助けを呼ぶにしても、今ここで大声を出せば救援がくる前にやられてしまうのがオチだろう
 
 何に効果的だったかは覚えてないが、魔獣も大型動物のようなものだろうということで、何とも情けない姿だがレッサーパンダがやっているような威嚇ポーズのまま、視線は魔獣らしきものへと向け、静かに後ずさる。ガオー!!

 モゾモゾしていた魔獣っぽいやつが、絡まったシーツからガバリとようやく顔を出した。魔獣=可愛くない認識の私は、ぶちゃ顔を想定しつつもコソっと離れた場所から見てみた。ここからならすぐに廊下に出られる立ち位置だ。


「ワン!」


 なに、『ワン』だとう?犬っぽい魔獣かな?どうやら小型魔獣のワン太郎(仮名)は小さな尻尾をブンブン振っているようだ。でもどうせぶちゃ顔なんでしょとは思ったけど、可愛い鳴き声につい導かれ、その顔を確認してみた。


「あれ?犬っぽいじゃなくて、ホントに犬じゃない?よく見たら…か、可愛いっ!!」


『君は犬かい?』と聞くと、賢いワンコは『ワン!』と鳴いたので、もう犬確定だね。それにしてもどこから入ったのだろうか?一応、ここのお屋敷はカーモスさんがアンテナビンビンに張っているからネズミ一匹入れないと聞いていたんだけどなぁ……

 悪意がないピュアワンコは素通りできるってことかな?ここにはピュアな天使が実在するのだ、そうに違いない。


「君はどこから来たの?首輪もないし……ちょっと汚れてるから、迷子犬?どうしようかなぁ~私動物すごく好きだけど、この世界ってワクチン接種とかあるのかな?ないよねぇ……。ねぇ、君は噛まない?」


「ワン、ワン!!」
「え、すごい!?お返事できるの?賢いんだねぇ~。とりあえず、う~ん…ケガはしてないみたいだね。お風呂で洗ってあげようか!」

「ウワン!!」
「うふふ。お風呂好きのワンコかぁ~。ってことはやっぱりお金持ちの家のワンコかもしれないねぇ」


 とりあえず、綺麗にしたら一度カーモスさんに相談してみようかな


◇◇◇◇


 昨夜の内に討伐を済ませ朝方に屋敷に戻ると、カーモスと新しく雇った料理人が待っていた。全く嬉しくもない出迎えだったが、アオイの望みを叶えるおやつが完成したから試食するか?とのことだった。


「彼女の望み?どういうことです?」


 なぜ、私ではなくお前たちが彼女の望みを知っていて、更にはそれを叶えようと言うのか。どの道、得体の知れないものを彼女の口に入れたくはないので、私が一つ毒見をすることにした。

 ふむ。食感は悪くはない、至って普通のクッキーだ。こういう素朴な手作りクッキーは、彼女の好みと言える。しかし、どの辺が【彼女の望みを叶えるもの】なのかは全くわからない。


「毒味とは失礼ですね。これでもちゃんと元に戻ると保証する魔法誓約書も書いているのですよ?効果は一つで一日。お前は一枚食べたから、一日姿が、きちんと戻るから安心しろ。ふふ、臨床実験は済んでいるからな」
「は?実験……うっ!」

「私に感謝するといいですよ。お前の愛する彼女の望みは何でも叶えてあげたいのだろう?」


 身体になにか異変を感じ、急いで自分の部屋まで戻った。どんどん視線が低くなっている気がする!これは一体……


「ワン…!!!?」


 まさか犬に…しかも子犬になってしまった!?これは誰かにバレてはマズイと思い、着ていた服を引きずりベッド下へ隠した。
 しかしそこへタイミング悪く、急にアオイが訪ねてきてしまう。もうそんな時間か……慌ててシーツに潜り込むも、結局見つかってしまうとは、この短い手足は中々に不便だ。


 子犬とはいえ、体内に魔力は感じられる為、恐らく清浄クリーンは使えるのだと思うが、せっかくアオイが洗ってくれるというのだ、断る理由はない。


「それにしても、君は生後何ヶ月くらいかなぁ?オス?メス?……あ、オスなんだねぇ」
「くぅん…」


 なんてことだ!!アオイが私を持ち上げ、あろうことかこんなに間近で見られるだなんて!!いやしかし、これは仮の姿であって、本来の私ではない。犬、犬、今は犬だ!!

 それでも大切な何かが失われたような気がするのは気のせいだと思いたい。無心になろう……


「お湯加減はいかがですかぁ?いいでしょ、桶でお風呂気分!君は大人しくて良い子だねぇ。飼い主さんの躾けがいいんだね」


 ちょうど良い湯加減と、彼女の絶妙な洗い心地に、自然と『バフッ』と声が漏れ出る。ただ、全身くまなく洗われているので、少し緊張する場面もあるが。子犬で良かった……
 綺麗に流されると、犬の習性なのだろうか?ぶるぶるっと全身の水気を切る行動を起こしてしまった。


「きぁあ!!も~う、私がビショビショになっちゃったじゃない。まぁ仕方ないか、習性だしね」
「くぅ~ん…」


 あぁ!!私としたことがっ!これでは彼女に風邪を引かせて……あ。。。
今日は私が用意できなかったせいで、彼女が自分で服を選んだようだ。そのチョイスが白のブラウスとはっ!!水滴とのコラボレーションが実に素晴らしい!!まさに水も滴る艶っぽいアオイに尻尾が勝手に反応する


「あははっ!そんなに気持ち良かったんだ。ヨシヨシ、じゃあ一緒に乾かしちゃおうね。風魔法は加減が難しいんだけど……<乾燥ドライ


 彼女の若干強すぎる風魔法でお互い乾燥し、ブラッシングを……となったのだが、当然部屋には犬用ブラシなどはない。嫌な予感しかしないが、私を胸にギュッと抱いたままカーモスの元へ向かった。あぁ、この胸に抱かれたまま、今なら死ねる……


「あ、カーモスさん!すみません、ワンちゃんに使っていいようなブラシってあったりしますか?」
「おはようございます、アオイお嬢様……おや?その生意気な目をした畜生はなんですか?私としたことが……残飯を漁りに潜り込んでおりましたか」


(チッ。やはり、バレている……当然か。とにかく余計なことだけは言うなよ?)

 子犬姿なので全く迫力も何もないが、精一杯睨みを効かせ、小さい牙を見せておく……鼻で笑われた


「え、畜生……?ん~生意気そうですかね?ちょっと目が赤っぽいけど、結構洗ったら品の良いワンちゃんに見えるんですけど。カーモスさんは動物嫌いでしたかぁ、残念」
「そうですね、私は動物はちょっと……やはり人型をとれる者との触れ合いの方が好きですね」


(彼女にそういう話はするなと言っているのに!!お前は三度ほど死んで来い!!)

 鼻で笑われようが関係ない。彼女に悪い影響を与えるランキング上位に置いているカーモスは許せないと唸る。大型犬であれば思い切り飛び掛かれるのに、今は彼女の懐から出ることすらできない。


「グルゥゥ…」
「あっ!こら、唸らないの!ヨシヨシ……落ち着いて。カーモスさんは、動物はダメでも獣人族は大丈夫ってことですね?ようするに意思疎通ができない動物がダメってことかぁ。結構動物も感情豊かなんですけどねぇ。もふもふは最強ですよ!」


『ね?君は言ってることがわかる賢い子ですよねぇ~』と笑顔で顔を近づけてくるものだから、思わずペロッと舐めてしまった。残念ながら鼻先だったが。
 いつもは小さな顔が、今は視界いっぱいに彼女が映って…これはこれで眼福だ。一瞬で怒りの炎も鎮火する


「くくく……アオイお嬢様は相変わらず……。では、食堂に動物はご法度ですので、何か摘まみやすいものとブラシは後ほどお部屋へお持ち致しますね」
「わぁ、ありがとうございます!あと、この迷い犬の飼い主さんに心当たりがあれば……そもそもどうやって探せばいいのかわからないんですけど」

「この駄犬の飼い主、ですか?おそらくはじゃないですか?この素性もわからない駄犬を飼いたいのですか?」
「え?飼ってもいいんですか!?私、犬が大好きで!!あ、でもルティが帰って来てから聞かないとかな。ダメって言うかなぁ……」
「きゅんきゅぅ~ん…」


 先程から黙って聞いてれば<畜生・駄犬・捨て犬>などと……しかし、アオイがそこまで犬好きだったとは。私では代わりになりませんか?むしろ飼って下さい、自分の世話は自分でしますので!!

 訳知り顔で、ニヤニヤとこちらを見ながら準備に向かうカーモス。元に戻った後にも間違いなくつついてくるに違いない。自分で仕向けたくせに……陰湿クソ野郎め


 彼女のふかふかの胸に抱かれ部屋に戻ると、思ったよりもすぐに食事とブラシをカーモスが持ってきた。姿は違えど、二人きりの部屋で二人きりの食事に胸が躍るが、今は尻尾がぶんぶん踊っている。


「じゃあ、君がこっちのお皿ね。自分で食べれる?あれ、子犬ってまずは掌に載せて食べさせるんだっけ?…よし、じゃあこの茹でササミがいいかな、これでどう?」
「ワン!」


 終始、優しい眼差しと子犬を可愛くて仕方がないといった表情をして見つめてくれている。掌に載せられたササミ肉は、過去一美味しい……思わず彼女の指までペロッと舐めてしまった。もちろん、汚れを取る為に舐めたのですが。

 彼女との楽しい食事時間はあっという間に終わってしまったが、『次はブラッシングだよ!』と彼女がブラシを持って膝をポンポンと叩いた。もちろん小走りで膝に飛び乗った。今なら空も飛べそうです!


「おお~梳かせば梳かすほどツヤが出ますねぇ~!ねぇ、君は本当に誰にも飼われてないの?」
「ワン!」
(しいて言えば、気持ちはずっとあなたに飼われておりますよ!)


「じゃ、じゃあさぁ…名前つけてもいい?」
「ウワン!!」
(喜んで!!)

「う~ん……銀の毛並みに赤っぽい目…ルティっぽいよねぇ。似た名前つけたらルティ…あ、私の恋人なんだけどね。でも嫉妬深いし、怒るかなぁ?カーモスさんみたいに動物嫌いとか、捨ててこいって言われないかな…?」
「ワン!ワン!」
(そんなこと言いません!あんな男と一緒にしないで下さい!)


 わかって欲しくて、アオイの口をペロッと舐めた。すると彼女が『うふふ。慰めてくれてるの?それとも愛情表現かな?』とまさに気持ちに気付いてくれた。
 彼女は嫌がらず、顔を近づけてくれたので、何度も彼女の唇に触れた


「あ、名前―――はどうかな?」
「!!!?」


 え!?子犬の小さな心臓も思わず跳ねた。彼女がきゅっと私を抱き締めて、かつての呼び名『ルー』と呟いたから


「ワン、ワン、ワン!!」
(あぁ、なんて素晴らしい!例え犬になろうとも、彼女は子犬を私と重ねて見てくれている!これぞ究極の愛ではないですか?)


 私もつい興奮してしまい、同じ場所をぐるぐると回って全身で喜びを表していた


「え、そんなに気に入った?私の恋人のね、以前の呼び方なんだけど怒られるかなぁ~。ダメって言われたら変えちゃうけど、今は【ルー】ね!ルーの尻尾は可愛いのぅ~お尻もぷりぷりだねぇ」


『ルー、もふってもいい?』と言い出し、「もふ、とは?」と小首を傾げると、急に彼女が興奮し出し、私を『ほわぁぁぁ!!可愛ええっ、可愛ええ~!!』と言いながら体に顔を埋めてスーハ―したり、わしゃわしゃと身体を揉んでくる。
 も、もう、アオイ、私死んでしまいそうです……嬉死うれしにます!!子犬バンザイ!


 彼女は私が他の者に噛みついてはいけないと、一日中二人きりで部屋の中で遊びながら過ごした。ボール投げは特にお気に入りだ。もちろんボールを取ることが楽しいわけじゃない。
 投げたボールを咥えて走って戻ると、彼女がそれはそれは褒めちぎり、撫でまわし、『ルーは賢い、偉いねぇ!』と言って口づけをしてくれるのだ。もう、一生ボール遊びをしたって構わないとさえ思う。


 残念ながら、晩のシャワーは一緒には浴びれなかったものの、湯上りで頬を赤らめた彼女の温かな胸に抱かれ、一緒のベッドで休んだ。寝言で一度『ルー…』と呟いたのを聞いた時は、もう犬のままでいようかと少し考えてしまったほど、私は幸せな気持ちに満ちていた


***


「ひゃぁぁぁぁぁ!!ル、ルティ!!なんでここに!?それに、ふ、服は……?」


 朝になり、彼女のびっくり大音量で目が覚めた私は、元の身体に戻っていた。夢のように素晴らしい一日だったと思い出に浸りたいところたが、どうやら今は現実のようで……私は全裸状態だった。まぁ、犬でしたしね


 特に彼女に見られて恥ずかしいことはないものの、私にそっちの性癖があると勘違いされては困るので謝罪し、すぐに部屋着に着替えた。言い訳は、『寝ぼけておりました』で押し通しました。



「あ、ねぇ、ルーは?ここに一緒に寝ていた可愛いワンコは見なかった?まさか、、捨ててないよね?」
「ルー?ワンコ?いえ、私が来た時にはアオイは一人で寝ておりましたよ」

「そうなんだ……やっぱり飼い主の元に帰ったのかな。私のルーになるって思っちゃったから、ちょっと寂しいなぁ」
「そのルーもアオイの優しさに触れて、飼い主を思い出したのですよ、きっと。ルーの代わりに私がずっとそばにおりますよ、ね?」


 寂しそうに俯く彼女の頬を包み、瞼、頬、鼻へと軽い口づけをし、最後の唇には角度を変え何度も深く口付けた。


 あぁ、やはり私は犬ではいられないな……


 犬ではこうも深く口付けはできない。なにより私を見つめる瞳に熱が籠るのはこういう時だからだ。
 私としては昨日も一日彼女のそばにいたのだが、彼女にしてみれば一日私に会えなかったわけで……私の予想よりも遥かに寂しがってくれていたことが、とても嬉しい。


 こんなご褒美が待っているのなら、このあとカーモスがさらに煩わしくなろうとも、全てが些末なことのように思える。もはや、どうでもいい


 昨日たっぷり甘えさせてもらった分、今日は存分に彼女を甘やかそう。


「アオイ、寂しい思いをさせた分、今日は二人きりで過ごしましょうね」
「うん、ありがとうルティ。大好き」



 そうして私は彼女を独り占めするのだ。


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