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修学旅行をエンジョイしたい!~ワノ国へGO~
20:生徒諸君、ここがセイトです!~ワノ国修学旅行編③~ ★
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泊まる場所がビジネスホテルっぽい作りだったのは、ちょっと残念だったけど、代わりに日本の心<温泉>が標準装備されていた!!
私は普通に脱いで入ろうと思っていたんだけど、周りの女子を見れば水着を着用しているではないか!?良かった……空間魔法にしまってなかったら、今頃は部屋の小さいシャワー室だったよ
今回は修学旅行なので、エリアごとに宿だけは決まっている。一日目にアジェア側へ行ったグループはアジェア側の宿、トウト・セイト側へ行ったグループはその間にあるチュートの宿へ泊る。
グループ行動では別々だったけど、宿では女子’Sとも一緒になり、ちょっと夜更かししながらガールズトークができた。中でもアーチェリーちゃんが、SHINOBI脳に侵されているハガネ君が気になって仕方がないようで、みんなにいじられまくっていた。恋バナって人の話は最高に楽しいよね!
翌朝、女子たちは若干目をしょぼしょぼさせながらも、バッチリメイク組は今日もしっかりガッツリメイクをして、各々のグループへと合流していった。出発前にアイさんに持たされた、エルフ印の新作オールインワンは最高に楽です!
「みんな、おはよう~!ハガネ君、今日も宜しくね」
「ふぁあ~……ルティ、ゴーちゃん、みんな、おはよう」
「おーおはよ」
「おはようでござる!姫、道案内と護衛は任されよ!」
「あれ?アオちゃん抱き枕は使わなかったの?抱き枕のお陰で、僕はちゃんと寝ることができたよ!」
「ふふ、アオイは私をそばに感じれなくて眠れなかったのですよね?私もそうでしたし……よもや、楽しく話に花を咲かせていたせいで寝不足になり、本日の観光デートをお昼寝に充てようだなんて思ってもいないですよね?」
ウップス!急に胃が痛くなってきたぞ!?脂汗が止まりませんな。正直、移動中はうたた寝していても大丈夫だろう~なんて考えていたとは言える雰囲気では全くない。
「え、お話ですか?あぁ、アオイちゃん、昨日はたの…」
「あー…はいはい、アーチェリーちゃん!!き、昨日さ、今日の観光の回る順番とかを再度確認とかお土産どうするとか、あ、あと忍びの館のレポートもまとめたよね!!ねっ!?」
『DA・YO・NE?』と目を最大に見開いて、アーチェリーちゃんに念を送る。届け!熱き想い!!
「あ!ああうん、そうだった、、、かも?結構時間かかっちゃったんだよね~あはっ!」
「そうそう、やっぱりレポートって大変だよねぇ、あはは。今日はまとめながらメモをとらなきゃね!」
「は?でも、アオは見学だっただろ?どうレポートにまとめたんだ?」
「余計なツッコミしないで!わびさびの心を学んだんだよ!」
「確かに、僕はシースーについていたワサビは結構辛いって思ったよ」
「ゴーちゃん、おしい!だいぶ違う!!」
***
はーい!気を取り直してセイトに到着!!
居眠りをこいたら、ルティが不機嫌になりそうだったので、今日ほど瞼に目を描きたくなった日はないと思いながらも、眠くなるたびにルティを見つめることで乗り切った。怖さで目がシャキ!だ。
「へぇ~ここがセイトかぁ……くんくん…あれ?こ、この匂いは!?」
「匂い?あぁ、なにか濃いソースのような匂いがしますね。思い出の香りですか?」
間違いない!20m先付近から、食べたことのある思い出の香りがする!!フードハンターの嗅覚が食べるべし!買うべし!って言ってるよ!!
「ルティ、ここ!ここから匂うよ!!持ち帰りのカットされた【ミックス焼き】、買ってきてもいいかな?」
「いいですよ。一つ頂きましょうか」
「お前、朝食のバイキングもめちゃくちゃナットー食べてたのに、また食べるのか?」
「あのナットー食べれたのはアオちゃんとハガネ君だけだったよね?二人で食べ尽くす勢いだったけど」
だって、今を逃したらまたしばらく食べれないと思うと、食べる以外に思いつかなかったのよ!バイキングのものは空間魔法に入れるわけにはいかないしね。
それにお口の臭いとぬるぬる感は【清浄】で綺麗さっぱりになるってわかったら尚更よ!珍しくルティが少し席を離れていたから、あの臭いが本気で苦手なのかもしれない。納豆はエルフ避けになるらしい……
割りばしのようなものに刺さったミックス焼きは、テイクアウトなので、カットピザのような形状になっているけど、どう見ても【お好み焼き】そのものだ。
「では、実食!………ほう、うんうん…なるほど」
「おや?思っていた感じと違って……ってアオイ!どこへ行くのです!?」
結論、キタコレ!!めっちゃ美味い!!口内に沁みるソースの風味に悶える!!私は屋台のおっちゃんの元へ真顔でスタスタ向かい、出汁、ソース、その他もろもろ売ってもらえるものは購入&仕入れ先をリサーチしてきた。うむ、レポートは<他国の食文化の考察>ってタイトルでいいだろう。4000字は軽く語れる。
「と、いうわけでルティ、私は出汁、ソースと共に色んな味噌、お米なんかの仕入れにひとっ走り行って来るから、先生の点呼はうまく誤魔化しといて!」
『じゃ、グッドラック!』とカッコよく決める前に、当然すぐに手首をガシッ!と捕まれ、私の仕入れの旅はスタートすらさせてもらえない。気分は最高潮からすぐに転落
「お待ちなさい。全く、なにが『と、いうわけ』なのですか!やはり、ワノ国は二人だけでゆっくり訪れるべきだした。知り合いもいないこの国で迷子になったりしたらどうするのです?それこそ人攫いだってありえますよ?」
「だって……今日で観光も終わりだし、思い立ったが吉日じゃない。せめて場所だけでも見つけておけば、あとはいつでも転移で来れるようになるしさ……」
調味料の為なら、多少あざとくもなる。しょんぼりしつつも、行きたい気持ちを前面にアピールしてみた。
「ハァ……わかりました」
「え?本当!?じゃ、じゃあ……」
「なにかあれば、国ごと消し去るしかないようですね……」
「ゴメンナサイ!!!私が悪うございました、考え直して下さい!」
闇も頂点を極めると魔王と化すことが判明した。育成ゲームであれば、私には善人な勇者を育成するよりも闇堕ち魔王を育成する才能の方があるようだ。きちんと膝に土をつけ、正しく土下座で謝った。
自分の非については渋々ながら認めるものの、爆上がりしていたテンションを地に落とされるのは辛いものがある。すっかり気持ちはやさぐれてるのに、加えてどの口が言うのか、集団行動の在り方について懇々とお説教を頂きながらトボトボ歩いていると、どこからか聞き覚えのある掛け声が聞こえてきた。
「あいよ~!ヨ、ハイ!ヨ、ハイ!……」
「ハイハイハイハイハイ!!!!……」
みんなも気になったのか、声の方へ向かってみると、人族らしからぬ動きで、高速餅つきを行っていた!なんとこの世界にもこんなパフォーマンスが存在していたとはっ!!
「お餅!!ルティ!餅つきしてるー!!あれだよ、前に新年に餅つきって話したやつは!わぁ~すごい!つき手とかえし手の阿吽の呼吸!高速餅つきを直に見たのは初めてだぁ~カッコいい~」
「……カッコいい?あれが、ですか?あのような動きで良いのなら余裕ですよ。キラ、私が「つき手」側をするので、あなたが「かえし手」といっている方をやりなさい」
「は?なんで俺……はいはい、生徒は口答えしない。だろ?わかりましたよ」
高速餅つきの隣には、観光客向けの餅つき体験ブースまで設けられていた。私もちょっとやってみたかったのに他のメンバーは私をジッと見た後に『キネってやつは重いっていうしやめた方が…』とか『どこかに飛んで行ったら危ないし』と言われ却下された。手裏剣の汚名はしばらく消えることはなさそうだ。
ドスン!!と臼ごとぶち壊す気なのだろうかと思われる音がし見てみると、ルティが不敵な笑みを浮かべながら、餅に手を触れようしていたキラ君のその手を目掛けて杵を振り下ろしていた。なにしてんの!?
「おや、すみません。あまりに軽いものですから、つい振り下ろしてしまいました。でもこの程度の早さ、どうってことないですよね?」
「……あっぶねぇ…コノヤロー……ふん、あまりの遅さにモチがつけるのか心配になるぜ」
「ほ……う、わかりました」
「本番はもう少し早くしてくれよな」
ルティが更に目を細めて、氷の微笑をキラ君へと向ける。なぜにキラ君も煽っちゃうかな!?完全にキラ君も「喧嘩上等!」みたいになっている。
ホカホカのお餅をつくのは、お餅が冷えて固くなっちゃいそうなくらいの冷気を纏った美しいエルフと、中和する為に熱い闘志を纏ったこれまた顔の整った竜人青年のペア。
先ほどの高速餅つきを行っていた店員さんも作業を止め、なぜか他の観光客もこちらに注視していた。目立つ外国人ですからね。
まるでプロレスの試合でも始めるかのように『はじめっ!!』の合図が鳴り……目にも止まらぬ早業とはこのことかってくらい、写真で失敗してシャッと伸びてしまった手みたいな見え方になっている
あまりの早さに店員さんも30秒ほどでストップをかけたけど、餅はすでに事切れており、スライムのようトロトロになっていた……なんてこと!
はっきり言って、もう美味しくもない状態ではあるのは明白だったけど、餅米が勿体ないし、パフォーマンス自体も残念なものになってしまうのではないかと考えた私は、空間魔法から作り貯めていた手作りアイスクリームを取り出し、餅つきを何かの格闘技と勘違いしているドアホ二人に、アイスが溶けないように少し冷ましてもらったり、掌サイズに薄く餅を伸ばしてもらったりした。
その中にアイスをポイポイ落とし、包んでもらって、即席で<アイス大福>作り上げた。モチロン大好物のアイスだ。
これをとりあえずモデルの口に放り込む。君には客寄せパンダになってもらおう!
「おお!アオイ、これは中々新食感で美味しいですね!」
「へぇ~アオちゃん、僕も食べてみたいな……うん、あっ、美味しいねぇ」
この全く演技ではない美形男子たちの感想を聞いた野次馬観光客からも試食を求められ、ついでにお餅屋さんのお土産も売れて行く相乗効果!
全てさばき終わり、餅屋さんには迷惑料代わりにアイス大福のレシピも渡しておいた。餅のことは餅屋に任せるべしだよね。きっとさらに改良してくれるはず!
私は一つだけ自分用に取っておいたアイス大福を食べようと、空間魔法から出してまさにイタダキマス!の瞬間だったのに、正面にじーっと(アイス大福を)見つめる小さな女の子と目が合ってしまった……
「これ、食べる……?」
「うん!!おねぇちゃん、ありがとう!」
――泣いた。
いいんだ、小さな女の子の笑顔がもらえたじゃないか、少なくともあの子に幸せをお届けできた、それで十分じゃないかアオイ!!
「でも、小さくてもいい、一口サイズでもいいから私も食べたかった……グスッ」
そもそも餅をデロデロにしたくせに、一番最初にアイス大福を食べた男が、私の肩にポンと慰めるように手を置いた
「……アオイ、キネとウス、それからモチゴメに蒸し器ですか?それらを買ってあげますから機嫌を直して下さい」
「……わかった。じゃ、じゃあ、ルティ年初めにはあれで餅つきやろうね!私もお餅ついてあげるから!」
彼は私からそっと視線を外し、フッとなにが可笑しいのか笑って、優しく餅のようにやんわりと答えた。ん?なぜ視線を逸らすんだい?
「モチツキは私とゴーシェで行いますね。私はアオイの作ったモチ料理が食べたいので、力仕事は男性に任せて、成形や味付けの方を担当して頂けると嬉しいですね」
結局、ただの一度も、私に餅つきの機会は与えられなかった……泣いた
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