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小さい秋、みぃつけた!

14:「私の」あーちゃです/side ルーティエ ★

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 可愛らしい丸みを帯びた小さな頭を眺めながら、私は幸せに浸っていた。

 小さき可愛いものが私の膝上にちょこーんと座り、それでも私の座高すら越えないという小ささ。この時点で10萌えしました。
 
 デザートに出たイチゴもあーちゃが持つと大きくて、小さな口を目一杯開けて頬張っていた。更に追加で100萌えです。


「それれね、たえセンセがフタタマ…あれ?フママタはセージツじゃないんらよって、いってたの」
「そうですねぇ、二股は屑の所業ですよね……はぁ、可愛いらしい……」


 結局のところ、アオイは年を重ねようが、若かろうが、子供になろうが、可愛いという結論に至りました。
 本当はもっとゴーシェには叱って然るべきなのでしょうけど……この菓子自体には問題ないと、ある程度カーモスの解析も済んでおりましたし、なにより視界にチラチラとこの、この……もう、どうしてくれようか、この悪魔ちゃんはっ!!

 あぁ、アオイと私の子も、女の子ならこのような感じなのでしょうか?……そうしたら私はどうなります?どうしたら宜しいのですか?可愛い×可愛いが並ぶ……危険すぎじゃないですか!?
 
 これは……檻と気付かれないほど広大な檻を用意しなければならないのでは?あぁ、しかしそれがバレてしまった時には間違いなくアオイは出て行ってしまいますよね。問題外ですね、却下です。
 
 ではある程度、娘が育つまでは私が片時も離れない…それですね!で、あれば、いつか来るその時に備えて今からお金を更に貯めておきましょう!!
 
 使える時間がアオイと部屋がわかれる夜しかないので、転移テレポートと併用して、できる限りソロ行動ができる依頼を積極的に受けるとしましょう……あとは―…


「むぅ、ルーチェ!おはなちはキチンとききましょって、えんちょ園長センセいってたよ!」
「あぁ、あーちゃ、すみません。少し、いえ大分先のあーちゃとの未来を考えておりまして……」


 あぁぁぁぁぁ!!吹き出しに『ぷんすこ!ぷんぷん!』って書いてありそうな怒り方!小さな両手を腰にあてて、頬を膨らますって……もうダメ、もう瀕死ですよ!


「あーちゃの?なんれ?ルーチェはあーちゃがスキってほんとらの?」
「ええ、ホントです!好き過ぎて、今にも心臓が止まりそうなほどです!!」


 危険!これは危険極まりないですよ!!放つ一言一言が、ピュアッ☆ピュアッで眩しいですし、普段のアオイとはまた違った積極さが……あぁ、これがアオイのよく言う『尊い』なのですね。アオイ、私は理解しましたよ!

 でも、その曇りなき眼で見つめながらの首コテンは、瞬殺の域ですから……もう少し控えめに…いえ、こんな機会はもう二度とないと思うと、一、二回くらい死んでも仕方がないような気もしなくもないと言いますか……もう、あーちゃしか勝たん……


「あの、ルーティエ?
大変なときに不謹慎だとは思うのだけど……私もそろそろあーちゃを抱っこしてもいいかしら?もう、黙って見ているのは辛いのよっ!!」

「私もモルガの次にいいかな?明日はアイのところへ向かうのだろう?ゴーシェの不手際で迷惑掛けてすまなかった。今のアオイちゃ…いや、あーちゃでは転移は難しいだろう?竜王に頼んだらキラが運んでくれるそうだ。だから明日キラが来るまでの間だけでも、相手をさせてくれないか?」


 私自身、すでにあーちゃにより怒りなど皆無に等しいのだが……それにしても伯母上には入浴や着替えをサポートして頂き、伯父上にはそもそも屋敷で世話になっている身。拒否はできない


「では、優しく、くれぐれも優しく、お願いしますね」


 受け渡しに乗じて、私も抱き上げる。幼児特有のポニポニとした感触が至福!!ずっと抱いていられます。将来は片腕にアオイ、片腕に娘……なんと素晴らしき夢のような世界!
 
 ハッ!アオイに影響されてきたのでしょうか?妄想が留まることを知らないようです……


「ルーチェ、このきえー綺麗なおねいたんはだえ?おぷろお風呂でもいたしとなの。あ、こっちのおじたんもイケメーン!」

「うふふ、あーちゃ、私はモル……いえ、あーちゃのママよ。あーちゃはゴーシェの妹だものね?だからママって呼んで欲しいわ」
「ハハハ。それなら私はイケメンのパパになるのかなぁ」


 まさかの伯母上が母親を名乗り出るとは……意外でしたね。ここでこれでは、実家の方は間違いなくお祭り騒ぎになるのではないでしょうか。

 こちらの世界ではアオイの実家はないですし、兄と慕うゴーシェのいるこの家を実家とするのも良いのかもしれません。確か養子になりたいと割と本気で言ってましたよね……


「ふぇ?あーちゃのママとパパは、ゴーちゃのママとパパらったの?しらなかった~。ママとパパ、こんにちわぁ」
「う゛っ!!ルーティエ……外に出る時は抱っこは必須だぞ?これでは絶対に人攫いに遭う!!」
「こ、こんにちは…あ…あぁ……可愛くて涙が勝手に出てくるわ。あーちゃ、明日のお出掛けにはオニギリ持って行く?リイルーンでは食べれないでしょ?バーべにお願いしてあるの」

「おににり!?あーちゃ、おににりがスキれね~2こもたべれるんらよ!すごいれしょ?」
「本当に?スゴイわぁ!あーちゃはおっきくなるわね♡偉いわよ!!」
「ぐぅっ!!パパが食べさせてあげたいのにっ!!」

「伯父上、申し訳ないのですが『』あーちゃですので。それはスッパリ諦めて下さい」


 全く、伯父上も油断ならないものです。今のあーちゃでは『おににり、たべゆ♡』とか普通に言っちゃいそうじゃないですか!くっ……尊死ねる!!
 
 その役割を一番に行うのは私と決まっておりますからね。誰にも譲りませんよ!!


「あーちゃ、明日はオニギリのお弁当を持って森へピクニックですよ。楽しみですね」
「えぇ~ピック、ニック?ヤッター!あーちゃ、こうえんダイスキ!!ブ~ランコもある?」

「ええ、ありますよ。あとはどんなものが好きですか?」

 例えなくても、私がすぐに作ればいいだけのことですからね

すべりらい滑り台っしょ~、んーと、んーと、おすなばと…あと、きのえら木の枝!!」

「この何を言っているのかよくわからないところがまた可愛い……」
「は?伯父上はわからないのですか?滑り台、砂場、木の枝ですよ。滑り台…恐らく滑って楽しむものですね。砂場も特別作らなくても大丈夫ですし、木の枝は……ふむ。むしろ、まみれるほどありますね」

「あらあら、アオイちゃんのことならなんでもわかる辺りが、やっぱりさすがね」
「当然です。世界一の理解者であると自負しておりますから」


「ルーチェ、あーちゃねむい。いっちょにねよう……」
「そうですね、そうしましょう!良い子は寝る時間ですよ」


 あーちゃに『なにかおはなちちて』と言われたので、定番の【エルフ少年の150年漂流記】を話してあげたのですが……寝つきの良さは折り紙付きですね。ものの1分ほどで眠りについてしまいました。手の掛からない子です。
 
 考えてみたら、アオイは割と本は読むのに、この話だけは冒頭部分までしか読んでおりませんね、盛り上がってくるのは後半ですのに……長い物語は苦手なのでしょうか?

 まぁ【エルフと愛を叫ぶシリーズ】はパラパラと流し読みしかしておりませんでしたし、単に好みの問題かもしれませんね


***


 寝息が完全に深いものに変わったところで、一度、断腸の思いでベッドから抜け出し、伯父上達の方へ戻った。先に動いているカーモス、ゴーシェらからの報告を受ける為だ。
 
 まだ大きな問題までは発展してないようだが、くだんの焼き菓子、及びその店そのものの商品は、魔国で輸入禁止物として指定されたとか。
 どういう術で幼児化させるのかはわからないが、悪事に利用しようと考えてしまえば恐ろしいことだ。
 
 さすがの私も幼児化させられ、尚且つ思考までも幼児なのであれば、戦うことは不可能に近い。仮に悪意があろうとなかろうと、その作り方、作り手はきちんと処理せねばならないだろう。
 

「その辺りはカーモスほど適任な者はおりませんので、彼にはゴーシェの教育係としての責もあります、張り切って処理して頂きましょう」


 私はあーちゃの護衛も兼ねて、常に一緒にいなければなりませんからね。暇はないのです


 あーちゃが起きてしまうといけないので、話は手短に済ませ、またベッドに潜り込む。いつも感じている愛しい人の温もりよりは、少し体温が高めだ。
 元のアオイと触れ合えないことは寂しいが、たまにはこんな日があってもいいだろう。私の知り得なかったアオイの子供時代を見ることができたのだから……


「しかし、一番に見たというのがゴーシェとキラと言うのが気に食わないですね……」

 明日は目一杯こき使ってやろうと誓いつつも、小さくも温かい体温を抱き込んで、幸福な気持ちのまま、私は目を閉じた。


******


 案の定、いつもよりも早起きをして待ち構えていた伯父上夫妻に、あーちゃは撫で回されて、オニギリではないが、こっそり小さな木の実を食べさせられていた。
 あーちゃはアメと勘違いしているようで、「ちょっぱいアメらね」と言って、ずっとカラコロ舐めていた……三人共、もれなく陥落しました

 昨日の内に手配してあったという、可愛らしいワンピースを着せてもらい、元のサイズに戻る際に必要だろうと、ガウンまで渡される。こういった部分は女性の方が冷静ですね。

 荷物の最終確認も終えた頃、ちょうどキラが屋敷へとやって来た。


「あー……キラです。今日は騎竜としてだけど」

「あ~~チラチラキラキラトカゲ!ぴゅーん!すゆの?あーちゃね、ピック、ニックいくの!いっしょにいく?」
「お、おお……チビッコのアオだと調子狂うな……アオ、今日は本物の騎竜でぴゅーん!をやってやるぞ?」

「ふぇ?ホント!?やりたい、やりたーい!トカゲもイケメーン!」
「お前、調子イイのは小さい頃からなんだな……」


 そんなことを言いつつも、存在が萌えそのもののあーちゃに(絶対にお世辞だが)「イケメン」と言われて悪い気はしていないキラ……調子に乗るな


「では、あーちゃ。このキラに無様なトカゲになってもらって、ぴゅーんと参りましょうか?」
「ぶーさまトカゲ?あ、トカゲのぶーさまぁ!!えらいしと偉い人らよね?」
「ぶー様?もしかして王様と勘違いしていないか?ははっ、アオは小っちゃくても面白いな」

「ルーチェ、あーちゃ、おもちろいって~えらい?」
「ええ、あーちゃは良い子ですし、可愛くて、楽しくて、素晴らしく可愛い、可愛いの権化ですよ」
「すげぇ、可愛いのオンパレードだな……」


 後ろ髪を髪が抜けそうなほど引かれながら、渋々といった感じで伯父上達は仕事へ向かった。こちらも準備はできているので、あーちゃのオニギリを持ち、出発した


***


「きゃ~~~!!チラチラはおっきなトカゲにへんちーんってできりゅんらね!すっごいねぇ~」
「おっ?意外だな。ちびっこはビビると思ってたぜ」

 キラのしょぼい竜化にすら、目をキラキラと輝かせて大喜びのあーちゃ……絵師、絵師を呼びましょう!あーちゃは、アオイとは違い高いところが苦手ではないようだった。景色を楽しみ、なんならもっとスピードを出せとせがむ程だった。これならば、予定よりも早く着けるかもしれない。
 
 あーちゃに注目され、少々腹が立つので、靴裏をべったりキラの背中に乗せたままにしておこう。普段から清潔を心掛けているせいで、ほぼ汚れてもいないのが残念だ

 おしゃべりなあーちゃは幼稚舎では何をして遊んでいたのかなど色々話してくれたが、中でもよく名前が浮上するタエ先生という人の教え方がおかしいとしか思えない。

『長いものには巻かれろゲーム』ってなんですか?新人の先生よりもカーストトップの年配の先生の言うことは絶対とか……アオイの世界の幼稚舎は、上下関係を徹底的に学ばせる軍隊の養成所かなにかでしょうか?
 そうなると、小さい内の情操教育は私が率先して行った方が安全な気もしてきますね……多大な影響力を与え過ぎです
 
『金をせびる男は碌な男じゃない』というのは正論ですし、いつか聞いたアオイの…元カレにも満たないゴミ屑のような男がそんな男でしたので、その名言は役には立ったようですが、幼児に教えることですか?それもお昼寝の時間に
 
 碌でもないことと良い名言が大体、7:3の割合でしょうか?よく先生になれたものです。

 ただ、『運命をただ待っているだけでは幸せは掴めない』という名言だけは、二日酔いの状態でなければ感銘を受ける言葉だと思いました。私は運命アオイを探しに動いておりましたからね。


 ふと思考を戻すと、先ほどまでキャアキャアはしゃいで、オニギリをはむはむと可愛く食べていたあーちゃが、急に静かになっていた。顔を覗き込むと今にも泣きだしそうな顔をしている。

「あ、あーちゃ!どうしたのですか!?」
「ん?アオになんかあったか?」


 まさか、オニギリを喉に詰まらせた!?顔色があまり良くない!!


「………あーちゃ、きもちわりゅい」

「それって、あっ……!」
「えぇっ!?ちょっま……」





 あーちゃは騎竜酔いをしたらしい


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