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エルフの里~リイルーン~
28:アオイ、策に溺れる
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―――バチィィ!バチバチッ!バチィ!!
店長の座っていたソファに、現在はルティが腰掛けております。
葉巻でも咥えようものなら、さながらマフィアのアンダーボス(若頭)そのものにしか思えないような雰囲気をビシバシと……彼の膝の上、横抱きで捕獲されてながら体感しております、実況のアオイです。
腰回りを片手でがっちりホールドされているので、空気を読み、大人しくお口にチャック中です。
対する店長は、自主的に床で正座をして、その周りをルティの紅い雷光が、まるで紅い鳥籠のように取り囲んでいる。これがホントの籠の鳥……ガクブル
「……で?消し炭になる前に、何か言い残したことはあるか?」
言いわけはあるか?とか、弁明ではなく、物理的に「消す」のが前提なのDETHか!?
「……申し開きのしようもございません。どんな理由であれ、あなた様の大切なフィアンセのお手に触れてしまった事実に、変わりはないのですから……」
ちょっと、ちょっと店長!どちらかと言えば、私が握手を求めたようなものじゃない?なんで、『フィアンセがいる人に手を出しちゃいました』みたいな……いや、出したけどさ、出したのは握手の手ですからっ!
商談成立でも握手するじゃん!『今後とも宜しくお願いします』みたいなさ、そんなようなやつでしょうよ!
いかんぞ、このままだと店長が時世のポエムを詠もうとしている雰囲気だ!もはや処刑台の囚人にしか見えない……
(あーどうしよう……本当の事情を言うと店長の秘密にしたいことがバレるし)
自惚れと言われても、きっとこの激おこルティを鎮められるのは私しかいないのだろう。
そして、私にはようやく得た、同志を守る使命がある。恥がなんじゃい!命より大切なものなんてないのだっ!
(アオイ、今こそ立ち上がれ!君は女優だ!!仮面をかぶるのよっ!!!)
「ル、ルティ?」
今回も目薬なんて必要ないくらいビビッてるから、すでに目は潤んでる。白目にならない程度の上目づかいで、まずは様子見の一発を放つ。バキューン♡
「……なんです?『心配ない』と言っていたのに、結局心配した通りになりましたけど?」
やーばーいー!!ヤダこの人、激おこなんてもんじゃないんじゃん?魔王だよっ!背景が綺麗な花から、おどろおどろしい、人喰い植物じゃん!!変幻自在の背景なの!?
「ち、違うよ……ルティが思っているようなことは1ミクロンもないよ?あれは、私から握手を求めて、それに店長さんが応じただけで……握手も、、、あれよ……無事採用してもらえたから、『ありがとうございます!宜しくお願いします!』って決意表明的な握手なんだよ!
そういうの、この世界ではしてはいけないことだって私知らなかったし……」
「していけないことでは…ないですが、目を潤ませて見つめ合っていたじゃないですか」
なんてこった!今回はそう簡単には許してくれそうもないかぁぁ……くっ、奥の手を投入するしかないのか!
「グスッ…せっかく、ルティにプリンの新作おやつ<プリン・ア・ラ・モード>を作ったのに。ズズッ、帰ったら私が食べさせてあげようって決めていたのに……」
「<ぷりん・あ・ら・もーど!?>なんですか、それ?……それにアオイが食べさせてくれるのですか?……しかし、それとこれとは……」
フレー!フレー!もう一息!!最終奥義<お色気作戦>。できるのか私に!?
「そ、それに今日のお風呂で着る水着もルティが選んだやつにしようかな、とか……?
あぁ、一緒に月を眺めたいなぁとか、ルティのことを一日中ずっと考えていた私の想いなんて、これっっっぽっちも届いていないなんて。私はただの不貞を働いた女に格下げされてしまったんだね」
「うっ。い、いえ、そんなことは……」
「グスッ、私が悪いんだよね……うん。残念だけど、しばらくは反省する為にアイさんの家で御厄介になろ…」
「わかりました!アオイの愛は十分わかりました!!」
よっしゃ!!でもまだ油断はダメ。店長の無罪放免を聞くまでは!!
「本当?ホントに伝わってるの?じゃあ、店長さんは全っく関係ない、巻き込まれただけの被害者だから、あの魔法も解いてくれるよね?」
ダメ押しの、思いっきりギューー!!
人前で嫌だけど、店長は瞳から光が消えてるから見えていない(多分)!
「ア、アオイから……!?ハァ、そうですね。店主、申し訳なかった」
パチンッ!と指を鳴らすと、きれいさっぱり檻は消えてなくなった。店長、無事生還!!
「ふぁっ……」
脱力する店長。足もしびれたよね?
とりあえずは良かった、勝訴!勝訴!!やっと牢屋からの釈放!!ひゃっほう!!
店長はようやく緊迫した雰囲気から解き放たれたせいか、放心状態だ。ごめんね店長、でも秘密はちゃんと守ったからね!
「アオイ、誤解だったとはいえ、そういった現場を目撃した私の心は一度死んだと言っても過言ではないと思うのですよね」
「あ、はい。それは、ごめんなさい」
まぁ、気分は最高潮に上がっていたから、確かに普通とは違った雰囲気だったかもしれないなと猛省はする。
でも、浮気心なんてしてないしさ、趣味仲間を得たってだけなのに……まぁそれを言えない時点で秘密の共有者とは言えるのか?なんて複雑!
「アオイに傷つけられた心は、アオイに癒して頂くことが一番の薬だと思うのですが」
「え?食べさせる事と、水着選ぶ以外にも必要ってこと?」
えーーそりゃ多くないかなぁ?お客さんそれは困りますわー
「もしでしたら、水着はアオイが恥ずかしくないもので構いませんよ」
「ホント!?じゃあ、それと交換ってことで、私にできることなら何でもいいよ」
正直、水着チョイスは一番嫌だったんだよね。封印してある、少々大人っぽい水着を選びそうだと思っていたからね。あれ本当にアイさん達が決めたのかなぁ?
あとはなんだろ?(人前じゃない)キスとか、膝枕とか?それくらいなら、叶えられるよね。
「ええ、むしろアオイにしかできないことですよ。では交渉成立ですね、帰りましょう」
「え?うん…あの、お願いって何?帰ってから?あ、店長、お先に失礼しまーす!」
「店主、ではまた」
「……あ…は、い。また」
***
そのまま即転移でルティの家へ戻り、プリン・ア・ラ・モードを食べさせて、ほぼ全快。
ご機嫌うきうきウォッチだったルティに告げられた、お願いと言う名の刑罰は……一応口づけの部類ではあった、とだけ。しかし、それ以上は黙秘権を行使しますっ!
ただ、告げられた時にスプーンを落としたよ私……カラーンってね
その刑罰に対し、羞恥に羞恥を重ねながら…それでも耐えた私に『今後も、似たようなことがあったらお仕置きしますからね?』とキラッキラの笑顔で告げる鬼畜ぶり……この男に策は通じないと悟りを開きました。
明日は店長を労ろう。おやつもジャンボプリン出したらいいかな?握手一つで消されかけた店長が一番の被害者だよね、はぁ。
<今日の教訓~心に刻むべきメモ>
・ 約束は主導権を握られたら終わり
・ お仕置きは内容をよく確認してから頷くこと
・ 恋人を怒らせたら危険
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